言葉の欠片

一榮 めぐみ

水の上

夢の中


水の上


スケート場みたいに滑って


あの子を捕まえて


頬にキスした。


あの子の目は虚ろで


じっと遠くを見つめてた。


僕の方なんか見向きもしなくて


ただ、


水の上に佇んでいた。


僕は後ろから抱きしめて


そんな顔しないでって


心の中でつぶやいた。


それでも知らんぷりするから


僕は水の上を


するすると滑って


あの子が僕に気がついてくれるまで


周囲の濁った山の緑を眺めて


色のない空を眺めて


黒い波打つ水の上を


沈まないように


待ってるよ。


傍らでいつまでも。

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