命集めの乱闘〈コスモコレクト・ロワイアル〉  外伝 ″Deep World,,

風宮 詩音

第1話 追われ身の少年

ここはどこだろう。


彼はひたすら逃げ続けていた。夜といってもまだしばらくは店の明かりで暗くはない。しかしこの島の店や学生寮になっているマンションビルはほとんど全て同じような見た目になっているのだ。


現在地がわからない彼に対し追っ手は地図を持っているだろう。なんならこの服には追っ手に位置を伝える類の物がついているかもしれない。



だが彼にはそんなマイナスをゼロにするだけでなくプラスにまでする力がある。





彼の種族は妖武族マキラだが魔法は使わない。


異能力に目覚めた新型の妖武族だからだ。


彼の力につけられた通称は「情報書換リライト」。例外もあるが触れた物質の速度、進行方向、色、硬さ、形などを自在に操ることができる。この島が生み出した怪物だった。


この力があるからこそ彼はビルとビルの間を跳んで移動しているのだった。もちろんもっともっと速く移動することもできる。皮膚を硬くすればマッハ数十も出せる。


しかし彼には行く宛もお金もない。下手に消耗してはせっかく抜け出したのが無駄になってしまう。だから彼は必要最低限の追いつかれない速度で夜の街を跳んでいた。


(ここで捕まるわけには行かない。もうこれが最後のチャンス。)


※※※
第12地区。ここは保育園幼稚園などの幼児関連、そして小学校のような児童関連の施設が多い地区だ。小さい頃からこの島に来る子どもやこの島で生まれる子どもが増えてきたため施設が増えてきている地区。そんな地区のとある保育園。名を「たいよう保育園」という至って普通な保育園だった。


「ねーねーはやと君、おままごとしよー」
「しよしよー」
小さい女の子が名を呼びながらこっちに来る。小さい男の子も一緒だった。ここは年長組の教室。各々絵を描いたり粘土で遊んだりして遊んでいる。今は夕方。外も暗くなってきて園庭から教室に遊び場所が変わって少ししたときだった。


女の子と男の子とはいつの間にか一緒にいた。幼なじみというやつだった。そんな3人は何かと仕切るリーダー的な存在である女の子を中心によくおままごとをしていた。


背の大きなはやとと呼ばれた男の子がお父さん。リーダー的な女の子がお母さん。残った少し気弱な男の子が背の小ささから息子。それぞれがいつの間にか決まっていたそれぞれの役で今日もおままごとが始まった。


「おかえり、あなた。ご飯にする?お風呂にする?それともーわ・た・し?」
とどこで覚えてきたのやらそんなセリフで仕事帰り(という設定)のはやとを迎える。


「あいつはもう寝ちゃったのか?」
と開始早々眠っている息子役を見ながら言う。


「んーん。パパー。」


「おっと、起こしちゃったな。」
親が見ていたドラマで言っていたことをただ真似するだけ。
ただし「それともーわ・た・し?」なんてセリフは無かったと思う。



そんな家庭のほのぼのした感じを楽しんでいると息子役の迎えが来た。スーツを着たイケメンのお父さんで保育園の女子からも人気があった。


「じゃー。またあしたー。」
と鞄を持って走っていってしまった。



それから少し。夫婦の幸せな生活のようなものを楽しんでいると女の子の迎えが来た。
若いお母さんで他の化粧が濃いおばさんみたいなお母さんとはかなりちがい、なんだかうらやましくなってしまう。



そんな中今日も最後の1人になってしまった。


だけど別に寂しくはなかった。



そんな毎日がけっこう楽しかった。



それから数日後





なんだか少し熱っぽい。もらったマスクをつけてみんなが園庭で遊んでいる中ひとりで絵本を読んでいた。近くには教室の掃除をしているおばさん先生だけがいた。


いつもとがらっと変わった教室。ただただ静かで寂しくて。しかも窓から差し込む夕日のせいで余計にそう感じられた。



もう暗くなる、そうすればみんな戻ってくる。それが待ち遠しくてしょうがなかった。いつもは1人なんて何ともないのに変だ。風邪っぽいからだからなのかな。なんて考えていた。


秒針ってあんなに遅いものだったっけと、1分ってこんなに長かったっけと何度も時計を見てしまう。


今日はいつもより外遊びが長いんじゃないか、それともお日様がゆっくりしているんだろうか。まだなのか。


窓の外では先生が子ども達を集めている。


よかったもうみんなが帰ってくる。


寂しいだけじゃない、いやな予感?落ち着かない。こわい?底なし。よくわからない。なんかヤバい気がする。苦しい?気がする。



「はやと君!! だいじょーぶー?」
一番に戻ってきたいつもの2人。
その顔を見ただけでなんだか落ち着く。救われた。大丈夫な気がしてきた。


きっと気のせいだったんだ。大丈夫大丈夫。みんなと遊んでれば風邪なんて治る。そんな気がする。



「うん。大丈夫。おままごとしよ。」

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