庭には、
11話 特訓の理由
「じゃあ、本当の1番の目的は……何ですか?」
俺は、恐る恐る聞いてみた。
「……時間の翠眼(ときのすいがん)、あの子を守るためさ。」
笠井さんは、そう答えた。
「あの子?人、ですか?」
「そう、一人のかよわい女の子。あいつらが言う時間の翠眼ってのは、正確には【あの子が】ではなく、【あの子の】だがな。あの子の目を狙っている。」
「目……。例えば、その目になんでも願いを叶えてくれる悪魔が宿っている、とか……。」
「似たようなもんだよ。目の能力が問題なんだ。」
「一体どんな能力なんですか?」
「それは……。」
「それは……?」
一瞬、その瞬間に部屋中が緊張感で充たされた。
その子の能力は一体どんな……。
「それは、…………いや、教えられない。」
「……え?教えてくれないんですか?」
緊張感が一気にほどけ、まのぬけた返事をしてしまった。
「ただ、その能力が悪用されれば、間違いなく世界は滅ぶ。」
世界が滅ぶ能力か……。
時間の翠眼、なんて言うくらいだから、時間に関係している能力だろうことは予想できる。
だが、それを口に出して聞いて、その予想が当たっていたとしても、俺が何かできる訳じゃない。
本当に?
今なら、何かできるのではないか?
「笠井さん、俺も一緒に守らせてください。その子のことを。」
「いや、お前に、こんな荷物を持たせるわけにはいかない。お前に持つ力がないわけじゃない、ただ危なすぎる。」
「では、他に俺が持てる荷物はありませんか?」
「……。そうか、では荷物の見張りを任せよう、私達を守ってくれ。」
「はい、それで構いません。」
「もちろん、お前が危ないときは私も守る。お互いに助け合うってことでいいか?」
「はい!」
「ありがとう。よし、そうと決まれば特訓だ!簡単に死なれちゃ困るからな。」
「あの、自惚れが過ぎるかもしれませんが俺の能力なら死ぬことはないんじゃないですか?」
「お前な……それは自惚れが過ぎるなんてもんじゃねぇだろ、自信があるのは良いことだが何事にも限度がある。自信過剰はあまりよくない。」
「だって、攻撃もループさせちゃえば俺の体には届かずに当たらないんですよ?」
「じゃあ例えば、足下が急に無くなったらどうするつもりだ?」
「足下が……。すみません調子に乗ってました。」
足場が消えたらループではどうしようもない…。
「いや別に叱っているわけではない、ただそういう時の対処法も考えておけよって言いたいんだ。」
「はい、しっかり頭に入れておきます。」
「まぁ、いざとなれば私が助けてやるよ。心配するな。とはいえ、自分の身は、なるべく自分で守れた方がいいだろう?だから特訓だ。」
そして特訓開始。
特訓の内容はどれもきついものだった。
雑魚フレンカーパーと戦い能力の使い方を覚え、使い道を増やす特訓。
笠井さん相手に対人戦をして、より能力の使い道を増やす特訓。
筋トレ、ランニングによる基礎体力の強化。
等々、計3時間に及ぶ特訓は、ひとまず終了した。
─────────────────────
そして例の古い喫茶店。
ちなみにこの喫茶店は、喫茶茶月(きっささつき)というらしい。
「かっはぁー!お前帰宅部にしてはやるじゃないか!」
笠井さんはソファーにどかっと座った。
「はぁ、えぇまぁ中学の時バドミントンやってた甲斐があります……。」
俺はかなり息が上がっていて体中が痛かった。
「この特訓を続ければ、かなり戦えるようになるだろうな。」
「はい、がんばります。」
「疲れただろ、今日はもう帰って休め。お腹も空いただろう。」
「今日はありがとうございます。では先に失礼します。」
「おう。また来るなら、明後日にでも来い。明日は休め。」
「はい。」
正面のドアから出ると、さっき居たデパートに出た。
人だかりも少なくなって、騒ぎは落ち着いたようだ。
「さて、帰るか。……あれっ、買い物袋どこ?」
記憶を辿ってみると、どうやら向こうに行くときに通った車に置いて来てしまったらしい。
「あの車は、まぁ、もうないよな……。」
俺はその後、もう一度、醤油と卵を買いなおした。
それでも豆電球は、買い忘れた。
自転車に乗って家に帰る。
豆電球を買い忘れたことを知られる前にとっとと用意されていた昼食を食べて自分の部屋に戻る。
「ねぇ、さっきデパートの方で騒ぎがあったらしいけど大丈夫?」
部屋に入ると、お菊が聞いてきた。
こいつの情報源はどこなんだ?
「なんか居たらしいよ。」
「らしいって、あんたもそこに居たんでしょ?」
「居たけど、人だかりのせいで何も見えなかったんだよ。」
実際は何も見えないどころか、近距離で戦ったんだけどね。
いや、戦えてはいないか……。
俺が、もっと能力をしっかり使えていれば。
「そう。それより、来年までもう残り半日切ったわね。」
「毎年感じることだけど、改めて一年過ぎるのは早いな。」
「まだ過ぎてはないけどね。残り半日無駄に過ごさないようにね。」
「お互いにな。俺は宿題でもするか。」
「ここで見張っておくわね。」
「……その前にゲーム。」
「はぁ、やっぱり……。」
この残り半日も長いようで、短い。
俺は、恐る恐る聞いてみた。
「……時間の翠眼(ときのすいがん)、あの子を守るためさ。」
笠井さんは、そう答えた。
「あの子?人、ですか?」
「そう、一人のかよわい女の子。あいつらが言う時間の翠眼ってのは、正確には【あの子が】ではなく、【あの子の】だがな。あの子の目を狙っている。」
「目……。例えば、その目になんでも願いを叶えてくれる悪魔が宿っている、とか……。」
「似たようなもんだよ。目の能力が問題なんだ。」
「一体どんな能力なんですか?」
「それは……。」
「それは……?」
一瞬、その瞬間に部屋中が緊張感で充たされた。
その子の能力は一体どんな……。
「それは、…………いや、教えられない。」
「……え?教えてくれないんですか?」
緊張感が一気にほどけ、まのぬけた返事をしてしまった。
「ただ、その能力が悪用されれば、間違いなく世界は滅ぶ。」
世界が滅ぶ能力か……。
時間の翠眼、なんて言うくらいだから、時間に関係している能力だろうことは予想できる。
だが、それを口に出して聞いて、その予想が当たっていたとしても、俺が何かできる訳じゃない。
本当に?
今なら、何かできるのではないか?
「笠井さん、俺も一緒に守らせてください。その子のことを。」
「いや、お前に、こんな荷物を持たせるわけにはいかない。お前に持つ力がないわけじゃない、ただ危なすぎる。」
「では、他に俺が持てる荷物はありませんか?」
「……。そうか、では荷物の見張りを任せよう、私達を守ってくれ。」
「はい、それで構いません。」
「もちろん、お前が危ないときは私も守る。お互いに助け合うってことでいいか?」
「はい!」
「ありがとう。よし、そうと決まれば特訓だ!簡単に死なれちゃ困るからな。」
「あの、自惚れが過ぎるかもしれませんが俺の能力なら死ぬことはないんじゃないですか?」
「お前な……それは自惚れが過ぎるなんてもんじゃねぇだろ、自信があるのは良いことだが何事にも限度がある。自信過剰はあまりよくない。」
「だって、攻撃もループさせちゃえば俺の体には届かずに当たらないんですよ?」
「じゃあ例えば、足下が急に無くなったらどうするつもりだ?」
「足下が……。すみません調子に乗ってました。」
足場が消えたらループではどうしようもない…。
「いや別に叱っているわけではない、ただそういう時の対処法も考えておけよって言いたいんだ。」
「はい、しっかり頭に入れておきます。」
「まぁ、いざとなれば私が助けてやるよ。心配するな。とはいえ、自分の身は、なるべく自分で守れた方がいいだろう?だから特訓だ。」
そして特訓開始。
特訓の内容はどれもきついものだった。
雑魚フレンカーパーと戦い能力の使い方を覚え、使い道を増やす特訓。
笠井さん相手に対人戦をして、より能力の使い道を増やす特訓。
筋トレ、ランニングによる基礎体力の強化。
等々、計3時間に及ぶ特訓は、ひとまず終了した。
─────────────────────
そして例の古い喫茶店。
ちなみにこの喫茶店は、喫茶茶月(きっささつき)というらしい。
「かっはぁー!お前帰宅部にしてはやるじゃないか!」
笠井さんはソファーにどかっと座った。
「はぁ、えぇまぁ中学の時バドミントンやってた甲斐があります……。」
俺はかなり息が上がっていて体中が痛かった。
「この特訓を続ければ、かなり戦えるようになるだろうな。」
「はい、がんばります。」
「疲れただろ、今日はもう帰って休め。お腹も空いただろう。」
「今日はありがとうございます。では先に失礼します。」
「おう。また来るなら、明後日にでも来い。明日は休め。」
「はい。」
正面のドアから出ると、さっき居たデパートに出た。
人だかりも少なくなって、騒ぎは落ち着いたようだ。
「さて、帰るか。……あれっ、買い物袋どこ?」
記憶を辿ってみると、どうやら向こうに行くときに通った車に置いて来てしまったらしい。
「あの車は、まぁ、もうないよな……。」
俺はその後、もう一度、醤油と卵を買いなおした。
それでも豆電球は、買い忘れた。
自転車に乗って家に帰る。
豆電球を買い忘れたことを知られる前にとっとと用意されていた昼食を食べて自分の部屋に戻る。
「ねぇ、さっきデパートの方で騒ぎがあったらしいけど大丈夫?」
部屋に入ると、お菊が聞いてきた。
こいつの情報源はどこなんだ?
「なんか居たらしいよ。」
「らしいって、あんたもそこに居たんでしょ?」
「居たけど、人だかりのせいで何も見えなかったんだよ。」
実際は何も見えないどころか、近距離で戦ったんだけどね。
いや、戦えてはいないか……。
俺が、もっと能力をしっかり使えていれば。
「そう。それより、来年までもう残り半日切ったわね。」
「毎年感じることだけど、改めて一年過ぎるのは早いな。」
「まだ過ぎてはないけどね。残り半日無駄に過ごさないようにね。」
「お互いにな。俺は宿題でもするか。」
「ここで見張っておくわね。」
「……その前にゲーム。」
「はぁ、やっぱり……。」
この残り半日も長いようで、短い。
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