命集めの乱闘〈コスモコレクトロワイアル〉

風宮 詩音

第6話 弟子の実戦と固有魔術

8月3日
「初めての実戦じゃ。緊張すりゅじゃろ?」
思いっきり噛んだ…。
「リーシャさんの方が緊張してますよね?噛んでるし。」
リーシャさんの顔が赤くなる。
「べ、別にしとらんわ!別にで、弟子の初実戦だからってき、緊張なんてしないぞ。」
自分を落ち着かせるように言っている姿を見ると、本当に心配してくれているのかもしれない。優しい師匠だな。そんな優しい師匠も焼け野原が見えてくると、黙り込んでしまった。とてもひどい有様だった。原型をとどめているものは日光に反射してキラキラ光る様々な色の結晶以外なかった。黒く焦げたりもう炭になってしまったものなど黒ばかりの焼け野原に光る結晶。それはとても不思議で残酷な景色だった。…とそんなことを考えていたら近くにヘリコプターが何台もホバリングしていた。もし見つかったらきっと驚くだろう。なにせ幼女と少年が生身で空を飛んでいるのだから。桐真きりま蒼太そうたは悪魔族なので飛べるのは当たり前だが、リーシャさんはなんか体の周りを風で覆って飛んでいる。風属性って便利そうだなっと思ったが、リーシャさんが言うには「これは空を自由に飛び回れるようになるまで80年ぐらいかかるぞ?」らしい。と、そんな会話をしながらも2人はホバリングしているヘリコプターの横を通り過ぎていく。全く気付いていないようだ。これは蒼太の魔術のおかげ。2人の周りに小さな氷の粒を大量に配置して、日光の反射の加減を利用して他の人から見えないようにしている、らしい。詳しい原理は勉強している暇がなかったので蒼太は知らない。と,そうこうしているうちに目的地に到着。オーストラリアはリーシャさんの言った通り、全壊だった。端の方にはかろうじて半壊ですんでいる家もあるが人の気配はしない。これがあと2つあるとは、全く恐ろしい魔術だ。


「てかなんであのヘリコプターたちはホバリングしてるだけで回収に行かないんですかね。」
周りのヘリコプターはホバリングしてるだけで人が降りる気配もないまるで、


「誰も入れないために監視しているみたいじゃな。」


「た、確かに。でもなんで監視だけなんですか?監視しながらも回収すればいいのに。」
その方が効率もいいはず


三角陣爆破トライアングル・エクスプロージョンは発動後5日から1週間くらいの間、爆破地には生物にとてつもない高温を感じさせる特殊な結界が張られるんじゃ。。だから、それが消えるまで監視している、というわけじゃな。」
三角陣爆破、恐るべし。
「じゃ、じゃあなんで俺たちは来たんですか?」


「ん?ああそういえば言ってなかったな。今回はお主にオーストラリア大陸丸ごと凍らせてもらう。」
・ ・ ・。


「は、はぁぁぁぁ!オーストラリア大陸丸ごとって俺じゃ多分無理ですよ!」


「大丈夫!そのためにわしがきたんじゃからな。」


「ほへ?」


「わしが力を貸してやるぞい。」


※※※


近づけるギリギリまで行って蒼太は術式を詠唱し始める。
「氷は地を這い広がる。広がりし氷は地の怒りをも沈める静けさと冷たさを持つ。その静けさと冷たさは万物を包み込む。包み込まれたものはただその無に浸る。無は極楽、無は地獄。」
最初の文を言うとともに前に出した蒼太の手の前に水色の魔方陣が現れる。 次の文、その次の文を唱えるたびに魔方陣に文字が刻まれていく。


少し間をあけて


銀世界アイス・ベール
そう言った瞬間、魔方陣は一瞬淡く光る。次の瞬間蒼太の足元に氷の玉が現れた。玉はそのまま砕け。小さな小さな粒となる。それが地を這うように全方向に広がった。粒が通り過ぎた場所は綺麗な氷に覆われていた。地面が氷に覆われると今まで暑かったのが嘘のように肌寒くなる。しかし神経に直接送られてくるような熱さは消えない。


「ふむふむ。これが全力か。ざっと40万平方キロメートルってところじゃな。上出来上出来!さっすがわしの弟子じゃ。」


「は、はあ。ありがとうございます。」


「ただ、これでは足りない。40万平方キロメートルなんて日本列島よりちょっと大きいくらいじゃからな。」


「う、うう。もう俺、疲れましたよ。」
ここまで全力で魔術を使ったのは初めてで、ものすごく疲れた。


「大丈夫。あとはわしの力でやるでな。まあ、見とれ。」
そう言うとリーシャさんは氷の中心に手を当て唱え始めた。


「魔の力、魔の力よってさらなる力を。力を求めるは本能。本能は妨げらぬ。妨げられぬ本能に答えるは狂いし巫女。巫女は全ての魔の力にさずける。」
銀世界とは違う形の白い魔方陣が氷に広がる。


強制最大出力ブースト!」


氷が白く輝いたと思ったら、もう氷の端は飛んでいる蒼太にも見えなくなっていた。


「これがわしの固有魔術、強制最大出力ブーストじゃ。触れた魔術、魔術によるものの力を最大にする。これでオーストラリア大陸全てとその周りの海が少し凍ったじゃろうな。あとは結界の要所要所を凍らせた。これで普通に下で活動できるはずじゃぞ。」
これが、リーシャさんの固有魔術…。


「さて、奴らが来る前に出来るだけ集めるぞ。」
あれ?ちょっと待て。
「これ、命結晶コスモクリスタルも凍ってるんじゃ…?」


「あ、ああ。言ってなかったな。命結晶コスモクリスタルは魔術みたいな特殊な力の影響を受けないんじゃ。だから多分穴が開いてて、その下にあるはずじゃ。」
ほ、ほう…


「ちなみに奴らは炎属性使いが多い、お主とは相性最悪じゃ。だから絶対見つかるなよ〜。」


「ちなみに、見つかったら…。」
恐る恐る聞いてみる。


「多分殺される。」
小さな口で幼い声でリーシャさんは恐ろしいことを言う。


「さ〜て、いっちょやるかのぉ〜。」
なぜかノリノリ。
「ドキドキするじゃろ?こんなの、さあわしは先に行ってるぞ!」
体のが小さいので当然足も短い。なのに…めっちゃ足速い


「え、ちょ、ちょっと待って。おいてかないでくださ〜い!」



走る少女とそれを飛んで追いかける少年。ヘリコプターの監視隊から送られてくる映像を見て、紳士は鼻で笑った。

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