侵略のベルゼブブ
アルフレッドの侵略
 「異世界転生者ぁっ!!」
 ヤマトがそう叫び、目の前のやる気のなさそうなシシカバに飛びかかった。
「魔族めっ!ついに本性を現したな!」
「がっ?!」
 ヤマトは壁へと打ち付けられた。ヤマトの腹部に激痛が走る。何が起きたのか理解するのに時間を要した。
ー今のは膝蹴り?それともあいつの手に持っている剣の柄なのか?速すぎて何も見えなかった。異世界転生者のチート持ちってのはこんなに強いのかよ!
 ヤマトは体制を立て直すと同時に、相手を撹乱する為、異世界転生者の周囲を円を書くように走る。その走るスピードは、常識外な程の速さで壁を走ることも可能な程のスピードだ。
「結構速いな。」
 シシカバはヤマトを初めて評価した。
「そりゃどうもっ!」
 そう言い放ちヤマトは再度、シシカバに飛びかかった。
だが
「まぁ、おれの方が速いけどな。」
 シシカバはヤマトの懐にそれよりも速いスピードで飛び込んだ。
 そして唱えた。
「雷撃魔法!」
 ヤマトは対応できず、雷撃魔法が直撃した。
「あぁあぁああぁっ!!」
 ヤマトは頭のてっぺんから足の先まで激しい痺れを痛感する。
 立て続けにシシカバがトドメの態勢に入った。
「終わりだ。魔族っ!」
「・・・じゃねぇっ!」
 ヤマトは満身創痍になりながらも、シシカバへこう叫んだ。
「俺は!侵略者だぁぁぁっ!!」
 無謀にもヤマトはシシカバへ無防備に突っ込んで行った。
が
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 ミレーナを追っていたであろう兵士達が叫びながらシシカバの元へ血の気を引いた表情で逃げて来た。
 ヤマトとシシカバは手が止まる
ーなんだ?兵士達が逃げてきた?
 ヤマトは意識が朦朧としてはいたがまだ考えるだけの力はあるようだ。
 そして何故、兵士達が逃げて来たかを理解した。兵士達の背後から歩いてくる2人に見覚えがあったからだ。
「ミレーナちゃん!それにアルフレッドさん!?」
「やぁ、ヤマト君。なかなかにいい姿になっているじゃないか。」
「す、すいません。」
 ミレーナがヤマトを心配し駆け寄る。
「お兄ちゃん!大丈夫?!」
「ミレーナちゃん。流石は先輩にして俺の妹だ。報告が早いなぁ。」
 ミレーナはヤマトを介抱するため、ヤマトの体を支える。彼女はとても心配そうにヤマトを見つめた。
 シシカバはそれが気に入らないのかヤマトへ斬りかかった。
「ミレーナ!君は騙されている!こいつに!」
 だがシシカバの剣はピタリと止まった。いや、止められた。いつのまにか目の前には中年の男が立ってシシカバの剣を二本の指で止めていたからだ。
「君が転生者の・・・斉藤君かい?」
「えっ・・・?」
 シシカバは背筋が凍りついた。シシカバの前世、日本にいた頃の名前を呼ばれたからだ。
 シシカバは後方へ後ずさりし、中年の男に問いかける。
「おれはシシカバだ!お前が魔族の親玉か!?」
「親玉じゃないよ。僕はこの二人の子供の先輩であって僕たち侵略団の幹部にあたる、アルフレッドだ。」
「侵略だと?」
「君にこれ以上答えるつもりは無い。さぁ、死んでもらうよ。」
「待ったぁっ!!」
 アルフレッドとシシカバの会話を止める声が兵士の中から聞こえた。アルフレッドが目をやるとそこには威厳のある騎士が立っていた。
「シシカバ殿!其方は先程の戦闘で体力が落ちている!ここは我に任せて体力を回復するがいい!!」
「アンタは一体?!」
 シシカバは騎士に問いかけるが、その出で立ちを見て誰なのかを理解した。
「アンタが噂に名高い 豪傑の騎士、バーグか。聞いたことがある、どれだけの負傷を負っても倒れることなく、その力技で王都を勝利へと導く大英雄。」
「アンタレス王の命令でな。未来の英雄を助太刀しろとな。相手も先輩さんが出てきたんだ。こちらも先輩が出よう。」
「・・・すまん。」
 シシカバは騎士 バーグの言葉に胸を借り後退した。
 バーグは睨む目つきでアルフレッドを見る。
「貴様!アルフレッドとか言ったな!我と一騎打ちといこうじゃないか!!」
 アルフレッドは嫌な笑みを浮かべて言った。
「悪くないね。じゃぁ、お互い降参するか死ぬまで闘うってルールにしようじゃないか。」
「いいだろう。」
 アルフレッドと騎士 バーグは早速対峙した。お互い歩みを進め、5メートル付近まで近づく。
 アルフレッドはバーグに近づく中、兵士達の声に耳を傾ける。
「あの大英雄、バーグさんが出てきたか。」
「魔族の幹部か知らんがバーグさんに勝てるわけなかろう。」
「未来の英雄に大英雄か。今日、この戦いが終わったら今日は祝日になるな」
 アルフレッドは笑い声を上げないよう堪えた。随分高いハードルを持っているね、と
 「どうした?何をニヤケている!」
「いやぁ、君ほどの騎士が相手になると少しばかり、楽しみでね。」
「ふん!言ってくれるわ!」
 そう言うと騎士 バーグは両手を広げ、大きく構えた。
「ならば先手を貴様に譲ろう。好きに打ち込むがいい。」
「はははっ!なかなか気前がいいね!ならば遠慮なく行かせてもらうよ!」
 アルフレッドは渾身の力を込めてバーグの腹部へ拳を入れた。バーグは全身を鉄の鎧で覆っているために、ビクともしなかった。
「恐るるに足らず!ふはははっ!!」
「ふふふ。楽しくなってきたね。」
「今度はこちらから行くぞ!!」
 バーグはアルフレッド目掛け、剣を大きく振った。
 アルフレッドは後方へ飛ぶが、バーグの剣のスピードに追いつけず、かすり傷を負う。
「あらら。」
「どんどん行くぞっ!!」
 アルフレッドと騎士 バーグは激しい打ち合いになった。
 それを固唾を呑んで見守るヤマトはミレーナに文句を言い出す。
「ミレーナちゃんの嘘つきめ!」
「はい?」
「侵略における脅威は無いって言ってたのにあの騎士、強いじゃんか。」
「えっ?強いです?あれ。」
「強いだろ。シシカバよりも強いぜあいつ。闘った俺にはわかる。」
「・・・お兄ちゃんが弱いだけですよ。」
「言うじゃないか妹よ。全身傷だらけじゃなかったら今ごろミレーナちゃんは俺にワーキャーされてる所だぞ?」
「それは・・・むしろ気になりますね。ワーキャーって何ですか?エロですか?拷問ですか?」
「ふっふっふ!楽しみにしているがいいさ。」
「はいはい。わー楽しみだなー」
 
 ヤマトとミレーナは、アルフレッドとバーグの一騎打ちをそっちのけで、余裕をかましていた。
 その時
 アルフレッドはバーグの一撃で壁へ打ち付けられた。その衝撃で壁はみるみる崩れ落ちる。
 兵士達はその一撃を観ては歓喜の声を上げる。
「すげぇ!やっぱすげぇよバーグさんは!」
「惚れ直したぜ!バーグ!!」
「トドメ刺しちゃえーっ!!」
 闘いは完全にバーグよりだ。観戦している兵士達は更なる盛り上がりをみせる。
 そしてアルフレッドは崩れる瓦礫の中、笑う。周囲に見られぬ様、不気味に笑う。
ーそろそろ頃合い、かな。みんなは一体どういう表情に変わるかなぁ。
「トドメだ!アルフレッド!!」
 バーグはトドメを刺す為にアルフレッドへ斬りかかる。
 斬りかかったはずなのだが
「っ?!ゴハァッ!!」
 アルフレッドの腕はバーグの鎧を貫通して腹部に入っていた。腕からは血が滴る。
 アルフレッドは口を横に大きく広げてバーグへ告げる。
「君はただの余興だ。存分に喚いてくれよ?」
「な・・・にをっ!!」
 バーグは持ち堪え、反撃の構えを取る
のだが
無限の憶測、発動
「さぁ騎士 バーグが一番痛がる部位はどこかなぁ?」
 アルフレッドは見る
「ここだね!」
「がっ?あぁあぁああぁっ!」
 バーグの自慢の右腕が肘まで割れる。アルフレッドはどこからか短いナイフを取り出し、そのナイフで切っていたようだ。
「これがまた痛いんだよね?」
 アルフレッドはバーグの割れた右腕を両手で持ち左右へ広げる。肉が肩まで避ける感触をアルフレッドは堪能した。
「ひぎぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
「あはははっ!いい喚きだよ!次行こうか!安心しなよ!君があと10分生きれるように 解体 するからさぁっ!?」
 バーグは激痛の中、戦慄した。こいつはイかれたやばい奴だ、すぐにでも降参した方がいいと
「まっ待て!!こうさ・・・んぐっ?!」
 アルフレッドはバーグの喉を掴み、声を出させなくさせる。バーグから見た、目の前の男は人間の域を超えた表情を浮かべている。
 アルフレッドは見る
「ふふっ所で今日は何か食べたかい?」
 アルフレッドの右手がバーグの腹部のキズにゆっくり、ゆっくりと近づく。
「ーーーーーーっ?!!!!」
 バーグはアルフレッドの右手が何をするのか認められないが確実に解ってしまった。何かの夢であってくれと神にすら願った。必死に抵抗を試みるのだがアルフレッドは先ほどとはうってかわって微動だにしない。蹴っても殴っても石柱のように動かない。
「ンンンンんんんんんっ!!!!!!」
 グチュッという音を立ててアルフレッドの右手がバーグの腹部へと侵入した。バーグは体が危険信号をビンビンに出しているのがよくわかる。指が中で動くたびに全身がビクビク動く。口からはとにかく血反吐が止まらない。激痛でどうかしてしまいそうだ。脂汗はどれほどの量を出したのか見当がつかない。
「ッッッッッッッ!!!?」
 そしてバーグは1つの誤算に気づいた。アルフレッドの腕は体内の下へ動いたのだ。
 
ーこいつ・・・嘘だろ・・・嘘だろ・・・!?
 バーグの腹部から 長い管 がニュルっと出てくる。アルフレッドはそれをゆっくりと引っ張り出している。千切れないように優しく引っ張り出す。
 アルフレッドは憶測をやめる。
「ふふっやっぱりまだまだ温かいね。こんなに出してしまってはもう君の体に戻すことは出来ないなぁ。」
 バーグはもはや全てが限界だった。精神的にも、体力的にも今際の死がチラつく。
 そしてバーグは周囲の兵士達に助けを乞う眼差しを送るが
 兵士達はそのあまりにも悲惨な現実を直視して、恐怖と絶望に囚われてまったく動けずにいる。
「いやぁ、なかなか良い表情だね、バーグ。僕は君の中途半端な強さのせいで死ねないことを、ひどく哀れに思う。」
「だから、最期は君自身で最期を迎えさせてあげようじゃないか。」
 アルフレッドは 長い管 を手に取りバーグの口に無理矢理押し込んだ。悪魔のような笑みを浮かべながら。
「さぁ、噛みちぎるんだ。」
「・・・た・・たすけ・・・」
 アルフレッドはなかなか噛みちぎらないバーグを見兼ねて彼の金的に思い切り膝を蹴り上げた。
 その痛みには無意識に歯を食いしばってしまうだろう。ブチっと 長い管 は噛みちぎられ、バーグはようやく生き絶えることができた。
 バーグの遺体を踏みにじり、アルフレッドは何かを成し遂げたように天を仰ぎ、そして転生者 シシカバを見る。
「休憩は終わりだ。次は君がこうなるんだよ?いや、これ以上かなぁ。ふふっ」
 「楽しみだなぁ」
 
 
 
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