現代転生で運極振りするとこうなります

蛇に足

1.転生は運極振りで







はぁ。運が悪い人生だった。


この日、俺、新嶋二葉にいじまふたばは死んだ。死因は交通事故。つくづく運が悪い。事故の原因は俺は知る由も無いのだけれど、実はこの交通事故の原因は自動車の信号無視。もっと掘り下げると居眠り運転。


そんなので俺は死んだのだ。死んだ理由は目の前の人物?に聞かされた。


目の前の人物。本人は神を自称しているがこんな状態なので俺は仕方なく一応こいつを神として認識してやっている。


「本当に君は運が悪いね。」


神と自称する目の前の人物はおどけるように俺のことをそう評する。


ずっと。そう。ずっとだ。俺は産まれてこの方一切の運に恵まれない。いや、たった一度だけは運に恵まれたのか。俺は記憶になんか無いけど。


それもその筈。たった一度の幸運とは俺自身。俺はこれでも身体能力抜群、学力も優秀。容姿は男だけど大和撫子みたいな外見をしている。声も中性的だ。そして生まれにも恵まれた。別に家が金持ちという訳では無いが家は昔から続く名家で、家からは多数著名人が居る。先祖にも。


ただ、俺の運は産まれたことで全てを使い果たしたと思われる。その後の運を全てそこで使いきった。


幼少の頃はよく犬等の糞を踏んだり鳥に糞を落とされた。他にもとても些細な不運が俺を襲っていた。ただ、それも成長するに従って酷くなった。


高校にもなれば財布はよく無くすし何かの事故や事件に巻き込まれるのは日常茶飯事。お陰で幾人かの刑事さんとは顔見知りに成る程だ。


高校を卒業して大学に入った。言わずと知れた名門大学である。実力のお陰で主席合格は出来た。


卒業後は普通に就職した。両親からは勿体無いとは言われた。確かにその通りで俺の実力ならば官僚としてエリートの道も進めただろう。だが生憎と俺は政治には興味はない。だから大手の電子機器企業に就職した。


それから数年で一応部長に上り詰めた。ここまでなら別に運は悪くないんじゃ?と思うかもしれない。俺もそう思ってた。だけどここからが本当の不幸。先ずは俺の勤めた会社が倒産。切っ掛けは会社の上の不祥事だった。だが、深刻だった。メディアの影響はとてつもなく、その日から業績は落ちる一方。終にはどこの企業にも買収されることなく最後はニュースにもならず倒産した。


俺は無職になった。


ここからはざっくり行こう。俺は次なる会社に就職するもブラック企業ですぐに退社。後はそれが何回かのスパイラルに陥った。だから俺は都内にカフェを開いた。それもまた俺の些細な夢だ。俺のカフェはそれなりに繁盛して、ネットでも少しの話題に成る程だった。


それから暫くしてこれだ。今回の事故死。


「だからボクはそんなキミを不憫に思って人生をやり直す権利を与えるよ。少しの恩恵と共にね。」


自称神はそう宣う。


「人生をやり直す?それは赤ん坊からと言うことか?」


「いいや、違うよ。キミの好きな年齢からやり直せる。条件は今よりも若い時代から。」


「そうか。それで、恩恵と言うのは?」


「そのままさ。恩恵。神からの祝福と思ってよ。キミの願いを出来る範囲で叶えてあげるよ。」


「随分と旨い話に聞こえるが······代償は?」


こんなにこちらに一方的な利があるだけでは人間として誰でも怪しんでしまうだろう。


「無いよ。これはボクの気まぐれ。だからそんなものは無いよ。ただ、ボクは純粋にキミに次こそは幸せな人生を歩んで欲しいんだ。前のような波乱の人生じゃなくね。」


どうやら嘘はついていないようだ。


「どうやら本当のようだ。そうだな。確かに人生をやり直せたらと考えたことはある。丁度いい機会だ。そのやり直しとやらをやらせてもらうよ。」


「ふふ。どうやら決めたようだね。じゃあ恩恵は何が欲しい?」


恩恵か。別に俺はそんなに恩恵というものにすがる必要は無いほどに能力的には恵まれているが······


そうだな。たったひとつ願うならば


「運極振りで。」


これに限る。


「えっ?」


自称神の間の抜けた声が聞こえる。


「聞こえなかったか?だから運極振りだ。」


「う、うん?それでいいの?」


自称神は戸惑っている様子だった。少し面白い。


「ああ。俺にはそれしかない。」


「ふーん。本当に面白いね。キミは。だからね、ちょっとボクからサービスしてあげるよ。サービスの内容は君が目覚めてからのお楽しみ。」


「そうか。まあ、程ほどに期待しておくよ。。」


「あっ!ようやくボクのことを神様って言ってくれたね!」


神様は心底嬉しそうに叫んだ。


「それじゃあ名残惜しいけどそろそろお別れだね。バイバイ、新嶋二葉くん。」


「ああ、バイバイだ、神様。」








そうして新嶋二葉はこの場所から現世に戻った。










「あっ!しまった!二葉くんに何時に戻して欲しいか聞いてなかった!!うーん、しょうがない。ボクが適当に決めるか······」






こうして新嶋二葉の2度目の人生はスタートする。







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