冬の稲妻
012★幼馴染みがいなかったら………
カミナリの事も、秀人の事も、忘れて当時の事柄に浸り始めた雅美の心を、呼び戻す為に秀人は質問する。
「で、そのヒロシって
お前の幼馴染みか何か?」
秀人の問い掛けに、そこに含まれる微妙な意味と響きが含まれていることに気付かなかった雅美は、嬉しそうにヒロシの事を言う。
「うん、とっても優しいの
あん時、ヒロシちゃん
危なかったんだぁ………
僕、助けようなんて
むちゃするから
僕の代わりに
大怪我するとこだったの
実際は、ちょっち
火傷しただけで
すんだけどね………」
「そうか」
秀人は、雅美が誇らしげに話す、ヒロシという名の幼馴染みにむっとしていたので、ついつい投げやりに相槌を打つ。
雅美が嬉しそうに口にする、幼馴染のヒロシという存在に、秀人は、内心でムッとしてしまう。
お陰で、そっけない相槌になってしまったが、雅美は、そんな秀人の変化に気付かず話し続ける。
「ヒロシちゃん
いなかったら
僕、死んでたから………」
秀人の頭の中で、雅美の『僕、死んでた』と言う、重い言葉がこだまのように響く。
その瞬間、ムッとしたことを忘れ、秀人は雅美をギュッと抱き締める。
「そうか」
そいつに感謝だな。
秀人は、優しい口調で応えながら、改めてそう思い直した。
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