命集めの乱闘〈コスモコレクトロワイアル〉

風宮 詩音

第3話 消えた日常と新たな日常

人間族の約6割の人が魔法を使えるという。


しかしその魔法だけで戦っていけるのは多くの魔力を生み出せるか、才能があるか、魔法とともに長年生きてきた一族の人間のみ。


その割合は人間族の約3割ほど。その人々はのちに妖族マニュラと呼ばれるようになった。


ならば、魔法で戦うことのできない7割の人間は3割の妖族マニュラに勝てないのか、と言われれば決してそんなことはない。


魔法だけで戦えない3割は魔法だけで戦える3割よりも体が強く運動能力も高い。


魔法を使えない4割は魔法だけで戦えない3割よりもさらに体が強く運動能力も高い。よって魔法が使えない4割は武器を使うことで長年魔法を使う3割と戦ってきた。この種族をのちに武族ブーラ


ならば残った魔法が使えるがそれだけで戦っていけるほどではない人々はどうしていたのか。


彼らは他の種族よりも持っているものは多かった。しかし浅い。とても浅い。


彼らの炎では人を灰にすることはできない。
彼らの拳では岩を粉砕することはできない。


彼らは弱かった。弱いからこそ、考えた。



魔力も、武力も。妖族、武族の5割ほどしかないなら。


灰にできないなら。  粉砕できないなら。


たしてしまえばいい。


5の力を10に。


拳に炎をまとって。


人々は彼らをあやかしを纏った拳を持つ者。妖武族マキラと呼んだ。



しかし50年前、ピタリとに3つの勢力の争いは終わった。そして次第に共存していくようになっていった。いったい何が理由なのかは今もわかっていない。


戦争が終わってからは化学が発展していった。


発展した科学が原因なのかどうかはわからないが妖武族マキラの中に魔法ではない異質な力に目覚めるものが出てきた。最初にそれが確認されたのは終戦から20年後だった。


魔法は研究ししっかり術式を作れば数種類使うことができたり何人もの人間が全く同じ魔法を使えたりする。それに対して異質な力(以下 異能力)は魔法では再現が難しいことをいとも簡単にこなすことができる。しかしある程度できることは限られてしまうし、似た能力でも使用者によって性能に大きく差ができてしまう。


※※※


私立星嵐学園は国内最上級の魔法使い、異能力者、武器使いの育成機関、星守会ほしもりかいが運営する学園の中でもそれなりに上位の学園だ。


そしてその学園があるのは10年前に作られた人工島、星島ほしじまである。噂によればこれからの国を支える子どもたちがたとえ光はバラバラでも全員に輝いて欲しいという願いを込めたとか込めてないとか。


しかし移住した若者達から「ダサい」などの意見がでたため最近は「星守の園」という名前を推してきているらしい。


島には国内最大級の図書館、博物館や東京や大阪のものと比べると小さいが遊園地もある。


この島の人間の6割は魔法、異能力、武器の修行に来ている若者。あとはいろいろな店の店員や研究者、教師などだ。この島は色々な施設が詰め込まれていており便利な一面もあれば、魔法使い、異能力者、武器使いが多くいるため治安はよいとは言えないくらいだった。


※※※


7月23日。突如空を謎の光が包む不可思議な現象が起こってから1週間たった。1ヶ月前の出来事がなければ人々が状況を理解するのにさらに時間がかかっただろう。


3日前、ロンドンの遺跡で3ヶ月前前に発見された謎の文字によって書かれた本が解読された。その本、本当の名は禁忌魔術図鑑タブーマジック・レコードという。


しかし、人々はそれを魔法と読み間違えてしまった。魔術はこの世界のほとんどの人間には知られていない、いや知られてはならないのだ。


そしてその本はあの幼女が持っているものと同じものなのだ。その本の中に今回の現象と一致するものがあった。



いにしえに生み出されその危険さから禁忌とされた20個の魔術の1つ。


名を小宇宙空間コスモ・スペースという。この情報はすぐさま世界中に拡散された。


今の人間の命の数や死んだときに人間が変化してできる結晶がどれほどの力を持っているのか、人々の理解ははやかった。その1番の理由は実験だった。実験の結果は禁忌魔術図鑑に書いてあることと全く同じだった。


というのは、帰る場所のない桐真きりま 蒼太そうたを住まわせてくれている、見た目幼女中身はおばあちゃん(?)な魔法使い(?)なリーシャ・アルバスから聞いた話だ。


蒼太は幼馴染の千里せんり未来みく以外の人との記憶が一切ない。


その人のことだけでなく自分のことでも他人が少しでも関わっていると記憶が消えてしまう…らしい。


いくら友達が少ないといえども蒼太も人間だ。いや…人間だった。人とと一切関わらないことなんてあまりない。よって今の蒼太は多くの記憶を失っていた。しかし幸いなことに両親が海外で仕事でもしているのか、家での記憶は結構残っている。


そしてもう1つ、下手したら両親よりも一緒にいたかもしれない幼馴染のこと。幼馴染としたことなどは1つも消えてはいない…はず。昔からよく未来の家に預けられていたので記憶は山ほどある。しかも他の多くの記憶が消えたことで10年前の些細なことでも鮮明に思い出せる。


リーシャは例の現象を起こす前に少し話した内容を特殊な術式で編まれた小さい紙にメモしただけらしいので昔の蒼太のことはほとんどわからないけれどきっと他の人との重要な記憶なんてないんだろう。


そうならば未来との思い出も思い出せたのでラッキーだったかもしれない。……と、こんなことをずっと考えている時間はなかった。リーシャから例の現象のことを詳しく聞いた。それに今の人間の命のことも。蒼太のことも。


蒼太は今は人間ではない。人間ではないので蒼太の命は1つのままだった。しかしどうやら例の現象の時人間ではなくなったと同時に蒼太は悪魔族になったようだった。


まだまだ練習中だが空を飛ぶことができるしリーシャのように魔術を使うこともできる。でも1週間で飛ぶ…というか浮けたのは30センチだけ。魔術だって最近やっとちっちゃな氷の粒が出せるようになったくらいだし…。こんなことではいつ未来を助けられるか…。努力しなくては…。


「努力しなくては…って思ってる割にはもう昼前じゃぞ〜。起きろ起きろ〜」


もっと努力して、早く飛行と魔術を習得しなくては。


「もっと努力しなくては〜、って思ってる割には大寝坊じゃぞ〜。聞いとるのか〜。」


もっと、も………ん?


「え、ちょ、なんで人の部屋に勝手に入って…。てかなんで俺の考えてることが…!?



「思いっきり口から出ておったぞ〜」


「え…ほ、 ほんと?」


リーシャは無言で頷く。あー なんかこんなこと前にもあったような…


「とりあえず早く起きろ〜。ちゃっちゃと修行するぞ〜」


「えちょ、まだ寝起きだし、その前に飯食わせて…」


「はいはい修行がひと段落したらな〜」


「は、はぁい」


※※※


僕も今日で10歳。あと何年一緒にいられるんだろう。ずっと未来と一緒にいたいな…。


「どうしたの?」


「え、わ、わああ。も、もう未来、脅かさないでよ〜」



「何か考え事?」


「え、な、なんでもないよ」


「………全く〜。全部聞こえてるのに……」


「なんか言ったか?」


「ううん!なんでもない!ほら、行こっ!蒼太!誕生日パーティー!始まっちゃうよ?」


(私だって、ずっと一緒にいたいよ?蒼太。でも次は心の中じゃなくてちゃんと伝えたいな。)

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