私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

089★オスカーが居ない場所では、マクルーファも意地悪になるんです

 マクルーファは、言うべきセリフを考えてから、少し離れた場所で自分達を見ている聖女候補を確認し、そのまま直ぐ近くまで近寄って言う。

 「始めまして、聖女候補の皆さん
  私は、魔法騎士団の副団長を務めますマクルーファと申します

  警護の騎士達の不手際でお待たせしてすみません
  なにぶん魔法騎士団ゆえ、男所帯なので女性への対応に不慣れで………

  現在、高貴な方がいらしているので、上司の指示がないと動けないのですよ

  団長がお連れになった聖女候補の姫君は残念ながら、今、来客中なんです
  お客様は、西の妃様なので………

  その為、私がこれから案内する部屋で西の妃様が、ご自分の離宮に帰るまで
  待っていて下さいますか?」

 マクルーファの申し出に、聖女候補の少女達はにっこり笑う。
 そして、各々思ったコトを口にするのだった。 

 「来客中なら、待ってればイイよね」

 「うん、ちょっと待ってれば良いんでしょ?」

 「面会の順番が来るまで待ってる」

 「これで、彼女に会えるのね」

 少女達は、自分の思いをそれぞれ口にする。
 それから、はっとした顔になる。
 マクルーファと名乗った魔法騎士団の副団長に、お礼を言っていなかったことに気が付いたから…………。
 そして、慌ててお礼を言い、いっせいに頭を下げる少女達だった。

 「「「「「「マクルーファさんありがとうございます」」」」」」

 少女達のお礼の言葉に、マクルーファはちょっと苦笑する。

 〔見た感じとしては、とんでもないハズレはいなさそうですが……
  さてさて………これは、オスカーと相談せねば……〕
 
 「いいえ、どういたしまして……では、行きましょうか?」

 内心を綺麗に隠したマクルーファの言葉に、少女達はいっせいに答える。

 「「「「「「はい」」」」」」

 聖女候補達が可愛い返事をしたのを確認してから、マクルーファはクスッと笑ってから、扉前の護衛役の者達に言う。

 「聖女候補達の所属する騎士団や魔法師団達などが来ても、通す必要はない
  幾ら王城内とは言え、無責任すぎるからな
  団長からの、きっつーいお小言が必要だろう」

 そう言い終わったマクルーファは、聖女候補達に向かって、優しげに笑って言う。

 「おまたせしました………それでは、行きましょう」

 「「「「「「はい」」」」」」

 少女達は可愛らしいハモった返事をし、たたっと二列になって、マクルーファの後を付いて歩き出す。
 その姿はカルガモの親子の行進のように見えた。
 勿論、親はマクルーファで、少女達は子カルガモだった。

 それを見ていた警備をしていた騎士達は、笑いを堪えて黙っていた。
 魔法騎士団本部の扉を潜り、少女たちはマクルーファの後をひたすらついていった。

 その後を、マクルーファの側近達が付いて歩いていた。
 マクルーファは、予定していた部屋の前に立ち止まる。
 そして、少女達を振り返って言う。
 
 「この部屋でお待ち下さい」

 聖女候補の少女達は嬉しそうに笑って答える。

 「「「「「「はい」」」」」」

 何かといっせいに答える少女達に、マクルーファは微笑みながら、側近に命令する。

 「デュラン、お茶の用意を…」

 「はい」

 デュランは、室内に入ることなく、お茶の用意の為に食堂へと歩み去っていった。
 それを見送ったマクルーファは、側近に次の命令をする。
 
 「レオンとマルコは、聖女候補の皆さんの護衛に残って下さい」

 「「はい」」

 名前を呼ばれた二人は、了承の返事と同時に騎士の礼をとる。
 そして、扉を開けて、室内をざっと見渡してから入って行った。
 マクルーファに続いて、少女達は、室内に入って行く。
 そして、マクルーファは少女達に話し掛ける。

 「こちらに座ってお待ち下さい
  西の妃様が帰りましたら、ここにいるランスロットが迎えにまいります
  これでよろしいですか?」

 「「「「「「はい」」」」」」

 「では、私達は団長室に向かいます」

 少女達に笑顔を見せてから、マクルーファはランスロット達を連れて部屋から出て行った。
 それを見送った少女達は、迎えが来るまで取り留めの無い会話を続けるのだった。

 生温い視線を少女達に向けながら、レオンとマルコは、警護をするのだった。
 少女達を来客用の部屋に置いて来たマクルーファは、団長室の前で軽く深呼吸してから扉を軽く叩いて言う。
 
 「団長、マクルーファです…入室の許可を…………」

 「さっさと入れ」

 マクルーファのセリフを遮ってアルファードは入室の許可をだす。
 その様子を西の妃キャロラインは、くすくす笑って見ていた。
 エリカは、マクルーファがどんな用事があるんだろうと首を傾げていた。








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