私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

044★過去の聖女様には、寵愛の聖女様と言われる方が居たそうです



 エリカは、その内容に眼を白黒させ、語るアルベルトを見て首を傾げた。

 「えーとぉ……
  その魔女認定された人は
  瘴気の浄化は出来たの?」

 素朴な質問という感じで聞くエリカに、アルベルトは大きく頷いて答える。

 「はい、瘴気の浄化は
  確かに出来ました

  だから、困ってしまった
  とも言うのですが…」

 「どうして?」

 「その魔女を
  何も考えずに
  処分した時

  魔女によって
  浄化された瘴気が

  再び、その身から
  出るかもとしれませんし

  魔女の恨みや
  憎しみの負の念が
  瘴気にプラスされて

  世界に溢れ出る可能性も
  ありましたから

  ただ処分すれば良い
  というモノでは
  ありませんでした」

 なるべく感情が入らないように、淡々と語るアルベルトに、エリカは眉を顰めて聞く。

 「じゃどうやって
  魔女を排除したの?」

 そんなエリカに、アルベルトはちょっと情けない表情で、肩を竦めるようにして言う。

 「当時の記録によりますと
  どうやっても
  良い知恵が出ず

  そう、どうしようもないと

  新たな聖女様を
  こっそりと召喚しました」

 〔もしもし……
  そんな頻繁に……

  それに、聖女と魔女で
  相殺ってこと?〕

 エリカは、不安そうな表情で聞く。

 「もしかして……
  聖女と魔女を
  戦わせたの?」

 その問いに苦笑しながら、アルベルトは首を振って答える。

 「いいえ、新たに
  召喚した聖女様に

  魔女をどうしたら
  良いかを聞いたのです」

 アルベルトは、過去の話しなので…的な言い回しを使うが、聖女候補として召喚されたエリカには、ひとごとじゃなかったので、ついぽつりと言ってしまう。

 「それって
  なんかズルイな?」

 エリカの心情を読んだアルベルトは、いっそう情けなさそうな表情になる。
 そして、当事者なのに黙ったきりで、沈黙しているギデオンとレギオンを見てから、1番の当事者である(エリカを抱き込んでいる)アルファードをジト眼で見ていた。
 そのアルベルトの肩を、オーギュストが宥めるようにポンポンと叩いていた。
 肩に感じる手に勇気づけられて、アルベルトは言う。

 「私達の力不足なのは
  確かなコトでしたが

  他に方法はありませんでした

  何度神託を得ようと
  神々に尋ねても

  何の答えも
  ありませんでしたから……」

 アルベルトの言葉に、エリカは素直に聞きたいコトを口にする。

 (とりあえず
  どうなったか?
  結果は?)

 「それで、聖女は
  何と言ったの?」

 エリカの問いに、アルベルトはどこか遠い瞳で、あらぬほうへと視線を彷徨わせながら、嫌そうに言う。

 「自尊心を満たし
  快楽を与え

  楽しんだ果てに
  昇天させよ

  ……と、おっしゃったのです」

 エリカはその瞬間、嫌そうにアルファードを振り返る。

 〔うわぁ~……
  言われたくないセリフだ………

  それって、むふふの最中に
  ってコトでしょ……

  誰が、その魔女の
  犠牲者になったの?

  なんとく、想像は付くけど
  ………ね、アル〕

 アルファードは、エリカの視線を感じて、ものすごぉ~く厭そうな顔になる。
 その表情に、ちょっと溜飲の下がったアルベルトである。

 「まぁ…ざっくりと言えば………

  ドラゴニアンの体力と
  内包する魔力で

  ご昇天いただきました」

 アルベルトの明らかに、何かをざっくりと削った話しに、エリカは突っ込む。

 「話しを端折はしょって
  いますよね?

  魔女って、存在に
  嫌気がというか

  嫌悪感が止まらないと
  思うんですよね

  それで、そんな魔女と
  ムフフなコトが
  できるんですか?」

 追求の手を緩める気が無いエリカは、アルファードの顔をじっと見詰める。
 その視線に、アルファードは、答えようとする。
 が、それを許すオスカーではない。

 「団長、皇族は
  当事者の子孫なので

  客観的な話しが
  出来ないから

  説明をするなと
  言われていますよね

  わかっていますよね
  アルファード様」

 オスカーは、アルファードに言葉と視線でダメ押しをすると、視線をエリカに向けて優しく言う。

 「姫君、団長は、皇族です

  寵愛の聖女という
  呼び名の意味を
  想像して下さい

  判ったのなら
  団長に聞くコトを
  止めて下さいね

  可哀想でしょう…色々と………」

 オスカーのセリフに、エリカは首を傾げて考える。

 〔寵愛って…………
  ただの貴族に嫁いだのなら…

  絶対に付かない言葉だわ……ソレって……

  皇子様とか皇帝様とか
  王様とかの妻
  妃とか側室に付く言葉よね

  寵妃…ってこと…皇族の妃
  それじゃあ…アルは………
  確かに当事者の子孫だわ

  公平で冷静な説明は
  確かに無理ね〕

 エリカがオスカーの言葉で追求を諦めたのを見て取り、アルベルトはサラリとその続きを話し始めた。







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