私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

093★髪を結い上げるの意味を知りました


 エリカが、騎士服から女の子らしい服に着替えたいと思っても叶わなかった頃。
 ランスロットの案内で、西の妃キャロライン一行とすれ違うことも無く、聖女候補の少女達は、魔法騎士団の内部に目を見張りながら、団長室にたどり着くのだった。
 扉の前で、ランスロットは、アルファードに入室許可を求める。

 「ランスロットです
  ご命令通り聖女候補達を連れてまいりました」

 「入りなさい」

 アルファードの目配せを受けて入室を許可したのは、マクルーファだった。
 それに従って、団長付きの侍従が扉を一枚音も無く開ける。 
 入室の許可を受けたランスロットは、その扉を潜り少女達を案内する。

 その後ろから、警護を任されたレオンとマルコが付いていた。
 それにデュランが、新しいお茶とお菓子と軽食のセットをワゴンにのせて持って来た。

 一日に何度も食事を取らなければならないアルファードの為に、お茶やお菓子の他に軽食を持って来たらしい。
 ランスロットは、円卓に座っているアルファードとエリカに騎士の礼をとる。
 
 「聖女候補の方々です」

 円卓の前に勢揃いした聖女候補6名に、アルファードは立ち上がって言う。

 「私が、この魔法騎士団の団長アルファード・ファイエス・ドラゴニアだ
  君達が会った副団長マクルーファ、それに、もう1人の副団長オスカーだ
  赤い髪の双子のような2人が、私の弟達だ」

 アルファードの紹介にあわせて、マクルーファとオスカーは騎士の礼をとってみせた。
 ギデオンとレギオンは、にっこり笑って順番に自己紹介をした。

 「私は、ギデオン・マルス・ドラゴニア、兄上の副官をしている」

 「私は、レギオン・アルス・ドラゴニア、同じく兄上の副官をしている」

 ギデオン達の挨拶が終わると、エリカは立ち上がり挨拶?をする。

 「こんにちは、私は、柳沢恵里花、桜花学園高校1年でした
  今は、魔法騎士団に所属しています、よろしく」

 エリカの自己紹介?に他の聖女候補達も続く。

 「こんにちは、私は、神埼牡丹、梨花学園高校1年でした
  帝都騎士団に所属しています?」

 「こんにちは、私は、椎名撫子、百合学園高校1年でした
  中央騎士団に所属しています?」

 「こんにちは、私は、相沢百合、白菊学園高校1年でした
  東域騎士団に所属しています?」

 「こんにちわ、私は、田中蘭、藤学園高校1年でした
  西域騎士団に所属しています?」
 
 「こんにちわ、私は、南条鈴蘭、竜胆学園高校1年でした
  南域騎士団に所属しています?」

 「こんにちわ、私は、畑中桔梗、白梅学園高校1年でした
  北域騎士団に所属しています?」

 全員、エリカのマネをしていた。
 聖女候補が全員名乗りを挙げたので、アルファードは話しかけた。

 「エリカ、座りなさい、皆さんも座って下さい」

 アルファードは、エリカを座らせると自分も座った。
 ソレを見た聖女候補達も、おとなしく座ったのだった。

 なお、オスカーやマクルーファ、ギデオンやレギオンもアルファードとエリカが座ると座った。

 エリカは、内心でかなりドキドキしながら、聖女候補を観察していた。
 そして、全員が足首までのワンピースを着ており、髪を垂らしているのを見た。
 
 〔あれぇ? どうして? 全員が髪の毛を真っ直ぐに垂らしているのかな?
  確か《召喚》される直前のエレベーターホールでは………
 
  お団子にしたり、ポニーテールにしたりってバリエーションがあったのに?
  もしかして……何か意味があるのかな?〕

 エリカは疑問に思ったことを、つい聞いてしまうことにした。
 
 「ちょっと聞いてもイイかな?」

 エリカの問い掛けに、牡丹がにっこり笑って問い返す。

 「いいけど…なにが聞きたいの?」

 牡丹の答えにほっとしたエリカは、聞きたかった内容を口にする。 

 「みんな、何で同じ髪型なの?」

 エリカの質問に、オスカー達は顔を見合わせて苦笑する。
 アルファードは、天井に視線を向けて溜め息をひとつ吐き出す。

 〔あはは…まず、それかぁ…あうぅぅ~…
  絶対に、エリカに怒られるよなぁ……何の説明もしないで……

  髪を洗ったり結い上げたりしたからなぁ………
  でも、怒られたって止めないけど〕

 エリカは、アルファードやオスカー達の微妙な態度に首を傾げる。
 その表情を見て、聖女候補の少女達は、エリカが髪を結い上げる意味を知らないと判ってしまう。
 が、説明はしておいた方が良いと思いさらりと言う。

 「あのね、髪を邪魔だからって、ポニーテールにしていたら
  騎士様に注意されたのよ、こんな感じにね………」

 ここからは、回想にはいります。

 『姫、その髪は……誰に結ってもらったんですか?』

 『私が、自分で結ったの』

 『姫は、異世界から来たんですよね
  ここの常識では、未婚の女性は髪を結いません』

 『えっ…未婚と既婚の区別をつける為に髪を結わないの?』

 『いいえ、女性の髪を結い上げるのは、夫の役目なんです』

 『そうなの?』

 『ですから、聖女候補である姫は、夫が居ない状態です
  だから、髪を結い上げてはいけません

  髪を結い上げていれば、夫がいると思われてしまいます

  そして、これが重要なのですが………
  夫がいる者は、聖女になれませんので……』

 と、演劇部員よろしく、1人芝居のような感じで教えてくれたのだった。

 「と、まあ…こんな感じに説明されたの………他の人達は?」

 「あっ私も言われた………髪は、夫に結い上げてもらうものだって……」

 「「「「うん」」」」

 「それって…?…」

 「ドラゴニア帝国では、恋人か婚約者か夫がいる人だけが
  髪を結い上げるんだって……」

 こうして、アルファードの悪さは、白日の下に晒され、真っ赤になったエリカからビンタを貰ったのであった。
 が、開き直ったアルファードに、止めない宣言をされたのも確かな事実だった。
 その様子を、ニャンコの瞳で見ていた6人の聖女候補達であった。





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