私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

055★中央騎士団の騎士達に、食べる資格はありません後編


 それでも、諦めきれない中央騎士団の騎士が、呟くように言う。

 「それ…間違っているから…絶対に」

 「それで?」

 チョコレート入りホットケーキをちゃっかり回収した神官達は、平気で開き直り、盗られた中央騎士団員の対決が終止符を…………。
 と、そこで、中央騎士団の騎士の1人がはたっと気付く。

 「ちょっと…待て」

 「なんですか?」

 「魔法騎士団の騎士達の分は?」

 「どういう意味ですか?」

 問われた意味がわからないと返す神官に、中央騎士団の騎士が言う。

 「だから、魔法騎士団の騎士達の
  チョコレート入りのホットケーキを
  盗ったのか?」

 「どうして、魔法騎士団の騎士達から
  盗らなきゃいけないんです
  彼等は食べる資格があるんですよ」

 「そうですよ
  オスカー副団長に、どんなことをされるか
  わからないじゃないですか?」

 「そこ、余計なコトは言わない」

 叱責の声が飛べば、オスカーの名を口にした者はピタッと口を閉じる。
 その代わりを、別の者が言い連ねる。

 「だいたいね、我が帝国一の《魔力》を持つ
  アルファード様を怒らすなんて
  そんな無謀するわけが無いでしょう」

 「ですよねぇ~…中央騎士団の団長って
  上級精霊魔法が使えるかな?程度の
  《魔力》量しかありませんしねぇ」

 「ですよねぇ~」

 「だいたい、団長に……
  皇族がなっていないのも……」

 「アレですよねぇ~」

 そんな不毛な会話を繰り広げる神官と魔法使いと、騎士達を見て、エリカは真剣に考え込む。
 そう、どうやってこの場を納めたら良いかと………。

 しばし考え込むと、エリカはにんまりと笑った。
 どうやら考えがまとまったらしいエリカだった。
 そして、エリカは、アルファード達に話し掛ける。

 「ちょっと作りたいモノがあるの?」

 「何を作るんだ?」

 「ホットチョコレート」

 「エリカ、それって……
  どんなモノなんだ?」

 「アル、カカオが欲しいんだけど………」

 「判った、今出すな」

 「アル、ありがとう
  これに…ミルクが大量に欲しいの」

 「ミルクだったら
  私も持っていますよ」

 「「「あっ俺も持ってるよ」」」

 エリカが欲しいと言ったので、オスカーもギデオンもレギオンもマクルーファも、ミルクを持っていると言った。
 その言葉にエリカは、嬉しそうに笑って答える。

 「ありがとう
  これに砂糖を足して
  ホットチョコレートを作るわ

  それで、これを入れるカップを
  用意して欲しいの」

 「わかった用意させよう」

 エリカが作るモノに好奇心いっぱいの彼等は、ワクワクして見ていた。
 それは、出来上がったら、カップで飲めると判っていたから…………。

 エリカは、受け取った材料に魔法をかける。
 ミルクを集めて水球のようなカタチにして、その中に砂糖とチョコレートを入れ丁寧に攪拌していく。

 勿論、ホットチョコレートを作る予定なので、魔法で温度を上げていく。
 攪拌が終わって充分かき混ぜたと思ったエリカは、ホットチョコレートをカップに魔法で注いで行く。

 それを、アルファード、オスカー、ギデオン、レギオン、マクルーファの順でホットチョコレート入りのカップを取っていく。

 次に、オスカーの側近達が……その次にマクルーファの側近達が……。
 魔法騎士団の階級に合わせて、カップを手に取って行く。

 それを見てからエリカは、下働きの人間達に、ホットチョコレートを中央騎士団の騎士達と神官達と魔法使い達に配るように指示する。

 下働きの者達は、素早く動きテーブルにカップを置いて行く。
 それに気が廻らずに、まだ、騎士達と神官達と魔法使い達は言い争いを続けていた。

 が、そこに、ホットチョコレートを飲み終えて機嫌の良いアルファードから声が掛かる。

 「もう、いい加減にしろ…リーガル副団長
  そのカップには、エリカが作った
  ホットチョコレートという飲み物が入っている

  そのまま飲むも良し………
  ホットケーキのプレーンに入れても良しだ

  ただし、プレーンに入れるときは
  ホットチョコレートの水分を魔法で調整しろ

  魔果の入ったホットケーキと同じような固さ?
  にしないと、きちんと焼けないからな

  それと、ワインの樽を幾つか置いておく
  酔って騒ぎたいなら、消音の《結界》を
  張ってから騒げな……俺達は寝るからな

  それと、神官達も魔法使い達も
  これ以上、エリカに心配させるな…イイな

  じゃないと…私としても………
  真面目に処理しなければならなくなる
  遺恨は残すな…わかったな?返事は?」

 「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」

 「ん、イイ返事だ
  食事が終わったら、後は好きにしろ」

 アルファード達は、既に食べ終わっていたので、エリカを連れて天幕へと去って行った。
 怖い上司達がいなくなったので、勿論、騎士達は、飲んでさわいでしまう。

 その面倒を見るコトになったのは、中央騎士団のリーガル副団長とその側近及び隊長達と、消音の《結界》を張ったり、騒いで怪我する者達の面倒をみる神官達と魔法使い達だった。

 なお、下働きの者達は、オスカーの許可により、さっさと寝たのだった。
 次の日に、後片付けをする体力を温存する為に。

 下働きの者達は、お好み焼きと焼肉は食べましたが、ホットケーキは食べていません。
 ここは、階級社会なので…………。

 その代わり、エリカが作った大き目のチョコチップクッキーを一枚づつもらいました。
 その他に、アルファードから、ワインを一杯づつ飲むようにと言われて、ホクホクしていました。

 下働き用の天幕に戻ると彼等は、こそこそとワインを飲み、チョコチップクッキーを食べました。
 こうして野営地の夜は終わりました。






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