命集めの乱闘〈コスモコレクトロワイアル〉

風宮 詩音

第24話 少年と少年

「お昼どーする~?空ぁー。」


「……ケーキ…。」


「え、またぁ?」


8月最後の休日の昼前。高校生ぐらいの少女と小学生にも見える少女はそんな話をしながらスーパーを目指して歩いている。


ふとそこでスーパーの横の道路に3人の人がいることに気づいた。


そのスーパーはかなり大きくて小さいデパートと言ってもいいくらいだった。この島は車の免許が取れない学生が多いにも関わらず駐車場も大きかった。


3人の中の高校生っぽい少年も気になるがそれよりも小さい女の子の近くにいる中学生っぽい少年に目がいった。


「あれ、なんか魔核人形マコアドールっぽくない?空。」


「……近いけど…なんかちが……う?気がする。」


「面白そう。あの子研究対象にしたらいい論文書けそうな気がするぅ!ねえちょっとあの子のとこ行ってみない?」


「え…ちょ…まってぇ」


そんな言葉とともに小さな少女の手を引いた高校生っぽい少女は3人のところへ走っていく。


しかしたどり着く前に少女達は、街の人々は、世界は、3人を中心として広がった白い光に飲み込まれてしまった。


※※※


「君は何を知っているんだ?」


白い光はとうに消え、夏の昼間の風景に戻った街のとある道路のわきの歩道で少し真剣に聞いてみる。


「別にたいしたことじゃないですし、そもそもあなたには関係のないことですから。どうしてあなただけ気づいているのかは知りませんが関わらないでほしいです。」


素っ気なくて真剣な声。目の中では敵意の炎が静かに燃えている、そんな錯覚を起こしそうだった。


「いやなこった。もう見ちゃったんだから今更関わるなといわれても無理だな。相談なら乗る。」


「あなたにどうにかできることじゃないと思います。これは僕がもらったチャンスなので。」


「チャンス?この子を助けるためのか?いったい誰から?というか時を戻せるようなやつならこの子を死なないようにするくらい楽勝なんじゃないのか?」


お兄ちゃん(仮)の後ろに隠れてこちらをじっと見つめている少女に視線を向けながら言う。


「知りません。僕はこいつが助かれば何でもいいんです。」


お兄ちゃん(仮)の真剣で力強い言葉に少女はビクッっと体を震わせていた。少年の服をつかんでいた手に力が入った。少年の服がもう元には戻らないんではないかというほど伸びているが少年は気にしていない。少女は少し怯えた声で「お兄ちゃん?」と少年の顔を見上げている。


「もう何回繰り返したんだ。つらくないのか?」


「……」


少年は黙ってしまった。


「誰かに相談できないことなのか?」


「……」


「ここは特別な島だ。このくらいの現象新しい異能力だろうと思える。そういう人ばかりの島だ。」


「……」


「もう一度言う。相談なら乗る。言ってみろ。」


「………ぅるさい」


「え…」



「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」


涙混じりの叫び声。



「これは僕の問題だ。僕がチャンスをもらった。僕が…僕が!! この子が死なない未来を作らないといけないんだ!!」


ジリ…ジリジリ…と音がする。まるで少年の叫びによって何かが焼けるような、そんな気がした。


余波というものなのか空気が揺れ動いているようだった。少年の叫びに驚き、さらに余波を受けた少女はバランスを崩し後ろに倒れ始めていた。倒れたときの頭の位置。それはスーパーの駐車場と歩道とを分ける低いコンクリートの段差の角。さっきと同じ。またあの子が死ぬ。


助けようにも少年がじゃまで少女が頭を打つまでにたどり着けない。


と、そこで世界に変化が起きた。


見覚えのある光。世界の全てを包み、塗りつぶす、眩い白い光。それは少年から、正確には少年の服の中からあふれ出していた。



※※※



スマホを見る。きっと時計はずれているがストップウォッチの機能は狂っていなかった。


「今のはお前が自らの意志でやったことか?」


「いや。あれはいつも勝手になる。」


「なるほどな。ならこのやり方、あと10回しか使えないぞ。」


「はぁ?10回って何でそんなことがわかるんだよ……。」


声が語尾に向けて小さくなっていくのは動揺によるものだろう。そのまま蒼太は続けて言う


「時間を戻してから次にあの白い光が現れるまでの間隔が30秒ずつ短くなってる。このまま時間を戻し続ければあと10回でその間隔は多分0秒になる。この力をお前が使いこなせるなら別だけど、無理なら残ってる時間は多分27分半くらいだ。」


多分、と何度も言ったのは確信が持てないからと言うのもあるが少年に冷静さを保たせるためでもあった。


「あと…30分……も…ない………。」


動揺。先ほどまでの真剣で敵意丸出しの瞳は見開かれ、目の前の蒼太など見ていなかった。そのまま動かなくなってしまった少年を見ながら自分の思いを素直に伝える。



「お前がさっき言ってたように俺も助けたい人がいてしかも君の状況と似ているといえば似ている。さっきの君と同じだ。あいつを助けてやるためなら何でもやってやるって覚悟だ。ただ俺のはスケールが大きすぎてな。だけど君のならなんとかなるかもしれない。この子を守って死なない未来を作る。俺のに比べたらだいぶ簡単だ。だけど、簡単だからこそ俺はこの子を完璧に助けなくちゃならない。じゃないとあいつの事なんて助けられない。」


スッと息を吸って口開く。


「だから相談なら乗る。助けてほしいなら助ける。だから言え。手伝ってくれって。まだ出会って一時間も経ってないけど。でもこんな状況で出会ったんだ。これも何かの運命だ。」


少年の鼻が赤く染まり、目から流れた涙の跡が夏の昼のきらめく太陽の光をキラキラ反射していた。


「うっ…、うっう……。」


腕で涙を拭きながら少年は叫ぶ。


「たずけて……てづだって……くだざい!!」


周りの人はこちらの会話を聞いてジロジロ視線を向けているが関係ない。
全て消えるから。


でも、それはもしもの世界に確かにあった少年達の過去。
そして、少年達の心にしっかりと刻み込まれた今。


忘れることのない。憤りと感動。心配と決意。


決して消えない。この白い光に包みこまれたとしても。



互いを信頼しあう。頼もしい仲間を見る目。活路が見えた、そんな気がする。


そんな希望を抱き2人の少年は白い光に飲み込まれていった。

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