私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

034★閑話 恵里花と兄大和のある日の会話2 後編

 恵里花にズバリを聞かれて、お兄ちゃんは眼を見開いてから、だぁ~っていう顔をして、大きく溜め息を吐いてくれた。

 もしかして、聞いたら不味かったかな?
 でも、聞きたいから、恵里花はお兄ちゃんの瞳を真っ直ぐに見る。
 こうすると、お兄ちゃんはたいてい諦めるから………。

 「はぁ~それかぁ~…………」

 困ったという表情のお兄ちゃんに、畳み掛けるように言う。
 こうすれば、恵里花に甘いお兄ちゃんは嫌って言えないから…………。

 「お願い教えて」

 恵里花の言葉に、ついにこの日が来たかという表情で、唐突にお兄ちゃんは言い始めた。

 「親父は、遊び人だった…

  来る者拒まず…
  去る者追わずって…

  最低野郎だったんだ…

  ただし、避妊はきっちりと
  する男だった」

 流石に、パパの素行がそんなに悪いはずは無いとおもうんだけどぉ~………。
 でも、お兄ちゃんが恵里花に嘘を言うはずないから、何か理由でも有ったのかな?
 一応、反論しておこう。

 「えっぇ~そんな感じないよぉ~
  パパって、きっちり生真面目
  って感じしかしないけど?」

 恵里花がそう言うと、お兄ちゃんはニヒルに嗤って答えてくれた。

 「そりゃ~…
  おふくろにとっ捕まって
  女に幻滅したセイだ」

 「えっ?」

 「はっきり言って、親父は
  結婚する気が無かった

  セックスは、遊びの1つ
  だったんだよ」

 もしもしぃ~……なんか…考えていたモノと全然違う方向に話しが行くんですけどぉ~……パパが、そういう男?

 「うぅ~ん…なんか…
  最低男な感じが……」

 恵里花の感想に、お兄ちゃんは………。

 「避妊に気を使っていても

  女がゴムすり替えたら
  意味ねぇーんだ

  って、言ったら
  理解わかるだろ、ソレ」

 「それって…………」

 ママってば、男の敵……姑息だわ………。
 パパ、自分の二の舞にならないようにってことかな?

 お兄ちゃんにだけは、教えたのかな?
 お姉ちゃんには、教えてなさそう………。

 「子供が、出来たから
  結婚してって言われて

  親父は、あっさりと
  結婚したんだよ」

 はぁ~……ママの自己申告で、結婚したの?
 マジで?そんな簡単に、人生の墓場に…………。

 パパって馬鹿なの?
 いや、定番の言葉を聞いてみよう………。

 「えっとぉ~…
  最低男だったら…

  堕ろせって
  言うんじゃないの?」

 「堕胎ってさ
  腹の中の子供を
  殺すコトだろ?」

 「うん」

 「それに、子殺しって………
  殺人の片棒を

  背負い込むのは
  嫌だったってさ」

 ああ、やっぱりパパって優しいんだなぁ~……。
 ママの自分勝手な悪さも、許しちゃったんだ。

 「パパって優しいんだぁ~」

 「堕胎って
  後々身体にひびくって

  親父は知っているから
  それは言いたく無かったって……」

 「あっ……確かに
  失敗すると

  妊娠できなくなるって……
  よく聞くよね

  でも…ママがパパと
  結婚したくて

  ワザと他の人と
  子供を作って

  パパの子だって
  嘘付いたっては

  思わなかったのかなぁ?」

 でも、自分の子だって、なんで素直に信じたのかな?
 恵里花には、理由がわかんないけど…………。

 「それについては
  親父のヤツ

  絶対の自信が
  有ったらしいよ

  おふくろが
  自分以外の男の子を

  押し付けたりしないってさ

  だから、責任とって…
  結婚したんだって言ってた…」

 なるほど、そこにパパの愛は無かったんだ。
 ママの一方的な愛に、子供で出来たならいっかなんていう安易な考えで、結婚しちゃったんだ…………。

 で現在進行形で、苦労のしまくりだなんて、ちょっと不憫かも………。
 って……あれ?……じゃあ、恵里花ってどうやって出来たの?
 どうせだから、お兄ちゃんに聞いちゃえ。

 「お兄ちゃんと
  お姉ちゃんは

  双子だから
  その時の勢いの子供でしょ…

  でも…恵里花は違うよね…
  何で…生まれたのかな?」

 お兄ちゃんは、ソレにもあっさりと答えてくれた。

 「おふくろが、親父に
  媚薬を盛ったから
  だってさ」

 流石に、聞いた内容が……お陰で、言葉遣いが………。

 「マジで?」

 確認するよう言えば、お兄ちゃんがさらりと続けて言う。

 「親父は、防衛大から
  海上自衛隊に入ったから
  艦に乗るだろ」

 「うん…1回…海にでたら……」

 パパってば…認識力低下していたんだね……不憫な。

 「おっ…気が付いたな…
  そう…家に帰って来たとき

  何か…溜まってたらしくて…
  ついやったらしい…

  それでも…しっかりと
  自前のゴムを
  つけていたんだけどぉ~」

 いや、夫婦なんだから、当たり前の行為だろうけど、やっぱり避妊はしていたんだ………。
 なんか、話しが見えたけど……本当に、ソレだけ?

 「ママがすり替えたの?」

 「いや、今度は
  すり替えじゃなかったらしい

  親父の警戒を察して
  手法を変えたんだよ

  穴開けたゴムと
  交換できないことを想定して

  ゴムを捨てるゴミ入れに

  がっつりと凍らせた保冷剤を
  ゴミの下に入れておいて………
  って、ことらしいぜ」

 ありえなぁ~い……恵里花って、使用済みから生まれたのぉ………。
 なんか、パパが可哀想になってきた。

 それでも、パパは恵里花のことを愛してくれるんだから、優しいんだよねぇ………。
 それに比べて……パパ、とんでもないババを引いたね……。

 ババ…いや、魔女かな?……お姉ちゃんもやりそう………。
 お兄ちゃんは、大丈夫なのかな?

 「うわぁ~……ママってば…
  ど最低な女だよね
 
  でも、その結果が
  恵里花だから…

  何にも言えないけどさ………
  パパが可哀想になるなぁ~……」

 恵里花がそう言えば、優しいお兄ちゃんは、何時だって慰めてくれる。

 「気にすんなよ…

  親父は…おふくろは
  大嫌いだけど

  俺や恵里花を
  産んでくれたから…

  邪険に出来ないって
  言ってるんだぞ」

 パパ…だから、つけこまれるんだよ………ママに。
 でも、そんなパパに愛されているのがわかるから嬉しい。

 「パパってば…………」

 何時でも、パパは恵里花の味方してくれる。
 お兄ちゃんも、甘やかしてくれる。
 でも、そっかー……そういう理由で結婚したのか………。
 てっきり情熱的な相思相愛が冷めたモノかと思っていたんだけど………。
 最初から、ママに対する愛情は無かったのか、なら、あの対応も納得出来るな。

 「お前が可愛くて
  たまんないだよ
  親父は
 
  だから…当分の間…
  男は作るなよ

  親父にいたぶり
  殺されるぞ、確実に…」

 どこを見て、そう言うんだか?
 お兄ちゃんもパパも、目が腐っていると思うな。

 平均より小柄で、ぽっちゃりだし…………。
 でも…けして、デブじゃないもん…たぶん、きっと。

 容姿は、お姉ちゃんやママとなんて比べられない、平凡な顔だし………。
 ぱっとしないから…どうせ、ブスだし……あっ…落ち込んじゃいそう。
 
 「うん…って、言うか…

  どうせ、恵里花は
  ブスだから…

  結婚しないかも
  しれないよ…」

 そんな恵里花の発言に、お兄ちゃんは真剣な顔で言う。

 「馬鹿…言うな………
  聖治も悟も譲も健治も…

  俺のダチや部下は………
  たいてい、お前を
  狙ってるんだぞ………

  まっ…もっとも……
  俺に勝たない限り

  交際を申し込むのは
  禁止にしているけどな…」

 うぅ~ん…もしかして、本気で言ってる?
 やっぱり、お兄ちゃんの目は腐っている。
 ダメだわ…参考にならないわ……。

 「信じらんないよぉ~………

  お兄ちゃんの
  部下や友達の

  リップサービスだよ」

 「違うって…………」

 あの後、変な方向に話が曲がってしまったけど…………。
 パパとママの馴れ初めと恵里花が出来た理由を聞けた分だけマシかな?
 恵里花みたいな、ぽっちゃりブスを好きになってくれる人っているのかな?

 ブス専って、変わった趣味の人ぐらいかも…………。
 なんか、それはそれで嫌だなぁ~。
 でも、何時か、運命の人に出会えたら…イイなぁ~………。

 なんて、考えていたのは、聖女候補召喚に遭遇するまでのこと………。
 今は………本人には言うつもりないけど、お兄ちゃんよりも美少年なアルファードにほだされて来てるかも………。
 何時か、自分に自信が持てるようになったら………。







コメント

  • 真京(旧:間虚羽

    途中まで読みましたが面白いです!
    よければ私の作品も読んでみてください!^_^

    0
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