のぶなが! 【だんます!! After Story】
第4話
「ごめんなさい。ウチは他店との3Pサービスなどはしていないので」
「ちがっ! お前! おいっ! 妹力出せ! 今こそ本気だせ!」
「いやぁ、無理あるでしょ」
開始早々に予想だにしていない裏切りにあった。
ヒカルちゃんはマドカちゃんを見た瞬間に同業者だと見切りをつけたらしく、俺がいくら設定を説明しようにもマニアックな3P要請だと断定された模様。
「えー、現場の信長さん。そちらの状況は?」
「えーえー、大変な事になっています。妹設定で雇ったJKが土壇場で裏切りおりまして、楽しくエロ無しで過ごしましょうとの提案を一蹴されました」
「このように現場は混沌としている模様、どうですか信長さん? そちらは回復の見込みはありますか?」
「非常に難しい状況です。おっと、大変な事が起こりました! 一度中継を中断致します!」
なんと一人で中継ごっこをしていたらヒカルちゃんが怒って帰ってしまいそうになった件。
究極に加減したデコピンで空気を歪ませて顎にヒット。
気絶させちゃいました、どうしよ。
「ええ……」
「やめて! そのドン引きな視線で俺を見ないで!!」
「それ生きてるの?」
「ウソみたいだろ? 死んでるんだぜ、それで。って無い無い。寝てるだけだから」
こうなってしまっては仕方ないよね。
だって完全に嫌われちゃったわけだし、ここで帰らせてしまうとヒカルちゃんはまた風俗嬢に逆戻りなワケだし。
俺としてはちゃんと順番を守って納得させたかったけど、今回ばかりは仕方ない、作戦変更だ。
「マドカちゃん。ちょっと待ってて」
「うぉーい!? どこ行くつもりだテメェ!」
はい、どうもこんにちは。
ヒカルちゃんをショルダーオンでリアースに飛んで参りました。
以前に俺は『この世界でリアル生活とゲーマーを両立させてる元冒険者のゴミクズ畜生連中を説得して、冒険者に戻しちゃいたいと思います』と言ったな? アレは嘘だ。
今回に関しては完全敗北を認める。
ヒカルちゃんは強制で戻しちゃいます。
だんますに怒られそうな気もするけど、そこは本気で逃げてほとぼりが冷ます作戦で乗り切ってみせる。
本当はバレたくなかったんだけどね、今回ばかりは俺の性欲が悪い。
「コアちゃんも邪魔はしないでね?」
『確約はできません。最近のマスターは私に頼らず努力家な面も見せていますから』
「あらそう。じゃあ俺ちゃんと世界式弄り勝負しちゃう?」
『戻すのが面倒なので、マスターが気がつくまで放置しておく約束は致しましょう』
はい、サンキューね。ロリコアちゃんも可愛いけど、いつもの事務的なコアちゃんもかわいいよ。
そんなこんなでサクッとヒカルのアバターの元に飛びます。
ケモミミ旅飯店で空っぽのままに中の人を待ち続ける可哀想なアバターハケーン。こんなの見続けたら病むわ。
でもやっぱりヒカルちゃんはこっちの姿の方がガチで天使で可愛いよな。
人間の方も悪くないけどレベルが違う。
「えーと、リアルのヒカルちゃんをデバイスに変換して融合の方が楽か……オバナ決戦までの記憶と繋げたらいい感じね。リアルの記憶残しておいた方がいいのかな? 一応残しとくか」
デバイスに変換しようとすると、パチっと軽い痛みが走る件。
なにこれ静電気? うざいんですけど。
「はぁ? デバイスの意思認証? 外せ外せこんなもん」
『それは無理ですよ。書き換え不能領域です。私とマスターの承認が必要になります』
「うげぇ……じゃあどっちみち説得しなきゃじゃん。おーい、ヒカルちゃん、おーきておきて」
『完全に気絶してます。回復措置を行なって下さい』
なんと脆いのでしょうかラディアル袋さん。軽く空気で撫でただけなのに。
めんどいけど、干渉して全回復。
こんなちょっとでバキバキに健康状態になるって人間って面白い。
そりゃそうだよな、あんな水みたいな酒でベロベロになる生き物だし。
俺にもそんなベイビーな時代があったと思うと感慨深いぜ。
「ん、あぁ」
「グーテンモーゲン。お目覚めですかヒカル嬢」
「の、信長! あっ! ちょっと、警察呼びますよ!」
「のんのんのんのん、ここではスマホは使えませんよ。マジで、マジでちょっとだけ、話を聞いて欲しいんだわコレが」
全力拒否ってのは地味に心抉られる。
でも仕方ないよね、3P強要したと思われてるわけだし。3Pしようなんて一言も言ってないのに。
さて、ここから一々説明するのは難しい。
なのでリアースに来ちゃってる特権で、オバナ決戦前までの記憶をゆっくり移植してっちゃおう。
いきなりパンって入れたら壊れるかもだし、慎重に一つずつ、ゆっくりと。
「まず、落ち着いて聞いて欲しいんだけど、ここはある意味異世界で、ヒカルちゃんは元々こっちの世界の人だったわけ」
「なにそれ。ダンクエの設定?」
「うん。でも設定は実はガチで、実際ヒカルちゃんは、そこのヒカルちゃんだったのね」
申し訳程度に視線を動かして、ヒカルちゃんのアバターを示すと、想像通りの反応を示してくれる。
水色のパンツ見えました謝謝。
「あ、わたしだ。わたしだ?」
「そそ、一瞬アレが自分だって認識できたよね。ある日ハリポタみたいな梟が来てさ」
「あれね、だんますもネタが過ぎるよねって、違う。え? なにこの記憶、夢? 違うゲームだ。ダンクエやってたらこんな夢見たりするし」
「déjà vuね。けど、そのdéjà vuってさ、おかしくない? みんな見てるよね。ダンクエしてる奴らって」
「見る人と見ない人がいるし、それはゲームを長時間やり過ぎたって話で。でもそう言えばシステマっていないよね」
いい感じに混乱してきております。
ただ問題が、これだけ世界式に干渉してたら来て欲しくない奴が来ちゃうんだよね。
例えば、マ◯のシンドバッ◯みたいな見た目の奴とかさ。
「おい、なにしてんだクソマゲ」
「何って……ガールズトーク?」
「お前二本もちんぽ生えてんだろ」
「違うもん! これはチョンマゲだもん! ニンニンじゃないもん!」
ほら来ちゃったでしょ? 転移術式を感じたから来るのはわかってたんだけどさ、ヤムラの一件があってから、情弱にビビって世界式ちょいちょい監視してるんだよねコイツ。
「リアルに干渉は無しだって約束しただろ。これで向こうが崩壊を始めたら、また第二のリアースが作られるかもしれん。あまりヤムラに迷惑はかけたくないんだ」
「それって本心なの? ヤムラが更に高い次元の存在になったってのは言葉で理解しても本当の意味ではわかってないよね。本当はリアルアースも欲しいなって思ってるっしょ? めちゃくちゃにして、自分の世界式に染めたいって」
「、思ってるわけないだろ。アレは別物だ。リアースを保つ為に作られた限りなく現実に近い虚構だ」
「戸惑ったよねぇ。じゃあ本当のリアルってなんだろうね? 神様になり損ねただんますも俺も、それを知らないままに生きて行くんだから、全部がリアルでよくない? なんならヤムラ倒して神になっちゃおほー!!」
いきなりぶん殴りやがったアイツ!
同一存在のヤムラが嫌いで嫌いで仕方なかった癖に馬鹿にされたらブチギレるとかツートラックすぎるだろ。
でも、殴られるついでに鳩尾2発蹴っておきましたオーバー。
おかげで俺はケモミミ旅飯店の壁に埋まってますけどね。
「とりあえず、これ以上はリアルに干渉するな。ヒカルも戻してこい」
おお、何事も無かったかのように鳩尾さすりながら話してやがるよ。
結構ガチめにいれたんだけどな。
「ええ、どうしよっかなぁ。ヒカルちゃんはどうする?」
「え、戻るに決まってんじゃん」
「ほら、ヒカルもリアルに戻りたがってるだろ」
「あはは! 何言ってんのだんます!コッチに戻るって意味に決まってんじゃん」
はい、俺の勝ちー。
雑談してる間にヒカルちゃんの記憶戻してやったよね。
記憶さえ戻っちゃえば、リアルの奴らからして、どっちがガチのリアルかなんて聞かないでもわかる。
「んじゃ、やるね。デバイスオン」
「あー、アバターのデバイス化の方を選ぶのね。でも、その方が忌避感ないか」
目の前でヒカルちゃんの再構築が始まり、見慣れた姿の彼女がウンと伸びをする姿は、控えめに言って胸熱だ。
だんますは頭を抱えて首を振りまくってるけど、内心嬉しいってのは見え見えだぜボーイ。
「あーーー、すっきりした。そうそう、これこれ、これだよ。コレが私だよ!」
金髪碧眼のサラサラストレートにサークレットを巻いた真っ白な騎士服風ミニスカートのきゃわ娘。
これぞまさにヒカルたんでごわす。
冒険者になる前は憧れたりもしたもんでさーね。
「信長ぁ、昨日のは無かったってことにしてねっ?」
「勿論ですパイセン。それは俺ちゃんも全力で心の平穏が保たれるのでウェルカムな提案」
そりゃそうだよね。
仕事とは言えオーラルでオーロラなエクスプロージョンな関係とか気まずいし。
「今回は仕方ない。だが、これ以上はリアルに干渉するな。お前に紐付けして監視するからな。リアルに逃げても無駄だぞ? お前が世界式を使えばすぐにわかるからな」
「あらぁ? それはいい事聞いちゃった。俺ちゃん向こうでは電車に乗るぐらいに優等生なんだよねぇ」
「おい待て!! 」
いやぁ、待てないよねぇ。
怒りながらにも、泣きそうになって喜んでる顔見たらさぁ、頑張ってやろうって思っちゃうじゃん?
マブダチとしてはさ。
てなわけでリアルに転移。
紐付けはされてないね、一安心。
「おう、デブ。働いてるか?」
「今から帰るところだよ! てかどっから出てきた?!」
夜の9時過ぎだってのに、こいつ未だに事務所の整理してやがるよ。
進捗具合の確認に来たんだけど、案外素晴らしい拾い物だったのかもな。
「じゃあ、俺は今から偽物JK抱いてくるわ!」
「一々言わなくていいからな! あと、出勤は9時! 明日は電話屋さんくるから! おつかれ!」
真面目でよい豚である。
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