言葉の欠片

一榮 めぐみ

消える魔法

風が強くて髪がみだれる。


大きな木がザワザワと葉を揺らす。


空の青さと緑の葉が
この星の色のように見える。


僕のお気に入りの場所はいつも
このふたつの色で構成されている。


僕は空に向かって手を伸ばす。


風をつかまえるように
空をつかむように


消えた記憶と引き換えに
何を消したかわかるかな。


それは毒。


僕はいつも、毒を浄化するために
見えない魔法を使う。


記憶と引き換えに、毒を消す。


それができるようになるまで
何度も、何度も、
貴女をひとりにしてしまった。


もう、貴女をひとりにはしない。


僕にはこの魔法があるから
生き延びることが出来るから


貴女の記憶から僕が抜け落ちてしまっても
貴女を守り続ける。


長い夢で会いましょう。
いつでも、傍に居ますから。

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