私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

061★寵愛の聖女様がとてもうらやましいです


 さらりと言われたセリフに、エリカはびっくりしたような表情で聞く。

 「オスカーさん
  それって本当なんですか?」

 エリカが自分の言葉に疑問を持っていることに気付いたオスカーは、ちょっと苦笑いを浮かべて言う。

 「ええ、実は、過去の皇帝様は
  寵愛の聖女様を愛し過ぎて

  身の周りの世話をする侍女すら
  側に置きたがらなかったんですよ

  それからは、愛する女性の世話は
  夫がするモノみたいな感じに………

  そこから、ちょっと色々とありまして
  女性の世話は、男がするのが当然………

  というか、それが出来て当たり前
  出来なければ、半人前扱いなんですよ」

 オスカーの説明に、エリカは言葉を失う。

 「それって…………」

 困惑顔のエリカを見て、きっと過去の聖女様、特に寵愛の聖女様は、困っただろうなぁ…などと思いながら、オスカーは言葉を重ねる。

 〔ほんの子供の頃に、アレを読んだ時
  完璧に出来たほうが意中の女性ができたら
  絶対に手に入れられると思ったんですよねぇ…

  いや、実際の姫君方とか、ご令嬢達を見て
  幻滅してしまったんですけどねぇ………

  でも《召喚》された姫君をお世話できる
  スキルがあって良かったと思いますよ
  ええ…本当に……

  クスクス…当時の皇帝陛下の気持ちが
  理解わかる気がしますね………〕

 「クスッ…ドラゴニア帝国の皇帝なのに
  皇妃である、聖女様の肌や髪の手入れを
  自分の手でして………

  ドレスの着付けもするし、毎日一緒に入浴して
  髪を洗っていたと書かれていましたからねぇ~
  当時の記録には………」

 オスカーの言葉に、エリカはちょっと呆れ顔で言う。

 〔うわぁ~…どんだけベタボレなの?
  って、今のエリカもかなぁ~り、アルと
  オスカーさんにやってもらってるけど

  間違いなく、皇帝様のお世話って
  これ以上だよね
  スペックがとんでもなく高いってことよね〕

 「皇帝陛下って、政務で滅茶苦茶
  忙しいと思うんですが?」

  エリカのもっともなセリフに、オスカーはさらりと言う。
  そう、この後のエリカが気負わないように…………。

 「確かに、皇帝陛下は忙しいですけどねぇ……
  《召喚》された寵愛の聖女様も、同じように
  政務をおとりに成っていましたので……
  時間の余裕はあったようですよ」

 エリカは、その気遣いはわからないものの、過去の聖女の話しの中でもっとも1番出てくる寵愛の聖女についての情報に、食い付く。
 そう、エリカだって理解わかっているのだ。
 本来、聖女候補の自分には、まだ教えてもらえないはずの情報だと…………。

 「えっ寵愛の聖女様って
  政務もとれたんですか?」

 〔ふぇ~…寵愛の聖女様もスペック高いなぁ
  当時の皇帝陛下と同じように政務とれたんだ
  ……皇帝陛下、心強かったろうなぁ~………

  たぶん…いや、きっと…寵愛の聖女様ってば
  皇帝陛下と一緒にいる時間を増やす為に
  政務にも積極的だったんだろうなぁ………

  エリカも、少しで良いから
   アルを手伝えるくらいになりたいなぁ~〕

 自分の内心が、そっち恋愛に傾き始めている自覚のないエリカは、オスカーとアルファードを見てそんなコトを考える。

 そんなエリカの好奇心に満ちた表情に、オスカーは内心でクスリと笑う。

 〔姫君は、とても好奇心が強そうですねぇ~…
  できれば、アルファード様を意識して
  恋人関係…ひいては、生涯の伴侶に
  なってくれたらなんて思いますねぇ……〕

 「ええ、とても有能な方でしたから………」

 オスカーの説明に、エリカは素朴な疑問が思い浮かぶ。

 〔寵愛の聖女様って、皇帝陛下の間に
  何人ぐらい子供が居たのかなぁ?
  子育てしながら、政務とってたのかな?

  これって、答えてもらえるかなぁ?
  まだ、情報公開してもらえないかな?〕

 小首を傾げたエリカは、オスカーとアルファードを見てから、簡単に答えてくれそうなオスカーへと視線を向けて聞いて見る。

 「そのぉ…子供はどうだったんですか?」

 エリカが、過去の聖女、それも寵愛の聖女に並ならない興味を持ったことを嬉しく思いながら、オスカーはあっさりと答える。

 「寵愛の聖女様は、不思議なことに
  ドラゴニアンの特性を
  何故かお持ちだったらしくて……

  卵でポロポロと出産していましたので…
  困ってはいなかったようです

  また、卵から孵った皇子様や皇女様は
  会話で意思疎通が出来たと………
  それに、よちよちでも歩けたようです

  ですから、寵愛の聖女さまは子供達を見て
  子育ての1番大変な部分は省けたと
  笑っていらしたようですよ」

 〔えっ? ちょっと待って、たまご?
  って、卵ってことよね……

  それって、ドラゴニアンだから?
  いや、飛竜は卵か……じゃない

  コレは重要なファクターだわ
  きちんと聞いておかなきゃ……

  でも、卵で出産かぁ…確かに…
  卵で産むんだったら、楽そうよねぇ……

  エリカも、子供を卵で産めるなら………
  ポロポロと産んじゃうかも………

  ちっちゃいアルによく似た子なんて
  最高に可愛いかも………

  オスカーさんの子なら…たぶん……
  綺麗系な子かな?

  なんと言っても、エロフだもんね
  …それも…ハイエルフだから………

  じゃなくて、子供がいないのかな?
  適齢期ってモノがわからないけど……

  アルは、まだ結婚相手が居ないの判るけど
  オスカーさんは、そういう相手とか
  子供はいないのかな?
 
  あと、ユキヒョウの獣人のマクルーファさん
  …は…婚姻相手なんて、居ないわね……
  だって、エリカに尻尾掴まれたぐらいで

  『姫君…俺に…求婚してくれるんでね……』

  って、凄い勢いだったもん
  婚姻相手も子供もいないとみたわ

  はぁ~…でも…ユキヒョウの獣人かぁ~
  ちまちました子供なんて可愛いだろうなぁ~〕

 などと言う内心を綺麗に隠して、エリカは大げさにならないように、それでもびっくりしたという表情で言う。

 「ええ~卵で産んだんですか?
  ……とてもうらやましいです」






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