BEST・TRUMP

仮宮 カリヤ

王様とはなにか

「………で?」


「改めて名乗らせて貰う! クラム・スピードだ! これから苦楽を共にしようではないか!」


「イヤイヤイヤイヤイヤ」


「煩いぞ、ただの戯言ならば余所でやって貰う」


面倒臭そうにガリヴァーは頬杖をついてそう言った。


「いや、こいつはただの不法侵入者、俺とは何ら関係ありません。さぁ追い出してしまってください」


「ちょっと待て!?」


そう言うと、俺の肩に腕を通し、部屋の隅まで連れていった。


「俺はお前に秘密を持っていることを忘れたのか? お前にしか頼めんのだ」


「えぇ………」


どうしてこうなった。


それは遡ること昨日、こいつと偶然顔を合わせてしまったことに始まる。
それは昨日ガミアと約束した、クエストの手伝いを果たしに俺、アイリス、ガミア、レオで、クエスターまで歩いていた時のこと…………。


「今日は本当にありがとうございます! 中々ソロでは難しいクエストも多くて……」


「いや、昨日はレオも助けてくれたし、感謝してるつもりだ」


「ご迷惑をおかけして大変失礼しました………」


そこにアイリスが、俺たちの会話に入った。


「いやいや、トウヤもかっこ良かったよ? 例えばあのガラス避ける時とか」


「え? お前見てたの?」


「んふふ………」


すると、道の真ん中にザシンという金属音が鳴り響いた。
それは剣だったが、すぐにクラムの姿へと変貌した。


「トウヤよ、また会った!」


まさか、奇襲!?
俺は考える前に、すぐに手が動いた。


「目潰し!!」


俺はクラムに砂の塊を投げつけた。
それはクラムに当たると分散し、塵のように舞った。


「な、何だこれは!?」


「逃げるぞ!」


「え、待って!?」


「けほけほ、何をする!」


俺はアイリスの手を取って逃げようとするが、目の前にあの老爺が現れた。


「坊っちゃん、剣をお忘れです」


「おぉ、ありがとう爺!」


ちっ、塞がれた………。
ここからどうしようかと考えていると、レオが俺たちの前に踏み出して言った。


「昨日は負けましたが、今日は勝つつもりです。来るなら来てください」


クラムは眼を擦って砂を取り、やっとまともに視界が開けると眼を見開いて言った。


「おぉ、昨日のか! 確かに魔術師としては狭い通路は命取り、貴様の申し出承った! だが、それより先にやっておくべきことがある」


そう言うと、クラムは俺のところへ近寄った。


「我輩の臣下に入り、そして国を造ろうぞ! トウヤよ!」


ん、何て言ったこいつ?


「いやいや、俺はお前の兄を殺した男だぞ。分かってるのか?」


クラムはきょとんとした顔で言った。


「あぁ、存分に分かっているつもりだが? 兄への弔いは昨日で終わりだ。人を死なせて弔いなど馬鹿馬鹿しいだろう?」


んー、なるほど。ある程度だが、俺の思惑通りに行っているらしい。


「それに貴様は強い! 是非とも我輩の臣下に欲しいのだ」


俺はそれに対し、即答で答えた。


「嫌です」


「ダニィッ!?」


「まず国造りって何だよ。何でそうなんだよ」


「む、貴様は知らんのか」


クラムは何かに気付いたように言った。


「今、キャロメットはエリザベスの手に渡っている」


「…………はい?」


俺はその言葉に動揺した。
俺だけではなく、レオやアイリスも、同じ反応だった。
だってキャロメットは、俺たちの手で燃やした筈……。


「なるほど、説明が必要だな。着いて参れ」


そう言って俺たちは、近くの喫茶店へ入り、話し合うこととなった。


「あぁ、分かっている。キャロメットは貴様らの手で崩壊させられた筈なのだ」


「え、何で知ってるの!?」


アイリスは、驚きを隠せずに大きな声で聞いた。
あぁ、なるほど。そういうことか。
これは俺も何度か見たことがあるな。


「ほう、では説明してやろう」


そう言ってクラムは説明を始めた。


「ユニークスキルはこの世に一つずつしかなく、持ち主が死んだあとは、その親族に引き継がれやすいのだ。しかも、引き継がれた者には、前の持ち主の記憶もある程度だが引き継がれる。きっと私の兄は、お前に殺された後にも少しの間生き、国の行く末を見ていたのだろうな」


俺はこの時、少し後悔した。
それは、俺がクラムの兄を殺したという、嫌な記憶を掘り返してしまったと思ったからだ。


「だが、今のキャロメットは可笑しい。国民も何か変わったみたいで、あのエリザベスとか言う奴も誰か分からん。なので……」


しかし、それも思い違いだったようで、笑顔を見せて言った。


「我輩は、キャロメットの状況を知りたい。協力してはくれまいか?」


俺は考えたが、そのエリザベスとか言う奴も気になるし、何故キャロメットが無事なのかも気になる。結局俺は、クラムに賛成することにした。


「まぁ、国を造るっていうのは出来ないが、協力してやるよ」


「僕も尽力します!」


「当然、私もやるよ!」


ここから、俺たちのキャロメット攻略作戦が始まった。



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