冒険者 カイン・リヴァー
イーファ平原
自宅へ戻ったカインは、魔導書を読んでいたアベルに近づくと、アベルは本の向こうから顔を出した。
「学校終わったんですね。どうでした」
「これからイーファ平原の先にある地下迷宮に行く。すぐに旅支度してくれ」
「え、ええ? これからって、もう午後も過ぎてますよ!」
「行き先はどうせ地下だから朝も夜も関係ない、大丈夫だ! ほれ、準備準備!」
アベルは深々とため息をつくと、魔導書の開いていたページにペンを挟み、机の上に置いた。それから旅支度を済ませた二人は、馬屋にて馬を借り、南へ向けてイーファ平原を目指した。
────イーファ平原に辿り着くころには日が沈み、空は紺色と橙色に染まっていた。
グラントより南に位置するイーファ平原は、ひたすらに短い草花の広がる草原地帯であった。穏やかな景色とは裏腹に、夜になれば凶暴なモンスターが出没することで有名であった。そんな折、二人は手綱を引く手を強めた。
「アベル!」
「ええ。これはスカルナイト……これだから夜に出歩くのは嫌だったんです」
「わーるかったって! しかし、厄介なのに当たったな」
二人の前に立ちふさがったのは、まるで近衛騎士が身に着けるような全身を覆う頑丈な鎧の人物であった。一見人間にも見えるが、鎧の可動部から垣間見える白骨から夜行性のモンスター、スカルナイトであることがわかった。その両手には剣と大盾を持っており、不気味にもゆっくりと二人のもとへと近づいてきている。
「風の気、その流体を集約せよ」
アベルが杖を振りかざすと、風のなかった平原に突如として突風が巻き起こり始めた。続けてアベルが唱えようとすると、不意に視界の中に剣が飛び込んできた。間一髪でそれを避けたアベルが背後を見ると、剣を掴んでいた籠手部分だけが宙に浮いていた。
「早いですね」
宙に浮いた籠手はそのままスカルナイトのもとへと帰っていくと、スカルナイトはすべての体のパーツを分離させ始め、それをアベルへと向かわせた。それを読んでいたかのように、それらすべてをカインが弾き落とした。カインの魔斧ドラードは赤く脈動している。
「カイン、その斧の光は……!」
「どうやら夜が得意な相手によく効くそうだ。ほら詠唱!」
「す、すみません。風の気、その流体を研ぎ澄ませ切り刻め」
先ほどの突風がまるで意思を持つようにしてうねり出した。一瞬、白く光ったかと思えば、地面に転がっていたスカルナイトの鎧が宙を舞い、みるみるうちに切り跡が増えていった。
「まだ! 風の気、その流体で押しつぶせ」
突如、轟音にも似た音が平原に響き渡ってきた。風が更にスカルナイトへと集まり始め、ひとたび風が止んだかと思えば、爆風がカインとアベルを襲った。スカルナイトは風圧により地面に押し付けられ、みるみるうちに鎧が壊れていき、白骨部分も粉々になっていった。
全てが終わったあとには、スカルナイトの鎧片と骨片しか残っていなかった。それはもう動き出す様子はなかった。
「大技決めたな、よくやった。早くこんな平原抜けちまおう」
「ちょっと待ってください。スカルナイトの鎧片と骨片は高く売れるんです。旅の資金にしましょう!」
そう言ったアベルは満足げに散らばったそれらを拾い集め、バッグへと詰め込んだ。
「文句垂れてたのにやるこたやるんだな……」
「学校終わったんですね。どうでした」
「これからイーファ平原の先にある地下迷宮に行く。すぐに旅支度してくれ」
「え、ええ? これからって、もう午後も過ぎてますよ!」
「行き先はどうせ地下だから朝も夜も関係ない、大丈夫だ! ほれ、準備準備!」
アベルは深々とため息をつくと、魔導書の開いていたページにペンを挟み、机の上に置いた。それから旅支度を済ませた二人は、馬屋にて馬を借り、南へ向けてイーファ平原を目指した。
────イーファ平原に辿り着くころには日が沈み、空は紺色と橙色に染まっていた。
グラントより南に位置するイーファ平原は、ひたすらに短い草花の広がる草原地帯であった。穏やかな景色とは裏腹に、夜になれば凶暴なモンスターが出没することで有名であった。そんな折、二人は手綱を引く手を強めた。
「アベル!」
「ええ。これはスカルナイト……これだから夜に出歩くのは嫌だったんです」
「わーるかったって! しかし、厄介なのに当たったな」
二人の前に立ちふさがったのは、まるで近衛騎士が身に着けるような全身を覆う頑丈な鎧の人物であった。一見人間にも見えるが、鎧の可動部から垣間見える白骨から夜行性のモンスター、スカルナイトであることがわかった。その両手には剣と大盾を持っており、不気味にもゆっくりと二人のもとへと近づいてきている。
「風の気、その流体を集約せよ」
アベルが杖を振りかざすと、風のなかった平原に突如として突風が巻き起こり始めた。続けてアベルが唱えようとすると、不意に視界の中に剣が飛び込んできた。間一髪でそれを避けたアベルが背後を見ると、剣を掴んでいた籠手部分だけが宙に浮いていた。
「早いですね」
宙に浮いた籠手はそのままスカルナイトのもとへと帰っていくと、スカルナイトはすべての体のパーツを分離させ始め、それをアベルへと向かわせた。それを読んでいたかのように、それらすべてをカインが弾き落とした。カインの魔斧ドラードは赤く脈動している。
「カイン、その斧の光は……!」
「どうやら夜が得意な相手によく効くそうだ。ほら詠唱!」
「す、すみません。風の気、その流体を研ぎ澄ませ切り刻め」
先ほどの突風がまるで意思を持つようにしてうねり出した。一瞬、白く光ったかと思えば、地面に転がっていたスカルナイトの鎧が宙を舞い、みるみるうちに切り跡が増えていった。
「まだ! 風の気、その流体で押しつぶせ」
突如、轟音にも似た音が平原に響き渡ってきた。風が更にスカルナイトへと集まり始め、ひとたび風が止んだかと思えば、爆風がカインとアベルを襲った。スカルナイトは風圧により地面に押し付けられ、みるみるうちに鎧が壊れていき、白骨部分も粉々になっていった。
全てが終わったあとには、スカルナイトの鎧片と骨片しか残っていなかった。それはもう動き出す様子はなかった。
「大技決めたな、よくやった。早くこんな平原抜けちまおう」
「ちょっと待ってください。スカルナイトの鎧片と骨片は高く売れるんです。旅の資金にしましょう!」
そう言ったアベルは満足げに散らばったそれらを拾い集め、バッグへと詰め込んだ。
「文句垂れてたのにやるこたやるんだな……」
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