冬の稲妻
007★雷鳴でパニック
雅美は秀人の言葉に、ただ『うん、うん』と言いながら頷くだけであった。
雅美、可愛いなぁ。
こんなもんが苦手なのか?
綺麗なのになぁ…………。
窓辺の向こうで暗黒の海に斜めに走る光の矢をチラリと見てから、クスッと静かに微笑う。
秀人は、震える雅美を自分の腕に抱き込む。
「ほら、雅美」
「秀人君、ありがと……
くっすん………キャッ………」
秀人の腕に抱かれて安心した雅美は、ついしがみついている指に力を入れてしまう。
「雅美、爪を立てるな」
さほど痛いとは感じなかったが、秀人は雅美の注意を自分に向ける為に文句を言う。
「……あ…ごめんね
痛い? 痛い?」
雅美は、秀人に言われて指先から力を抜く。
が、秀人の腕からほんの少し血が流れているのを見て、つい子猫のように傷口を嘗めている。
それを見て秀人は呆れてしまい、雅美に言葉もかけずに抱き上げた。
駄目だ、こいつ、カミナリ怖さで、完璧に判断力が消えている。
お前、判断力、どこにおいて来た。
…………っと、言っても無駄だな……これじゃあ…はぁー……。
 カミナリの音でパニックを起こしている雅美は、秀人に抱き上げられた事に気付かなかった。
ただ、無意識の反応として、しつこく自分が付けた小さな傷口を嘗めて、秀人に問い掛ける。
「痛い?」
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