のぶなが! 【だんます!! After Story】

慈桜

第1話

 
 やぁやぁ、皆さんお待ちかね、元気にしてた? うんうん、はい、よろしい。

 あれからリアースは平常運転のままに毎日が過ぎ去ってるのはいいんだけど、元は地球をベースにしてる世界じゃない? だから国際モードがハードになってダーティなムードがポンサクレックなわけ。

 だんますに『なんか、つまんなくない?』って聞いたんだけど、諦めの境地って言うか悟り開いてるのか知らないけど、権能持ちのみんなもいるし楽しいよって当たり障りの無い生返事をしやがるわけね。

 これまではコアちゃんが一番! 冒険者なんてシステムにしか過ぎない! みたいなノリだった癖に、リアルを突きつけられて丸くなっちゃった的な?

 それだと俺がつまんないからさ。

「久しぶりに来ちゃったぜリアル東京メーン!!」

 いやぁ、いいね。
 俺ってば名古屋からアフリカ直行で変態チートキングになっちゃったじゃん?
 綺麗で緻密で頑丈な偉丈夫で頭文字集めてキチガイだっけ、違う? 

 ぶっちゃけリアースは俺の物って言われても魅力ないんだよね。

 だからさ、だんますに元気出して貰おうと色々サプライズを考えたわけ。

 泣けるでしょ? 泣けるよね。
 なんて友達思いなんだろ俺。
 心境としてはペットロスで失声症になった小娘に新しい子犬を与えるマザファカなオカンの気分なの。

 ちゃいまんねん! わてはコロに会いたいねん!

 コロは死んでしもたんやさかい、他の犬で我慢しぃ! みたいな。

 あ、ちなみにこれ実家の話ね。
 あの駄犬生きてんのかな?HAHA。

 てな訳で勝手にアフターバーナー開放してまで俺ちゃんが何をしようとしてるかって言うと、この世界でリアル生活とゲーマーを両立させてる元冒険者のゴミクズ畜生連中を説得して、冒険者に戻しちゃいたいと思います。

 だんますはそれはそれ、これはこれ、ヤムラが自分を犠牲にしてまで残してくれた世界の結果だから、この世界、
 俺らの中では干渉してない、そしてしない地球だからリアルアースとかリアルって皮肉を込めて呼んでるんだけど、このリアルに思いっきり干渉してやろうかと悪巧みしてるってわけ。ふひひ。

 おいチョンマゲ、いらんことすんな!って言ってるそこのお前。

 心配すんな、だんますが怒っても何発か本気で殴れるぐらいの自信はあるから。

 イケメンなど恐るるに足らず!ふは!

 けど、いきなり拉致ってお疲れちゃんすると、ガチでだんますと殴り合いになる可能性があるじゃん?

 だから俺ちゃんとしては『違うよだんます。あいつは自分の意思でリアースに戻りたいって願ったんだ』『そうだよだんます! 俺は自分の意思で!』みたいな茶番にするのがベター。

 あれから一年は経ってないけど、最近ログイン回数もまちまちになってきたり、辞め気味の奴らもチラホラだから、動くなら今しかないんだよね。

 やっぱりゲームってのは最盛期があれば衰勢期もあるし、盛りがついた犬もいつしかインポテンツに成り下がるじゃん? つまり、このままだとあいつら消えちゃうかもなんだよ。

 害人の冒険者も増えたりして、それなりにダンジョンフォーミングは続いてるんだけど、なんだかなぁって感じ。

 長々と俺の心境を語ったけど、大体理解した? したよね、グッド。エクセレントにシニカルだな坊や達。

 てなわけで第一回としては、当たり障りのないキャラで説得を試みようと思う。

『ひつまぶしぃ! ひつまぶしぃ! 暇つぶしぃ!うらぁ! 』

 秋葉原駅でギター掻き鳴らしてるメスガキちゃん。
 俺はあんまり知らないけど、この子も元冒険者だったらしいのね。

 冒険者のダラケちゃん。

 後半アキバの救世主的な感じで出てきたけど、スポットライト当たらずプギャーな感じだったのに、1発目で俺のパートに出てくるなんて、チンチンいれていいとしか思えない。

 髪の毛やわこそうでサラサラだし、顔面も人間感覚でそれなりに可愛いし、カリコリに細いのにパイオツ標準装備だしトゥンクだし、ん? トゥンク?

 ときめいちゃってるビフォーアフター……。

 でも、この手のヤンデレ系ってどうやって口説けばいいんだろ。
 檸檬とかなら腕引っ張って寝床に連れ込んだら頬っぺた赤くしてニャメロニャメロと嫌よ嫌よも好きのうち状態になるけど、猫獣人じゃない場合はどうすれば……。

「あの、のぶながコスですか? 」

「ああ、そうね。のぶコスね」

「ですよね! 私もダンクエしてます! クオリティ高いですね!」

 ああ、良かった。バイオさん達のゲームでネタキャラ扱いされてて初めて感謝。

「もう、俺ちゃん、自分がのぶのぶだと思ってっかんね」

「あはは! ウケる!」

 声かける前にかけて貰えるなんて僥倖。受けるって事は正常位で正常にドッキング可能ってこと?

 けど、この子はアレか、ヤムラに喰われてないから記憶がないタイプの冒険者だよな。喰われてないってことは処女? だめだ、雑念が鬼。

 記憶がないタイプの冒険者をリアースに連れ込むのってハードだよな。
『やぁ、ダラケちゃん。ダンクエの世界にいかないかい?』変態だ。
 難易度アビスとはこのことか。

 やっぱ拉致って……だめだめだめ。

「ちょっと待っててね。着替えてくるから」

「え?」

「頼むから待ってて、ガチで」

 さて、高架下の電気屋通りに特攻して、高級スーツに着替えては名刺を作ります。
 ここにアークスショップがないのってなんか寂しい。

「やぁ、お待たせしましたね」

「スーツとチョンマゲが壊滅的に合ってませんね」

「知ってた。実はワテクシ、こういう者でして」

「株式会社ドリームキャスト? あはは!名前! 名前のぶながって! あはは!」

 そっちかぁ……ドリキャスで笑い狙ったんだけど、ジェネギャにやられたな。
 まぁ、いいや。本題に入ろう。

「俺ちゃんってばこう見えてすごい人なのね。だからなんでもできるんだけど、君は夢があったりする?」

「すごい人って自分で言います?! でも夢か、夢ねぇ……ないかな? 適当に歌って、適当に帰る毎日だし」

「デビューしたいとか、有名になりたいとか?」

「特にないかも? メジャー目指してバンド組んでたけど解散しちゃったんですよ。それでバイトが無い日は路上で歌ってストレス発散! みたいな」

「ふーん、なるほど。じゃあ、俺がプロデュースしてメジャーデビューできたら、魂を捧げるってことでいいね?」

「ダメでしょ? あはは! メジャーデビューしてからが本番ですよね? てか魂捧げるってなに」

 ぐぬぬ、雑魚冒険者の癖に手強い件。
 腹パン首トンでパンチラ肩車でイヤホイしたい。

 ダメだ……よく考えたら俺って交渉得意だと思ってたけど、ハリセンでしばき回すしかしてない。
 イエスって言うまでシバけば済むと思っていた自分を殴りたい。

 穴があったら入りたい、穴子さんになりたい。

「よし、いいか歌姫よ。俺ちゃん今から変な事言うけど、それは下心とかじゃなくて、素直に率直な意見だ」

「お? おう」

「まず、色々と話したい事があるが、さっきから俺の本能が雑念にまみれてヤヴァイ。だから冷静に話し合う為に抱かせてくれないか? 具体的には穴子さんになりたい」

「あぁ、なるほどね。えぇー? なんでだよ?! ビビりすぎてマス◯さんのリアクションになっちゃったよ!?」

「わかってる! そんな事は百も承知なんだ!! だけど、だけど僕の前頭葉が! 前頭葉が変態なんだ!!」

 あ、頭踏まれました。みえ。ピンクのパンティとか実にかわいらしい。

「なにみてんの?」

「ピンティーさんです」

「変態がぁ!!」

 お疲れ様です。アコギで側頭部ドライバーショットかまされました。
 しかし此処で折れてしまえばダラケちゃんとの交渉は終わってしまう。

「風俗!! 風俗行ってくるんで、連絡先教えてくださいっ!!」

「ふわぁぁあ!? それなに?! ナンパ? いや、ナンパじゃ、意味わかんない! 意味わかんないよ!」

「あーディーバ!! ウェイト!! ウェェェイト!!」

 逃してしまいました。
 いや、これは仕方ない。
 初期ポケモ◯でミュウ◯ー体力マックスでノーマルボールでゲットはできないしね。

 つまり彼女をミュウツ◯と見立てて戦うには、体力を減らす必要があるってことね。

 俺は諦めない、諦めないぜダラケちゃん。

 よく知らんが、お前を必ず冒険者にしてみせる。

「おっ? 信長か。何してるんだ?」

「あー、これはこれは松岡君。ちょっと寝落ちでこっちの世界に来ちゃったんだけどね」

「いや、無理あるだろ、それ」

「あは、あははは! クソが!! お前は後回しだクソが! クソが!!」

 先ずは逃げる。
 あいつは上位組プラス銀の手シルバーハンドの権能持ちだが、ヤムラに喰われてやり直した変なタイプだから、夢とゲームアバターを媒介に意識がガチで行き来してるんだよ。
 どっちの世界でも、どっちの世界も夢だと思ってた変なタイプだ。

 ダンクエとバイオズラ達の説明のおかげで二つの世界を認識できるようになったらしいけど、松岡君と龍王は重度のダンクエ中毒だと思い込んでた節があったりとかなんとか。

 なんにせよ俺ちゃんがこっちにいる事はバレたくないから、アレは後回し。

 今はダラケちゃんだ。
 ちゃんとあの子をやっつけて、自分に自信を持ってからサプライズ計画を本格化させたい。

 開始早々すまないが、とりあえず所用で池袋に行ってくる。
 明日からダラケちゃんアタック再開って事でよろしく。


 ━━


 ふぅ……なんだろう。
 美しい珊瑚の海を守りたい。

 雑念に塗れたエンターテイメントな思考は解消された。

 なんでかって話は野暮だ。

 抜き袋に来たらイケるに決まってる。
 そりゃ、自然の摂理ってもんさ。

 真面目に山手線乗ってまで何してんだろって自己嫌悪が半端ないけど、折角来たんだし片っ端から配達してもらいたいって思うのはおかしいのかな。

 てか、なんで池袋って街で歩いてる嬢はそれなりに可愛いのに、配達してもらったらモスラとかラモスみたいな奴が来るのかな? これってアルアルなの?

 黒ギャル専門店で配達頼んだのに、ホワイ◯ベースみたいなの来ちゃったよね。

 豆タンクとかならもっといいけど、ホワイトベー◯だよ、ホワイトベース。
 規模が違います。

「えと、なんで放心状態なの?」

「築地のマグロの気持ちになったことある?」

「え、いや、ないけど……」

 俺ちゃんがおまいらに教えといてやる。

 配達1万8千、ホテル代5千で2万4千円コースで普段より少しハイランクの遊び、つまり庶民の贅沢モードを楽しもうかと期待に胸を弾ませた時、夢の扉の向こうにホワイトベー◯が立っていたとしよう。

 あるよな? わかってくれると信じてる。

 そんな時は、足ピン気をつけの姿勢で無表情に天井のシミを数えるんだ。

 トークなんていらない、視覚もいらない。

 音と人肌と感覚のみに五感を集中させ、中学生時分の脳回路が焼き切れるぐらいの鮮明な妄想力をここぞとばかりに復活させて、小松菜◯が本気を出してくれている姿を描くんだ。

 それがダメならスマホでエロ動画を見ながらがマストだが、それはあまりにも失礼なので妄想マグロコースがお勧めだ。

「シャワー浴びます? って、なんで泣いてるんですか?」

「汚れちゃったよね、わたし」

「なんか酷いんですけど?!」

 そこでコンコンノックです。
 次の便が来ました。
 今日は時間指定で回転木馬の働きを見せるんで、ホワイトベー◯さんにはさっさとお帰り願います。

「頼むから今すぐ帰ってくれ」

「ちっ、死ねよ」

 そそくさと肉弾要塞が着替えて帰ると、次のピザとご対面。

 おっ、おおお、四人目にしてやっと内角低めにギリギリ入ってるマーン登場。

 おじさまにお金を払ってカモンメーン。

 ああ……まじか。
 折角かわいい子来たのに。

「うわ、めっちゃのぶってる」

「あー、えー、どうぞ」

 どうしようどうしようどうしよう。
 メタニウムのヒカルちゃんだこれ。
 データベース仕事すんな、見た瞬間わかっちゃったじゃんよ。

 そうだよ、そうだったよ、ヒカルちゃんって冒険者になる前デリ嬢だったって情報はバッチリゲットしてたんだよ。けど、こんなタイミングってありなの?

 モスラ、ラモス、ホワイトベー◯と来て、ゴリッゴリにかわいい金髪色白ギャルが来たと思ったらヒカルちゃんて! くそっ、神は死んだ。ヤムラ死ね。

「ちょっとトイレしてくるんで、すいません」

「お風呂準備しとくね」

 考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ俺。
 俺はリアースの宮司だぞ、だんますの為に冒険者達をリアースに復活させる為にリアルに来た。

 ここでヒカルちゃんにペロリアーノロナウドしてもらってポルトガル剥き出しのままに相対して、その先に友情など生まれるか? 否! 断じて否だ!

 日中ダラケちゃんに迫って失敗したばかりだと言うのに同じ轍を踏むつもりか殺戮大臣信長ぁ!!
 殺戮どころか殺伐としてしまうわい。

 でも、どうしよう。

 モスラとラモスとホワイトベー◯の後だから、期待値に胸が弾んで、俺のマルコポーロがヴェネツィア状態なんだが……。

 よし、冷静になろう。

 1発ここで抜いてしまおう。

 先ほどマグロコースでテポドンしたが、この期待値はライトハンドで潰してしまおう。

「あー、いけないことしてるー」

「ホワァイ?」

「時間内ならヒカルが頑張るよ」

「フォーリンラブァォァア!!」

 正直、ここから先の記憶がない。
 反省はしてるし後悔もしてる。

「ちょんまげ二つ、あはは」

 ヒカルちゃんのその言葉だけが妙に俺の耳に残った。

 凄まじい罪悪感と興奮は表裏一体。
 ここで最高でしたと割り切れれば問題ないが、俺は薄情な男にはなりたくない。
 てなわけで、予定変更でヒカルちゃんを口説きたいと思います。

 つまりは電話でおかわりを要求。

『申し訳ございません。ヒカルさんは本日あがってしまいまして』

「そうですか、残念です。次回出勤の際の予約などは?」

『明日の18:00よりの出勤となっております。予約の方は大丈夫ですよ』

「じゃあ、マックスでお願いします。時間全部。金ならあります」

 さぁ、明日は本気でヒカルちゃんの説得に動こう。

 ……あれ? なんか俺、女の子しか見てなくない? 気のせいだよな。

 ダラケちゃんとヒカルちゃん! 俺は君達を冒険者に戻してみせる!

「ふはっ、ふはな、ふあーっはっは!!」




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