冒険者 カイン・リヴァー
戦場
前方からは数えきれないほどのモンスターの集団が、まるで今回のクエストを予期していたかのように、迫ってきていた。加えて、畳みかけるように崩れた城壁の陰から、弓を持ったゴブリンらがこちらに矢を向けている。平野には僅かな木々と草原が広がるのみで、目立った遮蔽物は散らばった城壁の瓦礫のみであった。
さすがに幾人かの冒険者はざわついた。数人の死は覚悟しなければならないとカインは思った。ジークはそんな状況下でも冷静に皆へと号令をかける。
「魔導術師は矢が届かないように元素術を発動して防衛! それ以外は魔導術師を護衛しつつ、モンスターと多対一を持ち込んでいけ! 一匹ずつ倒していくぞ!」
魔導術師らは矢が飛んでくる軌道上に水や土の壁を張った。アベルもそれに併せて、風魔導を使い強風を巻き起こして見せた。ほぼ無風に近かった戦場から僅かな風をかき集める"風呼び"と呼ばれる魔導であった。
「アベル、お前いつの間に覚えたんだよ」
「一番原理が簡単なものだったので、これだけは道中で使えるようにしておいたんです」
カインは「負けてらんねえ」と魔斧ドラードを構え、モンスターの群れに向かっていった。それを見たギルは眉をひそめる。
「馬鹿な、多対一と父上に言われていたろうに!」
「いえ、カインは誰かと連携を取るのが苦手なんです。大斧を振り回す戦い方だと、逆に巻き込んでしまわないか、心配で思い切り戦えなくなってしまうので」
「なんと破天荒な……」
カインの前に立ちふさがったのは、冒険者の間では小物と呼ばれる魔獣と化した狼の群れであった。カインを敵と見なした途端、間髪入れずに一斉に飛びかかってきた狼に対して、カインは魔斧で弾いてみせた。一度距離をとった狼は、様子を見るようにしてカインの周囲を円になりながら回り始めた。
「ちい、普通の狼よりすばしっこい。俺のでかい獲物じゃあ、ちと不利か。せっかくの魔斧だが、今回はお預けだな」
カインは諦めたように魔斧を地面に倒すと、それだけで重低音が鳴り渡り、砂ぼこりが舞い上がった。それから、まるで準備運動をするように腕や手足首を回して深呼吸を始める。グッと全身に力を込め、大きく前へ一歩踏み出したかと思えば、次の瞬間には数メートル先にいた狼を殴り飛ばしていた。
残りの狼らがカインの位置を目で追う前に、また次の狼を殴っていた。順繰りに一匹ずつ仕留めていったカインは、やがて全てを殴り倒すと、その場で深呼吸を数回繰り返した。瞬間、全身から汗が噴き出し、それを拭った。
魔導術師らを護衛していたギルは、その姿を見て唖然としていた。ただの鍛え方ではあの速度は出すことはできないことは一目瞭然であった。ギルが遠目に見るカインは、小さくも人でありながら、まるで人ではない何かに映っていた。
さすがに幾人かの冒険者はざわついた。数人の死は覚悟しなければならないとカインは思った。ジークはそんな状況下でも冷静に皆へと号令をかける。
「魔導術師は矢が届かないように元素術を発動して防衛! それ以外は魔導術師を護衛しつつ、モンスターと多対一を持ち込んでいけ! 一匹ずつ倒していくぞ!」
魔導術師らは矢が飛んでくる軌道上に水や土の壁を張った。アベルもそれに併せて、風魔導を使い強風を巻き起こして見せた。ほぼ無風に近かった戦場から僅かな風をかき集める"風呼び"と呼ばれる魔導であった。
「アベル、お前いつの間に覚えたんだよ」
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「馬鹿な、多対一と父上に言われていたろうに!」
「いえ、カインは誰かと連携を取るのが苦手なんです。大斧を振り回す戦い方だと、逆に巻き込んでしまわないか、心配で思い切り戦えなくなってしまうので」
「なんと破天荒な……」
カインの前に立ちふさがったのは、冒険者の間では小物と呼ばれる魔獣と化した狼の群れであった。カインを敵と見なした途端、間髪入れずに一斉に飛びかかってきた狼に対して、カインは魔斧で弾いてみせた。一度距離をとった狼は、様子を見るようにしてカインの周囲を円になりながら回り始めた。
「ちい、普通の狼よりすばしっこい。俺のでかい獲物じゃあ、ちと不利か。せっかくの魔斧だが、今回はお預けだな」
カインは諦めたように魔斧を地面に倒すと、それだけで重低音が鳴り渡り、砂ぼこりが舞い上がった。それから、まるで準備運動をするように腕や手足首を回して深呼吸を始める。グッと全身に力を込め、大きく前へ一歩踏み出したかと思えば、次の瞬間には数メートル先にいた狼を殴り飛ばしていた。
残りの狼らがカインの位置を目で追う前に、また次の狼を殴っていた。順繰りに一匹ずつ仕留めていったカインは、やがて全てを殴り倒すと、その場で深呼吸を数回繰り返した。瞬間、全身から汗が噴き出し、それを拭った。
魔導術師らを護衛していたギルは、その姿を見て唖然としていた。ただの鍛え方ではあの速度は出すことはできないことは一目瞭然であった。ギルが遠目に見るカインは、小さくも人でありながら、まるで人ではない何かに映っていた。
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