小説家を夢見て30年、未だにデビューできません!

ムラサメ!

まえがき

 君達は夢を見たことがあるだろうか?

 夢と言っても毎晩寝るときに見るやつじゃない。将来こんな仕事がしたいとか、結婚したいとか、子どもは何人欲しいとか、そんな意味での夢だ。君達も幼稚園児だった頃や小中学生だった頃には色々な夢を見ただろう。しかし、大人になった人なら判ると思うが、子ども時代の夢をそのまま追い求めて更にそれを実現できる人は数少ない。結果的にそれとは異なった将来を歩む人が殆どだ。医者になりたいと志しても実際に医者の国家試験に受かる人はごく僅かだし、仮面ライダーになりたいと思って将来本当に仮面ライダーになれる人が一体何人いるだろうか。

 ここまで読んだ読者達には、僕が頭の硬い現実主義者であるかの様に思えるだろうが、何も僕は子どもたちに夢を見るなと言いたいわけではない。寧ろ夢を見ることは想像力を養うためにはとても素晴らしい営みだと思っているし、子どもの頃に見た夢を本当に実現してのける人もいるかもしれない。しかし、夢を見過ぎるのは禁物だ。プロゲーマーを志して一生ヒキニート生活なんて事も考えられるし、ミュージシャンを目指して50半ばまでずっとフリーターでは目も当てられない(当人がそれを幸せと思っているならその限りではないが)。夢を見過ぎるがばかりにまともな生活が送れない様では元も子もない。
畢竟、何かを志すにしても何処かで見切りを付けないと大変なことになるのだ。

 さてこの物語は、小説家を夢見る一人の男の物語である。この男は小学生時代から小説家を志し、以来30年ずっと売れずにくすぶっている。彼が一体どう変わっていくのか、それを見ていこう。

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