侵略のベルゼブブ

わいゑえす

出撃待機中


 あの会議からまた数日後

 ベルゼブブ卿の新しい侵略方法を実践する次の異世界侵略がいよいよ始まろうとしていた。現在の時点でジジイの部隊、アルフレッドの部隊が既に異世界に渡り、残る部隊はモツニスの部隊とドライツェンの部隊だけとなった。

 ドライツェンの部隊に配属になったヤマトとミレーナは次の侵略における意気込みを語りながら、出撃の出番を待っていた。

「いよいよ次の異世界侵略か。ミレーナちゃんは次はどういう奴が来ると思う?」

「どうせロクな奴じゃないんじゃない?ロリコンとかロリコンとかロリコンな奴だよどうせ。」

「ミレーナちゃんはロリコンに恨みでもあるのか?」

「そうなの!聞いてくださるそこのお兄さん。実はわたしの兄がひどいロリコンを患っておりましてぇ。」

「何?そいつは許せないな。どれ、俺が退治してやろう。」

「はぁ、自分で言ってて虚しいって思わない兄半端ないっすわー」

「ふっ・・・一体何を言うんだと思えばどうってことは無い。これは妹に対する愛情の深さみたいなものなんだ。考えてもみろ、俺たちは元他人だったのが今じゃお互い兄妹としての認識の方が強いんだぜ?俺はこの兄妹間を険悪な兄妹間にしないために一層ミレーナちゃんを愛する兄貴を努力しているんだ。まぁ仮に兄妹じゃなくなったとしても俺はミレーナちゃんを手放す気はことさらないがな。」

「そのブレなさ、もはや尊敬に値するわー。わたしの兄はとんでもないロリコン野郎ってのがよくわかったよ。」

「だけどミレーナちゃん、これだけは間違いなく言えることなんだが、勘違いはしてほしくないから言っておくが俺のストライクゾーンは年上だ。」

「・・・それはそれで最低。」


 と、二人が下らない会話に現を抜かしているとモツニスの部隊の調査隊員の3人がヤマトとミレーナに近づいて声をかけた。

「まったく、さっきから聞いてればロリコンだの年上だの。新人は新人らしく震えて待機してろっつの。」

「下品。」

「君が大和 ヤマトか。奴らと同じ世界出身の・・・ね。やっぱり奴らと雰囲気が似てるよ・・・ね。」

「お?お前たちも調査隊員かよ。よろしくな。」

 ヤマトは声をかけて来た3人の調査隊員に目をやり、観察した。

 右からガラの悪い青年と獣の耳を生やした女性、そしてニコニコしたエルフの若者だ。あー自分より年上のしかも先輩か、とヤマトは処世術を図るためにここは愛想よく対応するつもりだ。

「ミレーナちゃんから話しは聞いてますよ先輩方。ははっ俺も少し舞い上がっちゃったのかもしれません。これからは自重します。」

 ヤマトは嘘をついていた。別にミレーナから話しなんて聞いてないし舞い上がってもいなかった。ただ、この3人が先輩風を吹かせる気なのがヤマトにはわかってしまった。だからこそ穏便な対応をして目をつけられまいと低姿勢に話しを返したのだった。

「あ?話し?なんの話し聞いたんだぁ?おい!」

 ガラの悪い調査隊員がややキレ気味に食いついて来た。

ーおっと。こいつ、なんか後ろめたいことでもあるのか?

「いやなに、先輩方の 武勇伝 を聞いただけですよ。」

ーさて、あえて武勇伝って言葉をよく聞こえる様に言ってみたけど果たしてこのガラの悪い先輩は嫌味と受けとるか、はたまた本当に武勇伝を語りだすか・・・いい準備運動になりそうだ。

「・・・聞いてテメーはどう思ったんだ?こら」

ーん?向こうも気づいたか?俺がちょっと腕試ししてる事が。ミレーナちゃんの時もそうだったけどここの連中、察しが良すぎないか?

「ははっ俺からすればまだまだってところですね。」

「あ?オレのどこがまだまだだっつんだ?」

ーまだどっちかわからんな。嫌味か、武勇伝か。ええい、2分1に賭けるか。

「先輩、別に俺は先輩を否定したくてまだまだって言った訳じゃないですよ?先輩の様になるには自分がまだまだだって言いたかったんです。言葉足らずでサーセン。」

「はっテメー割とわかってんじゃねーか。」

ーあぶねー。どうやら当たりか。

 「んで、ミレーナから話しを聞いてるってことはオレの名前、もちろん知ってるよなぁ?」

「・・・もちろんっすよ」

「じゃぁ言ってみろや」

「・・・。」



「はっはっは!坊やの負けー!はっはっは!」

「姐さん、この新人にここの厳しさっつうのを教えてやって下さいよ!?」

「んー?あたしはこのままでいいと思うな。坊やが坊やちゃんに降格したから!はっはっは!」

「姐さん、それはいくらなんでもあんまりじゃないか。それに、俺には大和 ヤマトって名前があるんだからそろそろそっちで呼んでくれないか?」

「あたしが名前で呼ぶのは認めた奴だけだよ。坊やちゃんはいつになったらあたしに名前で呼ばせてくれるかねぇ?」

「そいつはいい!新入りよぉ!オレもオレが認めてやるまでは新入り呼ばわりしてやんよ!」

「はっはっは!あんただってあたしから言わせてもらえばチンピラ君だよ。イキがるなっての。坊やちゃんをイビっていいのはあたしだけさ。」

「姐さんのイビり、俺はありがたく頂戴しよう。ふっ俺もいよいよマゾにジョブチェンジか・・・悪くない。」

「言ったな?言ってしまったなぁ?よーし、坊やちゃんは今からあたしの玩具だ。はっはっは!」

 ドライツェンはヤマトの背中を何度も叩き高らかに笑った。背中を叩かれ続けたヤマトは既にマゾの兆しが見え始める。
 そしてガラの悪い青年はその光景を見て驚愕した。

「し、新入りぃ!テメー姐さんからの玩具認定たぁ随分じゃねぇか。オレは決めたかんな?もう決まったかんな?テメーはオレの敵だ!」

「はぁ?どうして敵なんすか?」

 そのやり取りを見ていたモツニスもいよいよ口を挟んだ。

「わかってやれ兄弟!!こいつはドライツェンに気に入られてぇんだ!!」

「ちょ!モツニス!なんでバラすんすか!」

「あ、あぁ!なんかサーセンね先輩。というか姐さんは俺のこと気に入ってんの?」

「はっはっは!気に入ってるに決まっているじゃないか!あたしは坊やちゃんの名前を聞いた時から既に気に入ってたよ。」

「俺の名前?んー、あ!戦艦 大和のくだりか。」

「それそれ。あたしはこう見えてレアアイテムの鑑定にはうるさいんだ。そのあたしが見つけたレアアイテムと同じ名前でしかもカッコいい名前じゃない?だから坊やちゃんもきっとレアアイテムの価値があるからあたしは気に入ってる。そしてあたしのコレクションだ。」

 ドライツェンは恥じる事なく堂々とヤマトお気に入り発言をした。
 それを聞いたガラの悪い青年は遂に動き出す。

「コ・・・コレクション・・・。新入りぃ!テメーちょっとこっち来いや!」

「おいおいおい!!兄弟喧嘩かおい!!出撃までこのモツニス様が立ち会ってやろう!!」

「いや、オレはこいつとはサシで話しがしてえ。これは漢と漢の真剣なやり合いだ。誰にも邪魔させねえ。」

 ヤマトとガラの悪い青年はブリッジルームの隅に行き、周りに聞こえない声で話すこととなった。

「新入り、テメーどんな手を使ったんだ?あ?」

「どんな手?言ってることがよくわかんねっすね。」

「オレはな新入り、どうしても姐さんに気に入ってもらわなきゃなんねんだ。」

「気に入るって・・・いや、さっき姐さんが話してた通りなんだけど。」

「つってもよぉ、テメーと姐さんはやけに息が合ってんじゃねーか。あ?」

「そりゃ毎晩姐さんの部屋行ってたからじゃないっすかね。朝まで一緒にいれば嫌でも仲良くなりますって。」

「テメ・・・まじかよ・・・姐さんと朝まで?しかも毎晩・・・だと?」

 この時、ヤマトの脳裏にある直感に似たものが走った。こいつはジジイに似ていると。今エロ変換したなと。

 ーなんだ、この先輩大したことないないな。ジジイと同類か。俺も大概だけどこいつも相当だな。

「つーことは、テメーは姐さんの素顔を見たっつーことか?」

 ここでヤマトの悪い虫が疼いた。さっきのお返しだ、と

「ええ。簡単でしたよ?脱がすのは。」

「ぬが・・・え?」

「俺が頼むまでもなく、自分から脱いでくれました。あたしを見ろってね。」

「それで・・・どうなった?」

「想像通りの可愛さでしたよ。後は想像にお任せで。」

「・・・・・・。」

ー勝ったな。

 ガラの悪い青年はそのまま何も言わずに元の場所に戻った。かくいうヤマトはにやけヅラでドライツェンの元へ戻る。

「どうだった坊や?きつくシメられたかい?それともノシて来たのかい?」

「ふっ姐さん。多分この艦の野郎には負けないな。」

「はっはっは!チンピラ君は煩悩を捨てるべきだったな。坊やの方が一枚上手か!」

「あまりお兄ちゃんを褒めると侵略のときミスするからやめた方がいいですよ姐さん?」

「ミレーナぁ。あたしを誰だと思う?」

「あぁ。そうでした。心強いです!」






 そしてドライツェンの部隊の出番が訪れた。ベルゼブブ卿が出撃命令を下す。

「では、ドライツェン任せたぞ?少年とミレーナも無駄死には許さんからな?」

「はいよ。」
「了解!」
「了解。」


「汝ら、このベルゼブブの力にて・・・世界を侵略せよ!」

 ベルゼブブ卿の合図と共に3人は異世界へ飛んだ。

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