私が、宇宙の女王になるわ!だから、貴方は私を守りなさい!
猫とパンケーキ
「レイカ!このパンケーキ凄く美味しいよ、頬っぺたが喜んで落ちちゃいそう」
「イヒヒヒ、猫ちゃん、お名前なんていうの?」
顔が緩みきったレイカは、キャットルームで猫と遊んでいる。
 ただ、さっきからめちゃくちゃ気になってる事がある。レイカのイスに座って、ずっと私を見ている猫がいる。
店のキャットルームで遊んでいるレイカに品種を聞くと、ノルウェージャンフォレストキャットという品種らしい。美しいロングコートと毛並みが、落ち着いた雰囲気を醸し出している。なんとなくレイカに似てる。
「猫ちゃんもパンケーキ食べたい?」
 冗談混じりに猫に話しかけてみた。
 ノルウェージャンフォレストキャットは、右手でテーブルを2回叩いた。
「きゃ♪可愛い、この猫ちゃん言葉が分かるのね」
 さっそくパンを一欠片、猫がいるテーブルの前に置くと、可愛らしくパクりと食べた。口を一生懸命に動かしながら食べている姿を見ていると、本当に可愛らしい。
「美味しいでしょ♪」
 すると、ノルウェージャンフォレストキャットは、また右手でテーブルを2回叩いた。
「え?もっと欲しいの?食いしん坊さんなんだね」こうやって、いつもお客さんにおねだりしてるんだろうな、賢い猫だと思った。
「あの、この猫ちゃんっていつもお客さんにおねだりとかするんですか?」
女性店員は不思議そうに顔を傾けた。
「あれ?新入りさんかな?、へぇー、おねだりとかするんですね」
女性店員は猫の頭を撫でると、私の食べ終えた食器を片付け、紅茶を置いていった。
「君、新人さんなんだね。接客上手ですなぁ、わたしあなたのファンが1号になっても良いかな?」
猫はイスから飛び降りると、トコトコとテーブルの下を歩いて私の足元に来ると、膝の上に飛び乗ってきた。
《 OKニャ!》
ん?誰かに喋りかけられたような、レイカかと思ったが、依然として猫達と遊んでいるし、辺りを見渡しても私に喋りかけた人を見つけることは出来なかった。
空耳だと思い気にしないで、膝の上に乗っているノルウェージャンフォレストキャットの柔らかな毛並みを堪能していると。
《君、撫でるの上手だニャ》
え?今のはしっかり聞こえた!この猫が喋っているように感じた。
まさか、猫にマイクが仕込まれていて、店の奥で店員が喋っているのでは?
膝の上に乗っている猫を抱き上げ、身体中をくまなく探したが、それらしき物は見付からなかった。
店員を呼び止めて、この店では、猫が喋っているように見せかけるサービスをやっているのか聞いてみたが、店員は不思議そうに否定した。
胸がドキドキする。まさか本当にこの猫が喋っているんじゃないか?それとも、私が猫の気持ちを感じ取れる能力も備わってしまったのか。
猫を抱き上げた。猫とにらみ合いになる。
《 びっくりさせちゃったみたいだニャ》
もう心臓が爆発しそうなくらい驚いた。猫が喋った。口が動いているから、私が猫の気持ちを感じ取ってるとかじゃなく、猫が喋っている方が正解のようだ。
「びっくりだよ!猫が喋るなんて、夢じゃないよね?」
《夢ってのは寝てるときに見るものニャ、君は起きてるじゃないかニャ》
猫は、人間が笑うときにする顔の表情を猫顔で見せた。
「………ヤバイかわいい過ぎ」
《そうだ、さっきのパンケーキありがとニャ。とても美味しかったニャ。でも、もう少し生クリームを載せて欲しかったニャ、あと2回目以降は、ボクが催促する前に、パンケーキをくれてたら最高だったけどニャ、それと、テーブルの上に直に置くんじゃなくて、お皿に載せて欲しかったニャ、あと、抱くときは優しくニャ、毛並みが崩れるから、あと、君、顔は可愛いけど胸はBカップなんだね、実に残念だニャ、形と弾力は良いけど、包容力が乏しいニャ、牛乳は飲んでるのかニャ?最低1日1本は飲も、にゃ!》 
「…………」
片手で猫掴みした。
《苦しいニャ》
「その長い毛にパーマ当ててあげようか?」
もう片方の手の表面から小さな炎が立ち上った。
《止めるニャ!やめてニャ》
猫が暴れだしたので、回りの人達の注目を集めてしまった。端から見れば、私が猫を苛めているように見えるこの状況で、レイカが戻ってきた。
レイカは咲良の手から猫を預かると、イスに座り猫を膝の上に乗せ、毛並みに沿って毛を撫でなが、紅茶を一口飲んだ。落ち着きなさいということだろう。
「なにがあったの?」
「あのね、信じられないかも知れないけど、その猫ちゃん、人間の言葉を話せるようなの」
「わたしにだって猫の気持ちを位分かるわよ」
「そいういことじゃないの!喋りかけてくるの!」
「咲良、猫が喋るなんてあるわけないでしょ」
「本当に喋るのよ」
「分かったわ、とりあえず知り合いの病院に行きましょ」
レイカが、イスの脇においてあったバックに手を掛けて、立ち上がろうとしたとき
《このパンケーキ食べないなら、食べて良いかニャ?》
「咲良、まだ食べるの?最近、ちょっとふっくらしてきてるんだから、ちょっと気にしなさい」
「え?太ってないもん!それに、もうお腹いっぱいだよ。この猫が言ったのよ!って言うか、レイカにも聞こえてるじゃん。」
「まさか………本当に?」
レイカは、ノルウェージャンフォレストキャットの目を覗き込んだ
「パンケーキ食べたいの?」
《生クリームたっぷりでお願いニャ、あとお皿に置いてニャ。そっちの彼女はテーブルの上に直に置くんだ、お客様に失礼ニャ》
レイカは、パンケーキをナイフで一口分切り、お皿に置くと、生クリームをたっぷり付けて猫の前に置いた。
目を輝かせ笑顔を見せるノルウェージャンフォレストキャットは、口だけで上手にパンケーキを食べている。
「びっくりだわ、本当に言葉を喋るなんて、ロボットだったら食べ物なんて食べれないし、動きがリアル過ぎる、驚いたわ」
「猫ちゃん、いくつか質問してもいい?」
《良いよ、パンケーキのお礼ニャ》
「ねぇ あなたどうして喋れるの?」
《それは、話すととても長くなるニャ》
「じゃ、喋れるのは貴方だけ?」
《ボク以外にもいるけど、今のところはそれほど多くないはずニャ》
「どうしてこの店にいるの?」
《パンケーキを食べさせてくれると書いてあったから、店の前で座っていたニャ、そしたら人間が店に入れてくれたニャ、で、この店員の前のイスが空いていたから、座っていたら、待てどパンケーキを持ってきてくれない。そしたら、この店員がやっと注文を聞いてくてたニャ この店はテーブルを2回叩くとパンケーキを持ってきてくてるニャ》
ノルウェージャンフォレストキャットは、テーブルを2回叩いた。
なんか色々勘違いしてるみたいね。話を聞いていたレイカは、ハイハイとあきれ顔で、自分のパンケーキを、猫の前に置いてあるお皿に切り分けた。
どや顔で説明をされたが、どうやら私達を店員と勘違いされたみたいね。そして、この猫は店のペットではないことが分かった。
「名前はあるの?」
《色々あって、今は無いニャ》
「そう、名前ないと不便じゃない?」
《そうだニャ、ある意味凄く不安だニャ》
「私達が名前付けてあげようか?えへへ」
「ちょっと咲良!何言ってるよ。誰かに飼われてる猫だったらどうするのよ!」
「良いじゃない。飼われてる猫って、遊びに行く先々の家で、違った名前で呼ばれてる事もあるって聞いたことあるし。それに、この子、名前無くて困ってるみたいだよ。」
「ねぇ、私達が名前付けもいいの?」
《お願いするニャ!》
ノルウェージャンフォレストキャットは、2本足で立つと深々とお辞儀をした。
私とレイカは、猫を見ながら考え出した。
「いざ考え出すと、なかなか思い付かないものなのね、名前って」
「そだねぇ、カッコ良くて可愛いのが良いよねぇ、じゃ!おにぎりはどう?」
「なんで、おにぎりなのよ……」
「座った姿が、三角形だから、おにぎり」
「却下!」
「じゃぁ、こんにゃく!」
「却下!」
「イチゴ!」
「却下!もう!食べ物ばっかじゃない!」
「えへへ…、レイカは何か思い付いた?」
「そうねぇ、猫だから…………タイガーとか」
「そんなに強そうに見えないよぉ」
「じゃぁ、ゴリラ!」
「名前負けしてるよっ!」
「ペス!」
「……犬の名前だね」
生き物なんて飼ったこと無かったので、名前を付けたことなんて初めてだった。多分、レイカも同じだと思う。
ノルウェージャンフォレストキャットは、レイカの膝の上で毛繕いをしている。自分の名前が決まろうとしている時に、呑気なものだ。
考え疲れ、冷めてしまった紅茶を飲みながら、辺りを見渡していると一枚のポスターが目に入った。絶滅してしまった虎の写真入りカレンダーだ。
「………トラ吉」
ノルウェージャンフォレストキャットの耳がピクンと反応したのを見逃さなかった。
「うん!良いじゃない!トラ吉!」
レイカはトラ吉を抱き締めた。
「あーん、わたしにもトラ吉抱かせて」
レイカからトラ吉を奪い取り、モフモフを堪能した。
《ボクはぬいぐるみじゃないニャ!》
嫌がるトラ吉の喉を撫でると機嫌が良くなった。でも、トラ吉は元々何処で飼われていたんだろう?それと、言葉を喋れる理由も聞いてない、住む場所は?名前を決めてしまったが肝心な事がまだだった。
「ねぇレイカ、これからトラ吉どうするの?」
「えっ?連れて帰るわよ」
レイカはさらりと言った。レイカと私が今年から住むことになった高校の寮は、動物ペット可なのだ。だから、レイカはこの高校を選のだ。私は、レイカと一緒なら何処でも良かったので、その辺りのことは気にしていなかった。
「でも、元は店の猫じゃないけど、店の猫みたいになってるし、無断で連れて帰れないよ」
「咲良、この店は、気に入った猫がいたら買い取って良いのよ。」
知らなかった。店の壁を見ると、張り紙にそれらしい事が書いてあった。
「トラ吉ってノルウェージャンフォレストキャットって品種なんでしょ?相場っていくら位なの?」
長くて綺麗なロングコートと高貴な顔付きから、お小遣い程度で引き取れる金額じゃないことは、私でも分かった。
「まぁ、20万~30万位じゃない ?」
そう言うと、イスから立ち上がり、私の膝で座っているトラ吉の頭を撫でると、店のカウンターで店長らしき人と話し出した。店長らしき人が困っているみたいだが、レイカが黒いクレジットカードを出すと、態度を急変し書類をレイカに渡した。
レイカが戻ってきた。
「さぁ、帰りましょ」
「帰りましょって!手続き終わったの?」
「ええ、トラ吉は私達が引き取ったわ」
「レイカにだけ、お金出させられないよ。私も払う!いくら?」
「何を言ってるの?今の支払いに使ったクレジットカードは、お父様が私と咲良の為に、渡してくれたものよ。だから、咲良の分も入ってるの」
レイカが何を言ってるのか分からなかった。
「これは、入学式が終わった後に、渡そうと思ったんだけどね」
レイカは、二枚目のクレジットカードと手紙を差し出した。
「これは………」
「お父様の気持ちよ、受け取ってあげて、咲良。こんな形でしか気持ちを表現できない人なの。受け取らないと、お母様にお父様は殺されるわ」
ウィンクするレイカは、クレジットカードを手渡してきた。
「トラ吉!これからは咲良と私が飼い主よ!いっぱい癒しなさい!」
《なんとなく大変な人生になりそうだニャ、考えただけでお腹減ってくるニャ》
テーブルを2回叩くトラ吉
「「まだ食べる気?!」」
私とレイカは顔を見合わせて、大笑いした。
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