婚約破棄をされるはずだった悪役令嬢。

小狐

アラン様とシャル

私は悪役令嬢…今日あなたに婚約破棄される為に生きてきた…
 
あなたは言うのでしょう?

「公爵令嬢シャルロット・エスカレート貴様とは今日をもって婚約解消だと…」

私は転生者…このゲームが大好きで、王子が一番好き。
 
七歳の時に、初めてあなたを見て、また恋をした私…

でも私は悪役令嬢シャルロット。

いくらあなたを好きでいても、決して結ばれることはないの…

平民になっても大丈夫。ちゃんと予習済みですのよ。
 
ヒロインもいじめました。

「リリーさん。ちゃんと前を向いて、歩かないと転びますわよ」
 
とか

「よく噛んで食べなさい。口の周りが汚れてますわよ、これで拭きなさい」
 
とかね。

「えーっと…何か言いたいのは、わかりますよ、いじめてない?」

前世からいじめたことのない、私が精一杯頑張りました、褒めてくださいね。
 
大丈夫よ。

人の話には尾鰭がつくと、言うじゃないですか…ついたはず?
 
ピンク色のあの子がうるうる目で、彼に抱きついてるのも見ましたわ。

今日で最後。彼と最後に一曲だけ踊らせてください…
 
最後なんですもの。これから生きていくための、枷にさせてください。

彼が私に近づいてこう言うのです。

「シャルロット踊ろう」

「はい、アラン殿下」

あぁ、いつ見ても素敵な方。

歳を追うことに、逞しく、そして凛々しく金髪に青い目
 
まさに理想の王子…様。

あなたの青い目を見たいのに、目に焼き付けたいのに見れないのです…
 
見てしまうと、泣いてしまうから…

「シャルロット…」
 
彼の優しく呼ぶ声に、反応して見上げると悲しそうな瞳で私を見てる、どうしたのでしょう?

「アラン殿下?」
 
あなたは今日。好きな人と結ばれるのですよ…喜んで下さい。

「少し話がある…良いか」

「はい」
 
ダンスが終わり、殿下が私を連れてバルコニーについた途端、彼の強く逞しくなった、腕が私を抱きしめた…

「アラン殿下、どうなされたのですか?」

「シャル、俺から離れることは…許さない」
 
「何を、何をおっしゃているの?」

アラン殿下にはいるでしょう? あの子が…
そこに待っているでしょう?

「お前は…俺から自由になりたいのであろう? シャル」
 
自由?

「シャルが楽しそうに、パン屋で働いていたことも、知っている」
 
「どうしてそれを…」

これから生きていくための予習。
 
学園が終わり時間のある時に、パン屋でバイトしてましたわ。

「見たのですか?」

「あぁ、弟に聞いた…それで確かめに行った。パン屋で働く君は昔のように、楽しそうに笑っていた…君が笑わなくなったのは、俺のせいだと分かっている」
 
彼の吐き出された言葉の後に、私を抱きしめる腕に力がこもった。

「アラン殿下、私は大丈夫ですわ。殿下が思う人の所へと、行ってください」
 
私は自分の腕に力を入れ、彼の胸を押し、彼の腕から離れた…

「俺は…」
 
私を見つめる、彼の瞳が揺れていた…

「シャルがいい、君が好きなんだ…弟に言われた、兄貴は本当は誰が好きなのかと…シャルの事がいらないんなら、俺がもらって幸せにすると」

だから、あの子と所へと、行けばいいと…

「兄貴は行けばいい…しかし今日シャルの手を離したら、後悔しても、二度と彼女は手に入らないと、言われた」

そう…私はあなたに婚約破棄されたら…前から練習していた馬に跨って、この国を離れ、二度とここには戻ることはない…

「嫌だシャル。パン屋で君が見せた笑顔を俺にも見せて、俺から離れないでくれ…」

彼の声が震た…

「アラン殿下…」

「シャル…」

「私の側にいてくれるの?あの子の所には行かない?」

「ああ…行かない」

ほんと?
心が揺れる…あなたを信じたいけど…

「でもあなたは行ったじゃない…彼女が泣いた時…私を置いて…あの子の所に駆け寄ったわ…私…寂しいのは嫌なの…」

彼の目が、大きく開かれ、私を力強く抱きしめた

「ごめん。謝っても許せないのは分かってる。…もう二度とシャルを置いて行かない、寂しい思いはさせない。だから俺の側にいて…お願いだ」

彼は泣いていた…

「殿下のお側に…私はいても、いいの?」
 
「当たり前だ、シャル」

ポタポタと、私も涙を流した…
 
「私で…いいの?」

止まらない、涙が彼の服に、染み込んで行く…

「いいに決まってる…シャル、昔みたいにアランと呼んで、殿下とは呼ばないで」

私は彼の名前を口にする…

「アラン様」

「シャル」

そう彼を呼ぶと…彼は笑った、とても幸せそうに笑ってくれた。

「愛している…シャル。君だけを愛すると誓う」

「アラン様」

ああっ…その言葉に私の目から、涙が溢れた…

決して悪役令嬢の私には、言われないセリフ
 
ヒロインのあの子に、用意されていたセリフ

でもいまは私のために、悪役令嬢のシャルロットに向けて、彼は言った…

「私もアラン様だけを愛しています」

ずっと、言いたかった、私の気持ち…

彼の顔が近づき…私に優しいキスをしてくれた。

「愛している」

「私も愛しています」

これからも、私は大好きなあなたと共に…

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コメント

  • 華民

    私、こういう話好きです!良かったら私の作品も読んでいってください

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