命集めの乱闘〈コスモコレクト・ロワイアル〉 外伝 ″Deep World,,
第2話 思い出は悪夢へと
おままごとが始まった。
いつも通りの配役。
いつも通りの設定。
いつも通りの流れ。
全部全部いつも通りのはず。なのに気分はいつもと違う。
でも2人がいれば大丈夫。根拠はない。でもそんな気がする。
時間がすぎていく。時計の長い針がそろそろ1周する。あと1周したらみんなお迎えが来る。そしたらまた一人になってしまう。
…とそこで首を振る。だめだだめだ。悪いことは考えない方がいい。
おままごとが楽しい。それだけ考えよう。
そう自分に言い聞かせて時計から目を離す。
ふと見た窓の外は何もかもを飲み込むような真っ暗。
さっと窓からも目を離す。
「どうかしたの?」「窓の外なんかいた?」
と2人が声をかけてくれた。
心の奥から安心する何かがこみ上げてくる。
やっぱり2人がいれば大丈夫だ。
※※※
子ども達が減ってくるとクラス関係なく大きな部屋で園児達は皆一緒に遊ぶことになる。この大きな部屋、通称「ホール」にはおままごとに使えそうな道具もたくさんある。
スポンジみたいな積み木、木の食器、大きな布、などなど。
布を床に敷いて柔らかい積み木で囲っておままごと用のちゃぶ台を置いて食器を上に置く。
「お茶がはいったわよー。」
そんな妻役の言葉を聞いておままごと用の木でできたコップに手を伸ばす。
その手が触れるか触れないかのところでコップがまるで糸に引かれたかのようにちゃぶ台の奥に落ちる。
「あらあら、どうしたの?……はい。」
拾ってくれたコップに再度手を伸ばす。
しかしその手はまたもやコップに触れることはなかった。
まるではじきあう磁石のようにすごい勢いでコップは飛んでいった。
そしてそのまま少し離れたところで遊んでいた園児達が囲むおもちゃのかごにホールインワン。
何が起きたかわからない。
とりあえずコップを取りに行く。
おもちゃのかごの周りの子ども達は何が起きたのかわからないのか、驚いたからなのか固まっている。かごにはおもちゃがたくさん入っている。そこに硬い木のコップがすごい勢いで入った。それは当然大きな音が出る。
どれだけ子ども達が騒いでいようと、どれだけ他の事に集中していても、子どもの声とは違いすぎる音には少なからず反応する子どももいる。周りに常に気を配っている保育士ならなおさらだ。
反応している。しかし理解が追いつかない。大きな音。日常生活で聞いたことがない。
どこで出た音かはわかる。少なくとも普通は保育園では出るはずがない音。
皆が気づいているのに動かない。皆わかっているのに声がでない。
理解しているのにわからない。まるで時がとまったように静寂に包まれたホール。
その静寂を1人歩いていく。それを見た保育士が我に帰ったような顔をしてかけよってくる。
しかし話しかけられることはない。保育士も何を言っていいのかわからないのだろう。
そんな保育士は無視しておもちゃのかごの中のコップに手を伸ばす。
※※※
「こんなときでも夢は見るんだな。」
声に出したのは寂しさを紛らわすためだったのだろうか、半ば自然にそうしていた。
いくら怪物といったって追っ手から逃げ続けていれば疲れるし、夜遅くなれば眠くもなる。
ということでたまたま見つけたビルの空き部屋を少しばかり改造して眠っていたのだ。
伸びをしつつ狭い部屋の壁の方へ歩いてゆく。能力を使って壁を調べてみたが壊そうとした形跡はない。
わざわざ寝込みをおそわなくとも簡単に捕まえられるとでも言いたいのだろうか。
とりあえず能力で作ったこの部屋の壁はとても厚く硬く、普通の方法で騒音を出さずに穴をあけることは不可能。
小さい穴を開けて外を見てみればまだ薄暗い。あの悪夢のせいで早く目覚めてしまったようだ。
部屋の真ん中あたりに戻りあぐらで座る。
「悪夢……か…。」
あの日あの時全てが変わった。
生活、友達、家族に家。そして自分自身も。
(こんなこと考えても気分が悪くなるだけか……。)
いくらあのときのことを考えたってもう変わらない。
「ぐぅぅぅ。」
その間抜けな音で昨日の昼から何も食べてないことを思い出す。
何か買おうにも支払いができるものは手持ちのICカードしかない。これは奴らからもらったものなので使えなくなっていたり使ったら居場所がばれるとかそんなことがあるかもしれない。
しかしこれ以外に食料を手に入れる方法はない。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅ。」
空腹には怪物だって勝てない。
立ち上がり先ほど外を見るために穴を開けた壁の方に行く。
その壁に手を触れる。そして柔らかい粘土に大きな穴を開ける、そんな様子をイメージする。そうすれば固かった壁にイメージのように大きな穴が開く。
そのまま歩く。他人が見れば穴の先にも床が続いているとしか思えない行動。もちろん床なんてない。足は完全にビルからでた。とすればその先の結末は当然落下。
表情はいっさい変わらない。恐怖なんて感じない。むしろ明け方の涼しい空気が心地よいと思える。
適当に借りた部屋はどうやらビルの最上階の8階だったようだ。
階数も気にせず飛び降りる。飛び降りながら何階にいたのか数えられる。それが怪物だ。
飛び降りながら改めて見るこのあたりの街並み。人気が少なく不良が多そうなところだった。別にそれはどうでもいい。どうせ自分に勝てるやつなんていない。それが確信できるから。そんなことよりもちゃんとこのあたりにもコンビニがあるのか、それこそが最大の問題だった。
地面の少し手前で減速する。これは自分の移動速度をいじった結果だ。
そして何事も無かったかのように着地して歩き出す。誰かが見ていても驚きはしないだろう。
それがこの街だから。
いつも通りの配役。
いつも通りの設定。
いつも通りの流れ。
全部全部いつも通りのはず。なのに気分はいつもと違う。
でも2人がいれば大丈夫。根拠はない。でもそんな気がする。
時間がすぎていく。時計の長い針がそろそろ1周する。あと1周したらみんなお迎えが来る。そしたらまた一人になってしまう。
…とそこで首を振る。だめだだめだ。悪いことは考えない方がいい。
おままごとが楽しい。それだけ考えよう。
そう自分に言い聞かせて時計から目を離す。
ふと見た窓の外は何もかもを飲み込むような真っ暗。
さっと窓からも目を離す。
「どうかしたの?」「窓の外なんかいた?」
と2人が声をかけてくれた。
心の奥から安心する何かがこみ上げてくる。
やっぱり2人がいれば大丈夫だ。
※※※
子ども達が減ってくるとクラス関係なく大きな部屋で園児達は皆一緒に遊ぶことになる。この大きな部屋、通称「ホール」にはおままごとに使えそうな道具もたくさんある。
スポンジみたいな積み木、木の食器、大きな布、などなど。
布を床に敷いて柔らかい積み木で囲っておままごと用のちゃぶ台を置いて食器を上に置く。
「お茶がはいったわよー。」
そんな妻役の言葉を聞いておままごと用の木でできたコップに手を伸ばす。
その手が触れるか触れないかのところでコップがまるで糸に引かれたかのようにちゃぶ台の奥に落ちる。
「あらあら、どうしたの?……はい。」
拾ってくれたコップに再度手を伸ばす。
しかしその手はまたもやコップに触れることはなかった。
まるではじきあう磁石のようにすごい勢いでコップは飛んでいった。
そしてそのまま少し離れたところで遊んでいた園児達が囲むおもちゃのかごにホールインワン。
何が起きたかわからない。
とりあえずコップを取りに行く。
おもちゃのかごの周りの子ども達は何が起きたのかわからないのか、驚いたからなのか固まっている。かごにはおもちゃがたくさん入っている。そこに硬い木のコップがすごい勢いで入った。それは当然大きな音が出る。
どれだけ子ども達が騒いでいようと、どれだけ他の事に集中していても、子どもの声とは違いすぎる音には少なからず反応する子どももいる。周りに常に気を配っている保育士ならなおさらだ。
反応している。しかし理解が追いつかない。大きな音。日常生活で聞いたことがない。
どこで出た音かはわかる。少なくとも普通は保育園では出るはずがない音。
皆が気づいているのに動かない。皆わかっているのに声がでない。
理解しているのにわからない。まるで時がとまったように静寂に包まれたホール。
その静寂を1人歩いていく。それを見た保育士が我に帰ったような顔をしてかけよってくる。
しかし話しかけられることはない。保育士も何を言っていいのかわからないのだろう。
そんな保育士は無視しておもちゃのかごの中のコップに手を伸ばす。
※※※
「こんなときでも夢は見るんだな。」
声に出したのは寂しさを紛らわすためだったのだろうか、半ば自然にそうしていた。
いくら怪物といったって追っ手から逃げ続けていれば疲れるし、夜遅くなれば眠くもなる。
ということでたまたま見つけたビルの空き部屋を少しばかり改造して眠っていたのだ。
伸びをしつつ狭い部屋の壁の方へ歩いてゆく。能力を使って壁を調べてみたが壊そうとした形跡はない。
わざわざ寝込みをおそわなくとも簡単に捕まえられるとでも言いたいのだろうか。
とりあえず能力で作ったこの部屋の壁はとても厚く硬く、普通の方法で騒音を出さずに穴をあけることは不可能。
小さい穴を開けて外を見てみればまだ薄暗い。あの悪夢のせいで早く目覚めてしまったようだ。
部屋の真ん中あたりに戻りあぐらで座る。
「悪夢……か…。」
あの日あの時全てが変わった。
生活、友達、家族に家。そして自分自身も。
(こんなこと考えても気分が悪くなるだけか……。)
いくらあのときのことを考えたってもう変わらない。
「ぐぅぅぅ。」
その間抜けな音で昨日の昼から何も食べてないことを思い出す。
何か買おうにも支払いができるものは手持ちのICカードしかない。これは奴らからもらったものなので使えなくなっていたり使ったら居場所がばれるとかそんなことがあるかもしれない。
しかしこれ以外に食料を手に入れる方法はない。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅ。」
空腹には怪物だって勝てない。
立ち上がり先ほど外を見るために穴を開けた壁の方に行く。
その壁に手を触れる。そして柔らかい粘土に大きな穴を開ける、そんな様子をイメージする。そうすれば固かった壁にイメージのように大きな穴が開く。
そのまま歩く。他人が見れば穴の先にも床が続いているとしか思えない行動。もちろん床なんてない。足は完全にビルからでた。とすればその先の結末は当然落下。
表情はいっさい変わらない。恐怖なんて感じない。むしろ明け方の涼しい空気が心地よいと思える。
適当に借りた部屋はどうやらビルの最上階の8階だったようだ。
階数も気にせず飛び降りる。飛び降りながら何階にいたのか数えられる。それが怪物だ。
飛び降りながら改めて見るこのあたりの街並み。人気が少なく不良が多そうなところだった。別にそれはどうでもいい。どうせ自分に勝てるやつなんていない。それが確信できるから。そんなことよりもちゃんとこのあたりにもコンビニがあるのか、それこそが最大の問題だった。
地面の少し手前で減速する。これは自分の移動速度をいじった結果だ。
そして何事も無かったかのように着地して歩き出す。誰かが見ていても驚きはしないだろう。
それがこの街だから。
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