ママは乙女!

オンスタイン

9話 人間らしい最後

天命本部から帰ると艦長が玄関で待っていた
「おかえりテレサちゃん、忘れ物は大丈夫だった?」
艦長は心配そうな顔をしていた
「…ええ、急に留守番を任せて悪かったわねシトラは?」
「帰ってきて疲れてるのか今は寝てるよ」
「…そう」
なんて言えばいいのか分からなかった
「ちょっと見てくるわ…」
そう言ってテレサはシトラが寝ている寝室へと向かった
寝室に入るとシトラは息をたてて寝ていた
(まだこんなに小さいのに…)
いつかこの時が来るのはなんとなく分かっていた戦乙女である以上、寿命が短いのは仕方の無いことだから…
それでも、艦長とシトラこの2人を残して死ぬのは本当に嫌だった、ましてやシトラはまだ6歳なのだから…
「今は何も考えたくないわ…」
テレサはシトラの横に寝転んだ
(この子と寝るのもあと2回くらいね…)
考えたくもないのに…勝手に意識してしまう
とにかく今は寝て落ち着くことにした

(テレサちゃん明らかに様子がおかしい…)
放っておけなくなり艦長はテレサを追うように寝室へと向かった
「ね、寝てる…!?」
シトラを見に行くと言ったテレサがそのままシトラの横でぐっすり寝ていたのでビックリした
(なにがあったのかねー)
起こさないようにそっとテレサに近づく
(そういえば…怪我してたんだっけ?)
昼方、テレサが怪我をしたと言っていたのを思い出した
(あの時、なんで腕を見せなかったんだ…?)
おそらく腕になにかしらあるのだと思いそっとテレサの腕を捲った
「これは…!?」
テレサの腕にあるアザには見覚えがあった
「う、嘘だろ…」
思わず動揺を隠せなかった
なぜならこのアザが意味することを艦長は知っていたから…
(まさか、これの事で様子がおかしかったのか…!?)
「ん、うーん…あなた?」
どうやらテレサを起こしてしまった
「どうしたの?そんな見つめて」
ここはなんとか平然を装うしかない…
「い、いやーテレサちゃんがシトラちゃんを見に行ったまま戻ってこないから気になってねー」
「まだ寝足りなかったのよ…」
(朝、結構寝てたと思うけど…)
「ありゃもう3時だし夕飯の買い出し行ってこないとねテレサちゃんはお疲れみたいだし休んでていいよー」
「ええ、そうさせてもらうわー」
さっきに比べていつも通りのテレサに戻ってきていた
「んじゃ行ってきま~す」
そう言って艦長は部屋を後にしようとした

「ケホッ!ケホッ!」

「テレサちゃん!!」
嫌な予感がした…
「な、なによもう…ただちょっとむせただけよまったく心配性なんだから…」
テレサは平気そうな顔をしていたがきっと無理しているだけだろう…
だが、今は駄目だ…娘の前で話なんて出来ない…
「ご、ごめんね買い物行ってくるね〜」
艦長はそう言って部屋を後にした
「結局、気づかれたわね…」
艦長の反応を見たテレサはそう悟った
(それにしても…おじい様、嘘つきね…)

「これじゃあもう今日が限界じゃない…」

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