死にたいと願ったら叶いました。転生したけど・・・
プロローグ 願いは形を変えて叶う
街灯の殆ど無い細い住宅街の夜道を一人の青年が走っている。
その青年は息を切らしながらも全力で走っている。
「くそっ!どうしていつも俺ばっかりなんだよ!!」
青年は毒づく。
「ああ!本当に最悪だよ!全員消えればいいのになぁ!!」
青年は物騒なことを次々と叫びながら細い夜道を全力で走る。
「ホント、こんな人生なら生まれてこなかった方がよかったよ・・・・・」
青年は急に弱気な、萎んだ発言をする。その青年の顔はもう、泣きそうな位にくしゃくしゃだった。
「嗚呼、神様でも、仏様でも、イエス様でも居るのなら俺を殺してくれ!!」
青年は神に、仏に、キリストに願う。しかし、そのような存在が在る筈が無いのは青年も理解している。しかし、それでももうどうしようも無いくらいに青年はこの世界から退場したかったのだ。
しかし・・・・・世界には時々不思議なことが起こるものだ。
────その願い、聞き届けましたよ。────
突然、青年の脳内に謎の言葉が響く。
当然、青年は驚いたが、もうどうでもいいように返事をする。
「ああ。俺を、殺してくれ。」
────解りました。────
その言葉が脳内に響き、やがて青年の意識は暗黒に呑まれた。
そして、何もなくなった空間に、誰にも聞こえない声が響く。
────しかし、生まれ変わって貰いますよ。────
そう、最後に謎の言葉を残して。
■■■■
『あれ・・・・・ここは??』
とある一室で赤ん坊が目を覚ます。
『と言うか、俺、死んだんじゃ無かったか?最後、変な言葉を聞いて・・・・・・ああ、そうか。そうだな。あの、声の主は、《神様》だ。』
そう、その赤ん坊は地球で死んだとある青年だった。
『そして、多分これは所謂《転生》ってやつか。要するに、やり直せってことか?神様。』
すると、突然、聞き覚えのある声が脳内に響いた。
────ええ。そうですよ。貴方の人生を覗かせて頂きました。どうやら壮絶な人生を辿られた様ですね。これでは人間に神と呼ばれる存在である私も同情してしまいましたよ。ええ、ですから貴方には2度目の人生を楽しく送ってもらいたいと思いまして、転生という方法を用いましたね。それと、ここは地球ではありません。まあ、簡単に言いますと異世界、ですかね。────
『はあ!?異世界!?それって、魔法とかある?』
────ええ。魔法も存在しますよ。ついでに言いますと、貴方にはこの世界を楽しんで貰うために幾つか優遇しておきました。────
『そうなんだ・・・・で、その優遇ってどんな?』
────一つは、生まれですかね。貴方を貴族の子に転生させました。────
『貴族?』
────はい。正確に言いますと、貴女が生まれたのは、アイレス王国のシェルフィールズ公爵家の長女に転生させました。────
『へぇー、公爵、ね。・・・・・・て、は?長女?って?俺、女?』
────はい。貴女の願いに沿いましたよ。────
『は?俺は殺してくれとしか願ってないぞ?』
────貴女の深層心理に問いかけました。その結果、貴女が来世では女の子に成りたいと思っていたようでしたので、その願いを聞き届けた迄です。────
『はぁ、そう言うことか・・・・まあ、いいよ。過ぎたことだし。それで、他に優遇した事は?』
────はい。二つ目は魔法の才能ですね。基本的にこの世界の人類は全て多かれ少なかれ魔力、要するに魔法を使うための燃料みたいなものです。それを持っています。なので、その才能を伸ばしておきました。それは後で魔力測定器でご確認下さい。そして、三つ目は身体能力ですね。これはそのまま運動能力と考えてください。四つ目は容姿です。これは成長しないと分からないと思いますが、最高の容姿になります。そして最後が、私からの加護です。これの効果は色々ありますけど、主な効果は長寿、老化停止、魔力量増幅、魔法の威力、効果の上昇、この他多数です。────
『うん。やり過ぎじゃない?過保護じゃない?俺、この世界の何なの?』
────回答に困りますが・・・・・敢えて言うならば、神の落とし子ですかね。あ、後はアイドルですね!!────
『アイドル??まあいいや。それじゃあ、遅くなったけど、ありがとう。俺に新しい人生をくれて。俺、精一杯、新しい人生を楽しむから。』
────ええ。楽しんで下さいね。私も見守っていますから。────
『本当にありがとう。あっ、そうだ!あなたの名前をまだ聞いてない。』
────そうでしたね。私の名前はエルフィーネと言います。呼び捨てで構いませんよ。────
『うん、ありがとう、エルフィーネ。俺の名前は・・・・そう言えば、俺の新しい名前は?』
────貴女はまだ名付けられていませんが・・・・良ければ私が貴女に名前を付けても良いですか?貴女の新しいご両親には天啓と言う形でそう名付けるようにしておきますから。────
『うん。俺もエルフィーネに名前を付けて欲しい。』
────ありがとうございます。それでは、シルフィ、と。私の名前から取りましたが、どうですか?────
『シルフィ・・・・うん!最高だよ!ありがとう!』
────そうですか、気に入ってもらえて何よりです。それでは、少し寂しいですがここでお別れですね。────
『そうなんだ・・・・ねえ、また、会えるよね?』
────ええ、必ず。────
『そう、だよね。うん。それじゃあ、またね、エルフィーネ!』
────はい。また会いましょう!シルフィ!─────
それを最後にエルフィーネの声は聞こえなくなった。
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