命集めの乱闘〈コスモコレクトロワイアル〉

風宮 詩音

第23話 救えぬ命と出会った2人

道の奥に最近何度も見た少年が立っている。おそらく高校生で身長も痩せ具合も顔も平均的だった。


「あの人…さっきも見たな」


小さくつぶやいただけの声はちょうど横を通ったトラックにかき消される。見るのも忌々しい、あのトラックによく似ていた。



「おにーちゃん、なんか言った?」


前を歩く彼女はそんなトラックなど目もくれずに振り向き純粋な微笑みを向けてくる。


「いいや。何も言ってないよ。」


こちらもほほえみで返す。しかしそれは作っていることがバレそうなほど硬い表情だった。



いよいよ例の少年が近い。こちらに歩いてくる少年は明らかに自分たちを見ている。無意識に顔は引きつり、唾を飲み込んでいた。


すれ違う瞬間、さっさと立ち去ろうと高校生くらいの少年から目を離す。視界の隅で少年が口を開いたのが見える。


「君は気づいているのか?」


思わず足を止め睨むように少年を見る。


「気づくってなににですか?」


冷静で低い声。警戒を解かずに聞き返す。


「あの子がこの後どうなるかだ。」


横目で前を歩く少女を見ながら簡潔に言う。この落ち着き具合、どうやらこの人はだいぶ前から気づいていたようだ。


「あなたは何度か前に奇妙な翼を使ってあの子を助けようとした人ですよね?確か奇妙な力を使う高校生の少年がいたはず……、あなたもしかして桐真 蒼太さんですか?」


暫定桐真蒼太の顔が明らかに変わる。意表を突かれたような驚きと困惑が混ざったような顔。桐真蒼太はなんと言うべきか迷っている様子。


「あなたも大事な人のためにちょっといけないことしているらしいじゃないですか。」


「……!? 誰から聞いたのかわからないけど人違いじゃないかな?」


明らかに動揺している。驚きと困惑が混ざった声に少しの怒りが加わっている。どうやらあの人の言っていたことは正しかったようだ。不思議な力に大事な人のためのいけないこと、半信半疑だったが覚えておいてよかった。


さてとこれからどうするかな…。


※※※


(なぜこいつは俺のことを知っている。俺の事を覚えている人はいないはず。例の悪魔さんみたいに何かつながりがあるわけでもないし、まだ目立つような事は何もやってない。)


(リーシャさんか?いやいやあの人がそんなことするはずないし第一今はどっか出かけちゃってるし……。ならば悪魔さん?いやあの人もそんなことする人じゃない。じゃあ一体……)



(全く見当がつかない、こんな事している場合ではないのに。あの子を助けないと……。)


(ん?あの子……。今はあの中学生であろう少年を捕まえちゃったから…1人……!)


急いで振り返る。少年も蒼太から何かを感じたのか蒼太をよけるように少女の方を見る。


その瞬間、視界の右側。スーパーの駐車場から黒い何かが飛び出す。


黒い何かはそのまま歩道を飛び越え道路の真ん中あたりに着地した。


それは赤い首輪に金色の鈴をつけた1匹の少し凶暴そうな黒猫だった。だが少女に襲いかからなかった。2人が安堵したとき、奥から迫っていた1台の乗用車が車道の真ん中にいる黒猫をに驚いたように急にハンドルを切る。その先にはひとりの少女。そしてそれらの間にはちょうど縁石がない。


少女は逃げようとしたがバランスを崩している。少年も蒼太も一瞬の安堵のせいで出遅れてしまい、どうやったって届きそうにない。例え翼を使っても間に合わない。








ゴォン!とぶつかる音。思わず目をつぶってしまった。しかしわかりきっている。目を開けてもそこにあるのは見慣れるほどに何度も見た残酷な場面。


ゆっくりと目を開ける。乗用車は………まるで見えない縁石にぶつかったかのように歩道にギリギリ入っていなかった。



その先にはなにやら蒼太と同じくらいの背の少年がたっている。顔は見えないが多分高校生。


ゆっくりと視線を移すと乗用車の運転手の顔が見える。ひどくおびえた顔。車の前に立つ少年がそんなに怖い顔をしているのだろうか。いやそういった覇気のようなものは全く感じない。


さらによく見ると後部座席に見覚えのある顔がある。確かいつだかスーパーに行く途中で見たポスターに写っていた。このあたりの地区、学生が多めの街。第13地区を担当する星守会の幹部。つまり市長みたいなもの。その人も同じようにおびえていた。


一瞬でそこに現れ、まるで車から速度を根こそぎ奪ったかのような止めかた。もしかしたら有名で強い能力者なのかもしれない。それならばおびえている理由も想像できる。




がしかし。少女が車から逃げようとしてバランスを崩した。倒れた少女の頭はちょうど歩道とスーパーの駐車場の間の低い段差の角にぶつかっていた。


※※※


今回の収穫。


少女はあの無邪気な感じから記憶は引き継がれていないと思われる。


少年はどうやら記憶を持っているよう。現状一番怪しい。


例の時間が戻る現象後あの子が死ぬまでの時間が少しずつ短くなっている。



スマホのメモにそう書いて、奥から歩いてくる平和を具現化したような兄妹に視線を向ける。


平和そのもの。ただし兄の顔には笑いがなかった。

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