私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

049★食材は意外と揃っているようです



 エリカが取り出したモノを見て、アルファードは不思議そうな表情で聞く。

 「これは?」

 アルファードの怪訝な様子に、エリカはクスッと笑って説明する。
 が、中身を器などに出して説明はしない。

 〔なんか、倒れた人達に食べさせようと
  器に出したら、嫌がっていたから………
  アルには、何時もの食べ方で説明しよう〕

 「うん、コレはね、お腹空いてるけど
  食事する時間が無い人用に
  開発された食べ物なの

  消化吸収が早いモノだから
  それに、見た目より食べた感じもあるしね

  とりあえず食べてね
  エリカの1番はこれだけど」

 触ったことの無い感触のモノを手渡され、アルファードは?を浮かべている。
 そして、見るからにコレって本当に食べ物なのか?どうすれば食べられる?という感じで、アルファードはエリカに聞く。

 「どうやって食べるんだ?」

 そんなアルファードに、エリカはチャージゼリーの食べ方の説明を丁寧にした。 
 ついでに、エリカもお腹が空いていたので、チャージゼリーを1個食べることにした。

 目の前で食べ方を説明し、そのまま食べて見せるエリカの姿を見て、アルファードも同じようにチャージゼリーを食べる。

 〔エリカが、手渡してくれたから
  食べてみたけど……甘くて美味しい

  それに、なにより食べ易い
  胃がギューギューになっていたのが
  とても楽になった

  出来れば、もうひとつ食べてみたいな~〕

 物足りなさそうにしていたアルファードに、エリカはちょっと考えてから別の味と栄養価のチャージゼリーを差し出した。
 それを受け取ったアルファードは、嬉しそうに笑った。
 よほど、口にあったらしい。

 それでも、一応食事前だからと、気を使ったエリカは、残りのチャージゼリーをスーツケースの中に仕舞うのだった。
 勿論、食べ終わったモノも、スーツケースの元あった場所に戻しておいたのは言うまでも無い。

 アルファードは、手のひらに収まるサイズのモノなのに、空腹感をかなり減らしてくれたチャージゼリーに感動していた。
 なぜなら、アルファードは空腹を我慢しすぎると、倒れたり魔力の暴走が有ったりと大変なので、食事を抜いたりすることを極力避けていた。

 いや、1回でも食事を抜くと、次に食事を取る時、普段の食事の倍は食べないといけなくなるから大変なのだ。

 食事の量を無理矢理増やすのは、結構、精神的(まだ、食べないといけないのかという苦悩)にも胃的(暴飲暴食に近いので)にも辛いというアルファードだった。
 それでも、必要量を採らないと魔力暴走などを起こすので、自分と周りの迷惑となるのを避ける為に、必死で食べていたのだ。

 今回は、エリカのチャージゼリーのお陰で、夕食をちょっと何時もより多めに食べれば良いと、経験(身体の訴え)から判ったアルファードは、内心でかなりほっとしていた。
 ここで、エリカは気付かないうちに、アルファードの胃袋をガッツリと握ったのだ。

 そんなエリカに、アルファードは、夕食に何を作ってくれるのか聞きたくてそわそわするが………。
 それでも、自分は大人なんだからと、まとわりついて聞くという行為を一生懸命に我慢していた。

 そう、一休みする時に兄扱いされたので、自分は大人な態度を取らなければと思っているアルファードを、エリカは同級生扱いしていた。
 そんなエリカは、バランスの良い食事をアルファードにたぁ~ぷりと食べさせたいと思っていた。

 〔う~ん、お肉も野菜も果物も炭水化物も
  しっかりと摂取とらせたい…というと

  何が良いかなぁ?

  全部一緒にっていうと、シチューかなぁ~……
  でも…食べなれているよね…たぶん…きっと

  あっそうだ…ここは、お好み焼きと焼肉と
  干し魔果入りホットケーキなんかイイよね

  みんなで、自分で焼いてねって………
  良し…そうしよう

  後は、魔肉を取った後の骨に
  野菜を入れたスープでイイかな?

  炭水化物が大目になるけど
  今日は、簡単メニューでいこう〕

 夕食のメニューが決まったエリカは、欲しい材料が有るかを確認する為に、空中に浮いたままだった水球で【魔倉庫】の中を改めて見た。

 すると、肉のこびり付いた骨や乾燥していない野菜や穀類が入っていたと思われる袋や、何かの調味料の瓶やお酒なども入っているのが見えた。
 そこで、エリカは、自分の予想と実際がどの程度違うか確認する為にアルファードに質問した。

 〔どのくらい、似た食材があるのかな?
 過去の聖女様が教えたモノって………
 あると良いなぁ………〕

 「アル、小麦粉と膨らし粉、卵、バター
  バニラシード、チーズ、牛乳、ソース

  マヨネーズ、塩、コショウ、ショウガ
  醤油、オリーブオイルとかの油、お酢

  あと、鉄板とかって有る?」

 食材をズラズラと口にするエリカに、アルフードはちょっと考えてから答える。

 「エリカの言葉で、醤油とか言うモノは
  無いけど、残りは全部有るぞ」

 予想以上に材料が揃っていることにびっくりしつつ、エリカはもう一度確認の為に聞く。

 「お醤油って、お城には有るの?」

 そのエリカの質問に、アルファードは首を振る。

 「残念ながら、無い
  歴代の聖女様が、欲しがっていたモノだが
  製作に失敗している

  他に味噌、醤油、納豆、豆腐、油揚げ
  あと、ラーメンの麺とかいうモノが
  ダメだったって、書かれていたな」

 アルファードの言葉に、エリカは小首を傾げて、確認の意味で聞く。

 「あれ? だったら、マヨネーズとか
  コショウ、ショウガ、トウガラシは有るの?」

 エリカの確認に、アルファードは頷いて言う。

 「ああ、マヨネーズもトマトケチャップも
  ソースもあるぞ

  他に、オリーブ油、椿油、ゴマ油、菜種油
  あと、出回っている量は少ないが
  グレープシードオイルも有るぞ

  コショウ、ショウガ、トウガラシ
  バニラシードは無いけど
  バニラビーンズなら有る

  後、寵愛の聖女様が欲しがったからと
  魔の森をしらみつぶしに探索して
  見つけた、カカオも有るぞ

  今は、砂糖が思うように手に入らないから
  チョコレートが作れなくて………
  食べられないから、困ってるけど」

 アルファードの口からあがった様々な食材の存在に、エリカは瞳をキラキラさせた。



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