私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

052★まずは、焼肉とお好み焼きを食べよう


 エリカのごはんを作るにあたっての人数確認に、オスカーは淡々と答える。

 「中央騎士団が、騎士250名
  それに下働き30名です

  魔法騎士団は私達を含めて
  騎士120名それに下働き20名です

  神官達は、アルベルト達を含めて54名
  魔法使い達は、オーギュストを含めて
  36名ですね」

 オスカーからの答えに、エリカは小首を傾げて聞く。

 〔ふわぁ~…結構、人数居そうだなぁ~とは
  思っていたけど…全部で510名かぁ~……

  規模を考えると、学校給食並みかな?
  残念、今回は、エリカの買った
  包丁さん達の出番はないですね

  ここは魔法を駆使して作った方が
  断然早いでしょう………

  じゃなくて、なんで神官と魔法使いには
  下働きが存在しないの?
  数え忘れ? とか………〕

 「神官様達と魔法使い様達に
  下働きはいないんですか?」

 不思議そうに言うエリカに、オスカーが少し苦笑いを浮かべながら言う。

 「神官達は、薬草などを使って
  薬を作るので、その一環として

  身体に良い料理(味は二の次)も
  作るから、あまり必要ないんです

  味はどうであれ、色々な食材を
  食べられるようにすることは出来ますから

  魔法使い達は、他者より《魔力》が多いから
  【魔倉庫】に色々な料理を入れています

  作れないなら、アイテムに色々と
  入れておけば良いという考え方ですね」

 そのオスカーの答えを聞いたエリカは微妙な表情にな。

 〔なんか…神官様達や魔法使いさん達って
  もしかして、凄く食生活が貧しいかも……

  討伐先まで、下働きを連れて来ていて
  自力救済もある程度は自分で出来る
  アル達よりも、かなり酷いかも………

  ここは、魔物討伐を頑張っているみんなに
  美味しい料理を食べさせてあげたい〕

 「そうですか…ガンバッて用意しますね
  食事は心身の基礎を守る
  大事な要素ですから

  …ということで…この鉄板の使用方法と
  それに付随する魔法についてなんですが……」

 エリカからの話しに耳を傾けたオスカーは、内容を聞き終えてから頷いて言う。

 「確かに、その魔法を使えば
  テーブルの上で調理が出来ますね」

 エリカは、アルファードが用意した薄く長い鉄板が、どのように使用されるかを説明されたオスカーが頷くのを確認してから言う。

 「設営よろしくお願いします」

 オスカーはエリカの言葉に、にっこりと笑って頷く。

 「任せて下さいね
  その代わり料理を期待しますね」

 エリカの作る料理に好奇心のあるオスカーは、にっこりと笑顔を見せてから、アルファードの様子をチラリと観察する。

 〔キメラやサラマンダーの討伐を
  1人でこなして来たわりに平気そうですね

  もしかして、姫君から何かもらったのかな?
  異世界から持ち込まれた食べ物は特殊です

  いったい、何を食べたんでしょうねぇ……
  もしかして、あのスライムもどきでしょうか
  怖いから聞きませんけどね〕

 「はい、楽しみにしていて下さいね」
 
 お互いにすることが決まったので、エリカとアルファード達は天幕に残り、オスカーは外に出て指示に向かう。

 なお、騎士達が貴族出身しかいないコトをオスカーに教えてもらったエリカは、アルファードに出してもらった材料を【風魔法=エアカッター】で切って用意することにした。

 そして、【水魔法=ウォーターボール】に小麦粉と膨らし粉と卵と山芋とを入れて、【水魔法=ウォーターシャフル】で混ぜる。
 そこへ、用意していた材料を入れて再度混ぜ合わせた。

 次に、魔肉を【風魔法=エアカッター】で薄く切っていく。
 これは、お好み焼きに入れる分と焼肉に使う分なので、かなり多めに作った。

 また、味替えを兼ねて、タレを甘辛醤油味、塩コショウ味、甘辛ショウガ味、味噌味、ソースベース、マヨネーズベース、トマトケチャップベース等、色々と用意した。

 勿論、それは、エリカの荷物から出した砂糖や蜂蜜、醤油、味噌など色々な調味料を使っ作ったモノだった。

 その他に、ホットケーキ用のネタもしっかりと作っていたエリカだった。
 魔果を入れたモノ、チョコレートを入れたモノ、プレーンなモノなどと色々とネタを作ったエリカだった。

 どのネタにもしっかりとバニラシードが使われていたので、辺り一面に甘い匂いが漂っていました。

 なお、砂糖や醤油などは、試しにと【無属性魔法=複写】を使って、大量に用意して使ったのでした。
 ちょっと頑張り過ぎて、少しクラッとしたことは、黙っていたエリカだった。

 こうして、エリカが材料を用意している間に、アルファードはせっせと【魔倉庫】から鉄板を出して、薄く延ばす作業をしていた。

 その頃、オスカーは討伐に来ていた者達へと次々と指示を出していた。

 そう、魔法騎士団と中央騎士団の騎士達と神官と魔法使い達が、いっせいに座れるように場所を作り、ベンチとテーブルのセットをしたのは、オスカー達だった。

 なお、鉄板をテーブルにセットする為に、ベンチを置く部分を【土魔法=クレイアップ】を使い、高さを調節していた。

 テーブルの上に鉄板をセット調理出来るように【火魔法=ヒートアップ】をかけ【無属性=発動停止】を更に掛けて用意した。

 次に鉄板の熱がテーブルに移らないように【水魔法=クール】を掛け、更に【無属性=発動停止】を掛けて用意した。

 野営地にいた者達で、見張りについている者達以外は、全員がテーブルについた。
 そこへ、アルファードが【魔倉庫】から出したワインを全員に渡した。

 魔物討伐の任務が終わると、アルファードは何時もワインを振舞っていたので、騎士達はすかさず飲み始める。
 ざわざわした雰囲気の中に、エリカとオスカー達が、お好み焼きと焼肉とホットケーキの材料を持って現われた。

 各テーブルに、材料を置いて行くと、ドロッとしたお好み焼きのネタとホットケーキのネタに首を傾げて見てしまう。
 その姿を笑って見ていたエリカは、どこぞの料理番組のような手順で調理を始めて見せた。

 エリカは、鉄板にかけられていた魔法を発動させ、テーブルにかけられていた魔法も発動させた。
 その結果、鉄板は熱くなり、油の匂いが漂い始める。

 そこへ、お好み焼きの材料をお玉ですくって、鉄板に拡げるようにして、焼き始める。
 さほど経たずに、油と焼け始めた山芋入りの小麦粉の匂いがふんわりと漂い始める。

 その美味しそうな匂いに、それを見ていた者達は、さっそくエリカをマネるのだった。
 その際に、お玉の底でクルクルと撫でるようにして、必ず生地を薄くするように説明したのは確かな事実だった。

 お好み焼きを焼き始めると次に、エリカは、薄く切った肉をハシでヒョイヒョイと鉄板の上に並べる。
 すると直ぐにお肉の焼けるイイ匂いがする。

 表裏を軽く焼くとエリカは用意したタレに、その肉を潜らせて、アルファードの口元に指し出す。
 お腹が空いていたアルファードは、その香ばしい匂いとエリカの手料理に誘われ、カパッと口を素直に開け、パクッと食べる。

 そう、バカップルのような、お口にアーンというアレをしたのだ。

 口に入った肉の味に、アルファードは満面の笑みを浮かべる。
 それはもう、蕩けるような表情で………。

 モグモグと肉を咀嚼するとアルファードは、にこにこ笑ったままで飲み込んだ。
 その間に、用意しておいたヘラもどきでお好み焼きをひっくり返しておいたエリカは、サクサクっと食べ易い大きさに切って、定番のソースとマヨネーズを塗る。

 瞳をキラキラさせているアルファードに、エリカは熱くないようにふーふーしてあげてから、その開かれた口へと運ぶ。

 言ってはなんだが、バガップルを通り越し、ツバクロ(ツバメの子)のような姿に、ちょっと頭痛を覚えたオスカーがいたのは内緒である。





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