私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

090★お茶会のお誘いを断るのは大変そうです

 入室の許可を貰ったマクルーファは、側近達と入って来た。
 そして、アルファードと西の妃達に向けて騎士の礼をとってから言う。

 「姫君に会いたいと聖女候補の少女達6名がこちらに参りました

  聖女候補の世話をしているはずの者達とは、別行動を取っていますので
  役目放棄とみなし、魔法騎士団本部のこの建物への入場を制限しました

  団長より、後ほどキツイお言葉が必要かと思いました
  聖女候補の少女達には、現在団長と姫君には来客中だと告げて
  一応、来客用の別部屋に通しております」

 マクルーファの報告を聞いたアルファードは、その報告に頷き、腕の中のエリカに問い掛ける。

 「そうか、エリカ、会いたいか?」

 アルファードの言葉に、エリカは反射的な答えてしまう。

 「会いたいわ」

 〔だって、見知らない異世界にたった7人の同郷の人達だもん
  それに《召喚》された時にチラッと見たあの姿からすると………
  たぶん同じくらいの歳だと思うし……〕

 エリカの言葉に、西の妃であるキャロラインが便乗して言う。

 「アルファード、私も会いたい」

 そのキャロラインのわくわくという表情に、アルファードは溜め息を零しながら冷たく言い放つ。

 「《召喚》された聖女候補達はエリカに会いに来たんです
  母上は、さっさと帰って下さい」

 にべも無いアルファードの言葉にも、キャロラインは食い下がる。

 「だって、会ってみたいわ」

 自分の言葉を聞く気の無いキャロラインに、アルファードは最強カードを切る。

 「オスカー」

 そう、副団長のオスカーへと視線を向けて、何とかしろと………。
 母親を説得する気が無いアルファードは、だからオスカーにポイッと投げたのだ。
 その態度に苦笑してから、オスカーは西の妃キャロラインに話し掛ける。

 「今回は、お諦め下さい
  皇妃殿、ましてや、皇帝陛下が聖女候補とまだ会っていないのです

  ここで余分な波風は立てない方が得策かと思いますが?
  それとも、皇妃殿にネチネチされる原因をワザと作りますか?」

 【まぁ…それはそれで、あのシオババア皇妃が百面相をしてくれて
  面白いことになりそうですが……
  絡まれたら面倒だと思いますがね、特に、これ幸いと陛下に絡みますよ】

 オスカーの辛辣な言い方に、西の妃キャロラインは苦笑する。
 いや、その副音声の声のセイもあるのだが………。

 〔やぁ~ねぇ~…アルファードってば彼に私の対処を振るなんて……… 
  オスカーは、夭折なさった、お義父様の親友だもの
  陛下だって言い負かされてしまうのに、彼に振るなんてズルイわ

  うん…もう……ここは諦めるしかないわね
  それに、確かにオスカーの言葉は確かよね

  また、あの我が儘な皇妃シオババアが無用に騒いで
  陛下に迷惑をかけられるなんてゴメンよ

  ほんの少しで良いから、陛下の心労は減らして差し上げたいもの………

  私の我が儘が、陛下の安寧を妨げるなんて許されない
  いいえ、自分が許せないもの

  他の聖女候補の少女達には興味あるけど、ここは引くしかないわね
  ……はぁ~……残念だこと〕

 僅かな間に、色々と思考をめぐらせたキャロラインは、肩を竦める。

 「わかったわ…今回は諦めます、1番大切なエリカ姫とは会えたもの
  それに、アノ子の婚姻の話しも出来たしね

  アルファード、後ほどエリカ姫を連れて、私の離宮に遊びに来て欲しいわ
  美味しいお茶を用意して待っているわよ」

 もののついでを装い、エリカを見せびらかそうと企んだと瞬時に判断したアルファードは、にべも無くぶった切るように言う。

 「そんなひまは無い」

 冷徹な対応にも、慣れているキャロラインは、それでも言い募る。

 「無かったら、作ってちょうだい、なんならエリカ姫だけでも良いわ
  私の守護騎士に、オスカーの兄達やギデオンやレギオンの従兄弟とか
  貴方も安心できる者達をそろえているのよ、勿論、侍女もね」

 こんなにしっかりした防護体制は無いでしょうと言外に言うキャロラインに、アルファードは溜め息を吐く。

 「確かに、信頼できる者達が母上の守護騎士に成っているのは確認できた
  だが、エリカは《召喚》されたばかりだ
  離宮に行って気疲れするのは可哀想だ

  全ての聖女候補と同じように、ゆっくりとこの世界の常識などに触れて
  覚える必要があるんだ

  だから、当分は母上のお茶会に行けない」

 アルファードとしては、キャロラインが娘の教育を妹に丸投げして失敗したので、エリカを娘として可愛がりたいという気持ちは理解出来るのだが、目立つ行動には危険が付きまとうので、平気で断る。
 が、そんなことで引き下がるほどキャロラインも甘くは無い。
 あの問題だらけの後宮で、調整役をしているのだ。

 「アルファード、貴方の恋人……
  いいえ、婚約者なのよエリカ姫は私の娘になるのよ
  母親の元に遊びに行くんだったら、マナーなんて関係ないでしょう

  それに私の離宮なら、私が主だから安全よ
  異世界から来たんですもの、マナーや常識が違うのは当たり前よ

  私だって、そのぐらいは判っています
  だから、エリカ姫、私の離宮に気兼ねなく遊びにいらっしゃいな」





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