命集めの乱闘〈コスモコレクトロワイアル〉
第2話 死んだ少女と死なない記憶
学園に侵入した脱獄犯はすでに4人捕まっていて、俺の教室の扉を壊したやつで最後だったらしい。
そこからの記憶はほとんどない。なんか先生が熱心に何か話しかけていた気がする…。
桐真 蒼太の目の前で横たわっている彼女は…俺の幼馴染、千里 未来はさっき(と言っても未来の前にどれだけいたかわからない。3分かもしれないし3時間かもしれない)、脱獄犯の1人である異形のショットガン使いがなぜか持っていた特殊能力とその使用者を殺すための武器。異能殺しの剣によって殺されてしまったのだ。
幼馴染が殺されてしまったのに全然実感がわかない……。あんな元気すぎるやつがこんなことくらいで死なないのではないか、ただ寝てるだけでこのまま寝かせ続ければそのうちに起きるのではないかと。
あんな……あんな…元気で…うるさくて…説教ばっかしてて…しっかりしてて…いつも俺を支えてくれて…あんなに……あんなに…可愛いやつが…。なんで…なぜあいつが死ななければならなかったんだ………    俺が…俺も異変に気付いていたのに…あそこで俺が動いていれば…死ぬのはあいつじゃなくて俺になっていたのに……    そしたら…その時は、あいつは俺のように…悲しんでくれたかな
そんなことを考えてるうち、もう何も考えられなくなってしまった。唐突に立ち上がり、人がいたかも覚えていない教室を飛び出していった。
なぜかすごく走りたい気分だった。朝と同じ道を逆に進み、路地裏を通る。駅から学園への道は覚えていても学園から駅への道はしっかり覚えていなかった。
蒼太がこんな状態だからか道を間違えたのか路地裏はいつもより長く感じられた。蒼太はただただ目の前の道を進んでいく。もう何回右に曲がったか何回左に曲がったかもわからなくなっていた。
そのうち周りは開け、でもなぜか絶妙に日も当たらないという不思議な場所に行き着いてしまった。しかも行き止まり。しかしここだけおとぎ話の中なのかと思うような、そんな感じの家がある。その家から発せられる説明がつかない何か、引き寄せられるような何かに、蒼太は気付いた。争うこともできずそのまま家の扉を開ける。
何かの薬品のようなとどこか懐かしいような不思議な匂いがする。
「お、お邪魔します。」
癖なのかこんな状態でもつい言ってしまう。薄暗くてよく見えないがすごく散らかっている。
あれは……本? 分厚い本が何冊も何十冊もある。恐る恐る一歩踏み出してみる。ギィィと床がきしむ音。自分で出しておきながらびっくりしてしまう。誰かいたらどうしようと慌てて周りを見る。と、その時、奥の壁に映る人影に気付いた。
きっと奥の部屋でロウソクかなんかをつけその前で何かをしているのだろう。その影も蒼太と同様に音に驚いたようだった。奥から小さな足音が聞こえる。逃げなきゃ、とも思ったがなぜか足が動かない。
足音がどんどん大きくなっていく。足は依然として動かない。
足音はさらに大きくなっていく。きっとそろそろ部屋を出る頃だろう。そうしたらどうなる。
きっとこんな変な家に住んでいる人だ。蒼太のことを殺してしまうかもしれない。
(………いや待てよ。ここで俺が死ねばあいつの…未来がいる場所に行けるんじゃないか…。)
友達もろくにいない蒼太だ。死んでも悲しむ人は少ない……。
(ならこのまま……。)
そんなことを考えているうちについにこの家の住民の姿が見え始めてきた。……あれは…マント……?   と、その時住民は覚悟を決めたように勢いよく飛び出してきた。
とても小柄で………マントのせいで顔どころか肌も見えない。男なのか女なのかもわからない。と、そこでしっかりと住民を認識した蒼太は叫んでしまう。
「ひ、ヒィィ、あ、ああ、えぇっっと。か、勝手に入って、す…すいません!」
住民は無言で顔を少し上げる。
マントについているフードの隙間から血のように赤く、でもどこか優しげな目が見えた。そのまま住民は無言でこちらをジロジロと見てくる。
その時、住民がマントから勢いよく手を出した。蒼太は驚き顔を守るような仕草をしてしまった。しかし住民は武器を取り出すようなこともせず、深くまでかぶっていたフードを勢いよく後ろにやった。銀色の綺麗な長髪。雪のように白い肌。
「女……の子?」
思わず口に出てしまい。慌てて口に手を当てる。
「まあ確かに女だ。しかしお主よりも何十倍も年上じゃぞ?」
声はとてもとても幼いけど口調はなんかおばあちゃんっぽい。
「って、そんなことはどうでもいい!お主!どうやってここに入った?」
いまいち意味のわからない質問。
「どうやって…て、普通に扉から…」
当たり前のように答える
「ではなくて!この家をどうやって見つけた!」
どうやって……だと?どうやってと言われても無我夢中で走ってたせいで覚えていない。とりあえず正直に答えてみる
「なんか、無我夢中で走ってたらここについちゃって。」
おばあちゃんっぽい口調の幼女は驚いたような顔をして。
「な、なら。なぜ扉を開けた?」
これもどうやって説明したものか。とりあえずさっきと同じように正直に答える。
「な、なんか、引き寄せられるような感じがして…それd」
「引き寄せられるだと…。この家には全く逆の気持ちになる結界を張っているはずなのだが…」
幼女は蒼太が喋ってる途中なのに割り込んできた。 そして蒼太にしゃべる隙を与えず次の言葉を発する。
「もしかして…お主なら…」
幼女は何かを考えるように俯く。
「ちょっとこっちへ来い」
手を引っ張られさっきまで幼女がいた部屋に連れて行かれる。
その部屋を見た時、その広さに驚いた。外から家を見た時はこんなに広くなかったはず。しかし薄暗さや床の材質は変わってないのでさっきまでいた家なのだろう。幼女が一旦消してあったロウソクをつけた。そしてそれと同時に床一面に広がる見たことない文字が無数に書かれている円状のものを見つけた。
「こいつはお主らの言葉で言うなら魔法陣じゃな」
魔法陣自体は学園にいる魔法使いが使っているので知っている。しかしそれとは比べ物にならないくらい大きい、それに学園の魔法使いが使う魔法陣に書かれている文字は全てアルファベットなのだ。
「これは一体……」
率直な感想が口から漏れる。
「700年前に書かれた書物。禁忌魔術図鑑に記された最上位禁忌魔術の1つ 小宇宙空間じゃよ。」
禁忌……魔術?魔法なら知ってる。しかし魔術なんて知らない…。  そんな蒼太が考えていることなんて知るよしもない幼女はさらに説明をする。
「小宇宙空間は人間に命を3つ追加するもの。簡単に言えば4回殺さないと復活してしまうんじゃよ。そしてな、まだ復活できる人間は死ぬとなこんくらいの小さな結晶になるんじゃよ。」
幼女は小さな手を使って水滴のような形を作る。そしてさらに説明を続ける。
「そいつに再び命を吹き込む儀式をしてやるとな、復活するんじゃ。」
幼女はちょっと得意げに言う。しかし「じゃがな。」とちょっとニヤニヤと悪いことを考えているような顔をする。
「その結晶、わしは命結晶と呼んでいるんじゃが。それはな、とてつもない力を秘めているんじゃ。魔術や儀式の贄にもなるし、お主らの使う機械の燃料にもなる。」
話がぶっ飛びすぎていて全然信用できない。
「さっき魔術の贄にもなると言ったが…。それがあればこれまた禁忌魔術図鑑に記されている最上位禁忌魔術の死者蘇生もできるんじゃ。こいつは大量の贄と引き換えに術者以外の人間の記憶の中にいる死んでしまった人間を蘇らせることができるんじゃよ。」
蘇らせる。その言葉を聞いた途端頭の中で未来との思い出が蘇る。
「ただし小宇宙空間を発動するには、贄が必要なんじゃ。人間を1人、それもこの世にとても強い未練を残しているもののにんげんという肩書きを。」
言葉の意味がよくわからない。
「つまり贄は人間ではなくなるのじゃよ。人間という肩書きを取られると、そいつは何か新しい肩書きを見つけなくてはならない。例えばそこで……魚を選んだとする。そうすればそいつは人間の見た目でありながら人間の何倍もの速さで泳ぐことができるようになる。一見得をしたように思えるが、それは大間違いじゃ。人間という肩書きを取られるとその瞬間、戸籍などの人間としてのそいつを証明するもの、そしてそいつのことを知っている人の中からそいつに関する記憶が消える。同時にそいつの中からも関わっていた全ての人間の記憶が消える。」
その言葉に衝撃を受けた。忘れてしまっては未来を蘇らせることができないではないか…。絶望。始めてそんなような状態になった。幼女が「しかし」というまでは。
「しかし、しかしな。1人だけ記憶を持ち越すことができるんじゃ。」
その言葉になんだかすべてを救われた気がした。ここまできたら決断は簡単だった。
「なら……なら! 俺が!この俺が!贄になる!」
幼女はとても驚いたような顔をしていた。
「しょ、少年。本気か!?お、親や友の事も忘れてしまうのだぞ!?」
親なんて、ずっと海外に行っていて全然会ってない。友達なんてあんまり……いない。
「構わない。どうしても、どうしても蘇らせたい人がいるんです!だから、だからお願いします!」
一瞬の沈黙。その後幼女の顔が真剣なものになる。
「よかろう少年。その決意、確かなものだな。」
※※※
幼女は俺を魔法陣の中心に立たせると。持ち越したい記憶を、未来のことを詳しく聞いてきた。最後の確認をとり、それでも蒼太の決意が揺るがないことを知った幼女は魔法陣の外で何語かわからない言葉を唱え始めた。すると今まで淡く赤く光っていた魔法陣がとても、とても眩しく、綺麗に、輝いた。
(あぁ、あの幼女の名前聞いときゃよかったな。まあ全部……いや未来の事以外忘れてしまうんだから意味ないか。)
赤い光は広がり、一瞬で世界を包む。
本日7月16日世界は大いなる変化を得た。
そこからの記憶はほとんどない。なんか先生が熱心に何か話しかけていた気がする…。
桐真 蒼太の目の前で横たわっている彼女は…俺の幼馴染、千里 未来はさっき(と言っても未来の前にどれだけいたかわからない。3分かもしれないし3時間かもしれない)、脱獄犯の1人である異形のショットガン使いがなぜか持っていた特殊能力とその使用者を殺すための武器。異能殺しの剣によって殺されてしまったのだ。
幼馴染が殺されてしまったのに全然実感がわかない……。あんな元気すぎるやつがこんなことくらいで死なないのではないか、ただ寝てるだけでこのまま寝かせ続ければそのうちに起きるのではないかと。
あんな……あんな…元気で…うるさくて…説教ばっかしてて…しっかりしてて…いつも俺を支えてくれて…あんなに……あんなに…可愛いやつが…。なんで…なぜあいつが死ななければならなかったんだ………    俺が…俺も異変に気付いていたのに…あそこで俺が動いていれば…死ぬのはあいつじゃなくて俺になっていたのに……    そしたら…その時は、あいつは俺のように…悲しんでくれたかな
そんなことを考えてるうち、もう何も考えられなくなってしまった。唐突に立ち上がり、人がいたかも覚えていない教室を飛び出していった。
なぜかすごく走りたい気分だった。朝と同じ道を逆に進み、路地裏を通る。駅から学園への道は覚えていても学園から駅への道はしっかり覚えていなかった。
蒼太がこんな状態だからか道を間違えたのか路地裏はいつもより長く感じられた。蒼太はただただ目の前の道を進んでいく。もう何回右に曲がったか何回左に曲がったかもわからなくなっていた。
そのうち周りは開け、でもなぜか絶妙に日も当たらないという不思議な場所に行き着いてしまった。しかも行き止まり。しかしここだけおとぎ話の中なのかと思うような、そんな感じの家がある。その家から発せられる説明がつかない何か、引き寄せられるような何かに、蒼太は気付いた。争うこともできずそのまま家の扉を開ける。
何かの薬品のようなとどこか懐かしいような不思議な匂いがする。
「お、お邪魔します。」
癖なのかこんな状態でもつい言ってしまう。薄暗くてよく見えないがすごく散らかっている。
あれは……本? 分厚い本が何冊も何十冊もある。恐る恐る一歩踏み出してみる。ギィィと床がきしむ音。自分で出しておきながらびっくりしてしまう。誰かいたらどうしようと慌てて周りを見る。と、その時、奥の壁に映る人影に気付いた。
きっと奥の部屋でロウソクかなんかをつけその前で何かをしているのだろう。その影も蒼太と同様に音に驚いたようだった。奥から小さな足音が聞こえる。逃げなきゃ、とも思ったがなぜか足が動かない。
足音がどんどん大きくなっていく。足は依然として動かない。
足音はさらに大きくなっていく。きっとそろそろ部屋を出る頃だろう。そうしたらどうなる。
きっとこんな変な家に住んでいる人だ。蒼太のことを殺してしまうかもしれない。
(………いや待てよ。ここで俺が死ねばあいつの…未来がいる場所に行けるんじゃないか…。)
友達もろくにいない蒼太だ。死んでも悲しむ人は少ない……。
(ならこのまま……。)
そんなことを考えているうちについにこの家の住民の姿が見え始めてきた。……あれは…マント……?   と、その時住民は覚悟を決めたように勢いよく飛び出してきた。
とても小柄で………マントのせいで顔どころか肌も見えない。男なのか女なのかもわからない。と、そこでしっかりと住民を認識した蒼太は叫んでしまう。
「ひ、ヒィィ、あ、ああ、えぇっっと。か、勝手に入って、す…すいません!」
住民は無言で顔を少し上げる。
マントについているフードの隙間から血のように赤く、でもどこか優しげな目が見えた。そのまま住民は無言でこちらをジロジロと見てくる。
その時、住民がマントから勢いよく手を出した。蒼太は驚き顔を守るような仕草をしてしまった。しかし住民は武器を取り出すようなこともせず、深くまでかぶっていたフードを勢いよく後ろにやった。銀色の綺麗な長髪。雪のように白い肌。
「女……の子?」
思わず口に出てしまい。慌てて口に手を当てる。
「まあ確かに女だ。しかしお主よりも何十倍も年上じゃぞ?」
声はとてもとても幼いけど口調はなんかおばあちゃんっぽい。
「って、そんなことはどうでもいい!お主!どうやってここに入った?」
いまいち意味のわからない質問。
「どうやって…て、普通に扉から…」
当たり前のように答える
「ではなくて!この家をどうやって見つけた!」
どうやって……だと?どうやってと言われても無我夢中で走ってたせいで覚えていない。とりあえず正直に答えてみる
「なんか、無我夢中で走ってたらここについちゃって。」
おばあちゃんっぽい口調の幼女は驚いたような顔をして。
「な、なら。なぜ扉を開けた?」
これもどうやって説明したものか。とりあえずさっきと同じように正直に答える。
「な、なんか、引き寄せられるような感じがして…それd」
「引き寄せられるだと…。この家には全く逆の気持ちになる結界を張っているはずなのだが…」
幼女は蒼太が喋ってる途中なのに割り込んできた。 そして蒼太にしゃべる隙を与えず次の言葉を発する。
「もしかして…お主なら…」
幼女は何かを考えるように俯く。
「ちょっとこっちへ来い」
手を引っ張られさっきまで幼女がいた部屋に連れて行かれる。
その部屋を見た時、その広さに驚いた。外から家を見た時はこんなに広くなかったはず。しかし薄暗さや床の材質は変わってないのでさっきまでいた家なのだろう。幼女が一旦消してあったロウソクをつけた。そしてそれと同時に床一面に広がる見たことない文字が無数に書かれている円状のものを見つけた。
「こいつはお主らの言葉で言うなら魔法陣じゃな」
魔法陣自体は学園にいる魔法使いが使っているので知っている。しかしそれとは比べ物にならないくらい大きい、それに学園の魔法使いが使う魔法陣に書かれている文字は全てアルファベットなのだ。
「これは一体……」
率直な感想が口から漏れる。
「700年前に書かれた書物。禁忌魔術図鑑に記された最上位禁忌魔術の1つ 小宇宙空間じゃよ。」
禁忌……魔術?魔法なら知ってる。しかし魔術なんて知らない…。  そんな蒼太が考えていることなんて知るよしもない幼女はさらに説明をする。
「小宇宙空間は人間に命を3つ追加するもの。簡単に言えば4回殺さないと復活してしまうんじゃよ。そしてな、まだ復活できる人間は死ぬとなこんくらいの小さな結晶になるんじゃよ。」
幼女は小さな手を使って水滴のような形を作る。そしてさらに説明を続ける。
「そいつに再び命を吹き込む儀式をしてやるとな、復活するんじゃ。」
幼女はちょっと得意げに言う。しかし「じゃがな。」とちょっとニヤニヤと悪いことを考えているような顔をする。
「その結晶、わしは命結晶と呼んでいるんじゃが。それはな、とてつもない力を秘めているんじゃ。魔術や儀式の贄にもなるし、お主らの使う機械の燃料にもなる。」
話がぶっ飛びすぎていて全然信用できない。
「さっき魔術の贄にもなると言ったが…。それがあればこれまた禁忌魔術図鑑に記されている最上位禁忌魔術の死者蘇生もできるんじゃ。こいつは大量の贄と引き換えに術者以外の人間の記憶の中にいる死んでしまった人間を蘇らせることができるんじゃよ。」
蘇らせる。その言葉を聞いた途端頭の中で未来との思い出が蘇る。
「ただし小宇宙空間を発動するには、贄が必要なんじゃ。人間を1人、それもこの世にとても強い未練を残しているもののにんげんという肩書きを。」
言葉の意味がよくわからない。
「つまり贄は人間ではなくなるのじゃよ。人間という肩書きを取られると、そいつは何か新しい肩書きを見つけなくてはならない。例えばそこで……魚を選んだとする。そうすればそいつは人間の見た目でありながら人間の何倍もの速さで泳ぐことができるようになる。一見得をしたように思えるが、それは大間違いじゃ。人間という肩書きを取られるとその瞬間、戸籍などの人間としてのそいつを証明するもの、そしてそいつのことを知っている人の中からそいつに関する記憶が消える。同時にそいつの中からも関わっていた全ての人間の記憶が消える。」
その言葉に衝撃を受けた。忘れてしまっては未来を蘇らせることができないではないか…。絶望。始めてそんなような状態になった。幼女が「しかし」というまでは。
「しかし、しかしな。1人だけ記憶を持ち越すことができるんじゃ。」
その言葉になんだかすべてを救われた気がした。ここまできたら決断は簡単だった。
「なら……なら! 俺が!この俺が!贄になる!」
幼女はとても驚いたような顔をしていた。
「しょ、少年。本気か!?お、親や友の事も忘れてしまうのだぞ!?」
親なんて、ずっと海外に行っていて全然会ってない。友達なんてあんまり……いない。
「構わない。どうしても、どうしても蘇らせたい人がいるんです!だから、だからお願いします!」
一瞬の沈黙。その後幼女の顔が真剣なものになる。
「よかろう少年。その決意、確かなものだな。」
※※※
幼女は俺を魔法陣の中心に立たせると。持ち越したい記憶を、未来のことを詳しく聞いてきた。最後の確認をとり、それでも蒼太の決意が揺るがないことを知った幼女は魔法陣の外で何語かわからない言葉を唱え始めた。すると今まで淡く赤く光っていた魔法陣がとても、とても眩しく、綺麗に、輝いた。
(あぁ、あの幼女の名前聞いときゃよかったな。まあ全部……いや未来の事以外忘れてしまうんだから意味ないか。)
赤い光は広がり、一瞬で世界を包む。
本日7月16日世界は大いなる変化を得た。
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