私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

047★野営地の食事……と、いうか食材について



 お風呂のお陰で元気になったエリカは、普段通りに夕食を作りたがった。

 「アルファード
  お腹が空いたから
  夕食を作りたいんだけど………」

 エリカの言葉に、アルファードがそういえばという表情で言う。

 「オスカーが、神官達に
  滋養強壮に良い

  食事を依頼していると
  思うけど」

 〔えっとぉ…魔物討伐の最前線で……
  滋養強壮の強い食事……きっと…いや
  間違いなく、美味しくないと思う〕

 アルファードの言葉に、エリカはちょっと不安そうな表情で聞く。

 「それって、美味しいの?」

 エリカの問い掛けに、アルファードは目を泳がせながら答える。

 「うっ…良薬口に苦しって言葉に
  近いモノがあるシロモノだな」

 〔あ…やっぱり…なんかお腹空いてたのに…
  ごはんを食べる気力が減退した〕

 予想通りの答えに、エリカはちょっとげんなりした表情で言う。

 「あんまり食欲が出ないんですけど」

 エリカの言葉に、よくその滋養強壮の食事を食べさせられるアルファードは、溜め息混じりに同意する。

 「まぁ~な…俺も出来れば避けたいな」

 〔あの1番大きな旅行カバンの中には
  ずっと欲しいと思っていた柄が一体型の
  包丁と、調味料の大袋が入ってるから……〕

 ここしばらく、湧き出る魔物のセイでソレ(滋養強壮の食事)ばかりを食べさせられていたアルファードの様子を見たエリカは言ってみる。

 「だったら、私が、夕食を作りたい…
  ダメかな?」

 〔えっ? エリカって料理作れるのか?
  エリカの手料理、是非食べたい〕

 エリカの申し出に、アルファードは嬉しそうに頷く。

 「嬉しいな
  エリカの手作りかぁ………」

 〔うん…大丈夫そうで良かった……
  あとは、調味料とかはある程度あるけど
  食材は入ってないから………

  こっちの食材を、エリカに融通して
  もらえるかなぁ?

  ………と、その前に、どんなモノを食材と
  しているのか聞いておかないと………〕

 アルファードの様子を確認してから、エリカは質問する。

 「ねぇアル…こっちの食材は?」

 エリカの言いたいことを理解したアルファードは、現在、自分達がよく食べている食材を口にする。

 「魔の森で取れた魔物の肉と
  果物や木の実に…………

  あとは、日持ちのする堅いパンと
  乾燥させた野菜って感じかな?」

 アルファードの口から名前のあがった食材があるとわかったエリカは、ちょっと驚いた顔で言う。

 「魔物と討伐の前線だから
  食材に乏しいかと思ったけど
  色々と食材があるのね」

 エリカのセリフに、アルファードはちょっと肩を竦めて言う。

 「魔物討伐なんて
  危険なコトをしているからな

  せめて、食だけでもって感じて
  歴代の魔法騎士団の騎士達が

  倒した魔物を【魔法鑑定】で
  確認していた結果だな

  見たことの無い魔物を倒したら
  まず、毒の有無と食べられるモノか?

  そして、美味しいモノかどうかを
  確認するように訓示はうけている」

 アルファードの言葉から、エリカは自分の見知っているような食材があるかどうかを確認する為に聞く。

 「そうだ、ウシ、ブタ、ヒツジ
  ヤギは、食べているの?
  あと、ニワトリとか………」

 エリカの言いたいことを理解したアルファードは、あっさりと答える。
 
 「歴代の聖女が言っていた動物とは
  ちょっとづつ違うけど存在するぞ
  勿論、そいつらを食べているな

  勿論、ニワトリやアヒルやダチョウの類いも
  食べているよ」

 アルファードの答えに安心しながら、エリカは疑問を口にする。

 「魔物も同じような姿なの?」

 エリカの知っているモノと同じかどうかは判らないので、過去の聖女達の言動や様子を書いた書物を読んでいたアルファードは、ソレを答える。

 「聖女達が言ったような姿に
  似ているモノも、似てないモノも居る

  味もかなり違ったりするモノも居れば
  似たりよったりのモノもいるな」

 なるほどという表情をしたエリカは続けて聞く。

 「ふぅ~ん、果物も似ているの?」

 「それは、色々だな

  美味いのは、果物の樹に化けている
  自走植物なんだけど……

  上手く捕まえないと
  短距離の《転移》で逃げるんだ

  でも、季節に関係無く実っているし
  豊作も不作も関係なく実っているから

  食べたい果物があるんだったら
  そいつらを追い駆けて、獲るんだ」

  アルファードの説明に、エリカは小首を傾げる。

 〔自走植物って? ことは………
  もしかして、植物の木が

  自分で走って討伐から逃げ回ったり
  他の生き物を襲うってことかな?

  でも、季節に関係なくかぁ………
  本当に、世界が違うって判るな……〕 

 「えっ~え……でも、便利なんだぁ~」

 そんなエリカに、アルファードはちょっと肩を竦めて言う。

 「ただし、見た目は一緒なんだけど
  無茶苦茶甘かったり、味が無かったり
  物凄く酸っぱいだけとか、苦いとかなんで

  美味しく食べる為には
  細かく切って、1回干して

  それをザラッと掴んで口に入れるか
  酒や水でもどして食べるって感じかな」

 アルファードの説明に、好奇心いっぱいになったエリカは、聞いてみる。

 「アル、今、持ってるの?」

 エリカの様子に気を良くしたアルファードはクスッと笑って言う。

 「食べてみるか?」

 「食べたい」

 即答したエリカに、アルファードはふんわりと笑って言う。

 「じゃ、魔物の干し肉と
  干し魔果を出すから、食べてみるか?」

 「うん」

 そうして、アルファードの出してくれた、干し魔肉と干し魔果を、エリカは試しに食べてみることにしたのだった。






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