冬の稲妻

ブラックベリィ

005★聞こえて来たのは…………



 シトシト、シトシトという独特の雨音が、シーンとした暗闇に響く。
 その雨の音の中に、ほんの微かだが、ゴォーという音が混ざり始める。
 雅美は、それにしっかり気付いてしまい、ゴックンとのどを鳴らして震える。

 「まさかねぇー…………」

 その雅美の予想に違わず、しだいに、ゴォーという風音の中に、独特な下腹に響くような、ゴロゴロという音が響き始める。

 「まさか…まさか…まさか……大丈夫だよねぇ……」

 自分を励ますように、雅美が呟いた瞬間、ピカッと稲妻が青黒い空間を斜めに走る。

 「…キャー……」

 雅美は光った瞬間、小さく叫んで、まくらをギュッと抱き締めた。

 「こわいよ……怖いよぉ……
  こわいよぉ…こわいよぉ………

  ……でも……秀人君に
  馬鹿にされちゃうから………

  叫べないよぉ……」

 鈍い色の天空から稲妻がまた斜めに走り、どこかに落ちたのか、ドォーンという音が響き渡る。

 「キャイィーン……」

 部屋の中に、子犬の悲鳴のようなモノが響き渡る。
 そう、雅美の悲鳴が…………。

 響く雷鳴に、雅美は涙を瞳に溜めて、むっくりとソファーから起き上がる。

 「……もう……だめ…だ…
  たえられない…………」


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