私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

083★皇帝陛下の妃は、ちょっとズレているぐらいじゃないと勤まりません



 キャロラインの言葉に、副団長で事務的なことを任せている副団長のオスカーへと話しを振る。

 「オスカー?」

 アルファードの問いに、オスカーはスラスラとその答えを口にする。

 「我が魔法騎士団も古参の隊長2名と騎士達を派遣しております
  しかし、アルバード様もそちらに行っているとは聞いていませんでした」

 オスカーの口からも知らなかったという言葉を聞き、アルファードは苦虫を潰したような表情で言う。

 「ったく、あのシオババアの仕業か?」

 唸るように言うアルファードを振り返って、その表情を見たエリカは、思わず見とれてしまう。

 〔うわぁぁ~…こういう顔のアルもカッコイイわぁ~……
  って、でも…あれ? シオババアって誰なんだろう?
  後で、きちんと聞かないと………〕

 皇妃リリアーナが、岩塩をたてに皇妃の座に無理矢理収まっているので、その行為を嫌悪し、口の悪い者は、『シオババア』と言うのだ。
 が、この時点では、まだ、エリカはその意味などを知らなかったので、疑問符を浮かべつつも黙っていた。

 そんなアルファードを注意することもなく、オスカーは平然と答える。
 ちなみに、魔法騎士団の中では、団長のアルファードがことあるごとに、口にするセイで、皇妃は『シオババア』で通っていたりする。

 「可能性は否定しませんね」

 その言葉に、アルファードからオスカーへと視線を戻したエリカは、小首を傾げる。

 〔えーとぉー…シオババアって共通認識?
  いったい誰のことを言っているんだろう?

  話しの流れからいって……騎士達を個人的な感情で動かせるってことは
  ある程度の権力があるってことよね

  でも、どうやら、かなぁ~り嫌われているみたいね
  優しいアルやオスカーさんがそんな風にいうんだもの………

  エリカ、絶対に近付きたくないわ、絶対に、イジメられるもん〕

 アルファードは、自分達の会話を聞いたエリカが、そんなことを考えているなど気付くことは無かった。
 勿論、観察眼のあるオスカーもである。

 この時、アルファードとオスカーは、シオババアが仕組んだそこに、どんな作為があるか、どんな罠が張り巡らされているかを考え始めていたのだ。
 が、そんな魔法騎士団の団長アルファードと副団長オスカーに、キャロラインが笑って言う。

 「それは、大丈夫よ」

 「えっ…何が?」

 何が大丈夫なのか?と思い、疑問のままそう聞くアルファードに、キャロラインは爆弾をポンッと軽く投げる。

 「だって、東の妃のエスメラルダ様のアーカンディル様も……
  中央騎士団の魔物討伐で魔の森に行っているわ
  確か、中央騎士団だけで行っていたはずよ」

 その内容に、流石のアルファードも、ソレに気が付く。

 「それって…シオババアだけで出来るのか?…なぁ~オスカー?」

 キャロラインが今言ったの言葉の意味に、オスカーもすぐに気付く。
 そして、オスカーは確信めいた口調で言う。

 「たぶんに、陛下の意思が入っていますね」

 〔シオババアから…陛下の意思って何?
  何らかの意図があって、魔物討伐に複数の皇子が出されたってこと?

  うわぁ~…こんなことなら、過去の聖女様の話しよりも……
  帝国内の相関図的な話しを聞いておけば良かったかもぉ……はぁ~………

  全然理解わからないんですけど……今、聞ける状態じゃないし……
  これは、後でオスカーさんあたりに聞こうかな?〕

 混乱するエリカの意識をよそに、話しは淡々と進んで行く。
 そして、オスカーの答えに、アルファードが疑問を投げかける。

 「何故?」

 そんなアルファードに、オスカーがこの部屋に居ない誰かを思い浮かべて、嘲笑を滲ませた表情で、嗤って言う。

 「陛下にとって、大事な本当の皇太子と
  第2皇位継承権者と第3皇位継承権者を

  聖女候補の《召喚》時にその身の《魔力》を《呪陣》に
  吸われる危険を嫌ったというところでしょう

  陛下にとって、皇妃リリアーナの生んだ、色を持たない現皇太子や
  その他の皇子達は…所詮スペアにもならないというところでしょう」

 オスカーの答えを肯定するように、キャロラインは優雅に頷いて言う。

 「そうね、皇妃リリアーナ様も、東の妃エスメラルダ様も………
  何かというと直ぐに争うから、陛下も嫌気がさしていたわね

  それでも、アーカンディル様は地位に応じた《魔力》があるから
  皇子として扱うというところね

  ふふふ………でも、良かったわそれなら、魔物討伐に出された
  アルバードも、ちゃんと皇子として扱われているんですもの

  私の皇子は、陛下のお役に立つのね、頑張って産んだかいがあったわ」



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