BEST・TRUMP
不幸少年に幸福を 6
「や、やっとか・・・・」
俺達は王宮の門にやっとの事でたどり着くことが出来た。
「大分予定が狂っちゃったね」
「お前のせいでな?」
と言いたかった俺がいた。
俺は代わりにキッと睨み付けた。
アイリスは何で睨まれたのか分からず頭を傾げたようだった。
まぁ、話を戻して、王宮の門は国境の門ほどの大きさだった。
「で、どうやって入る? やっぱりさっきのワイヤー?」
「あぁ、お前の予想通りだ」
俺はワイヤー銃を取り出し、先端を門の上に付け、アイリスを抱えながら門に上った。
「で、また降りるの~?」
アイリスが嫌そうな顔をしている。
さて、どうしたものか。
「そりゃ、それしかないだろ」
「え~、他の方法はないの~?」
「・・まぁ、あると言えばあるが・・・」
「ほんと!?」
そしてその方法を実行することになった。
それは、ワイヤーの進行を遅くし、ゆっくりと下に降りるという方法だった。
「ほら、こんなにいい方法があるじゃん!」
「いや、めっちゃ恥ずかしいんだけど。女子を抱えてゆっくりと降りるなんて………」
「え? 何言ってるの? 重要なのは安全性でしょ?」
「うるさい! この世は全てカッコよさで出来ている!」
「んなわけないでしょ!」
俺達は少しの間いい争いをしていたが、疲れたので諦めて中に入ることにした。
「で、何処にいけばいいの?」
「まずは宝物庫だな。どっちかというとこっちの方が重要だ」
「え? なんで?」
「・・もうやり方は出来上がってんだよ」
              ~~~~~~~~~~~~~
宝物庫を見つけると、中には金の王冠、数々の宝石が埋め込まれた武器など、数々の宝が山ほどに置かれていた。
「へぇーここが宝物庫かー」
「よし、じゃあ片っ端から盗むぞ」
「おー!!」
俺達は持ってきた袋いっぱいにお宝を詰め込んだ。
「こうなることなら、レオも呼んで来れば良かったな」
「いや、あの子は運動が苦手だから、こういうことは不得意だと思う」
「ほう、今思ったが、お前らってどのくらいの付き合いなんだ?」
「うーん、私が七歳の頃からかな」
「思ったより長いな」
「幼馴染って奴だね。昔から一緒にいて、城の中でいつも遊んでた」
「レオはクロファスとの件は知ってるのか?」
「言ってはないけど、多分知ってると思うな」
「・・・・どうゆうことだ?」
「レオは、未来が見えるから」
俺は少し考えて結論を出した。
「スキルか」
「多分そうだろうね」
そう答えると、アイリスは宝を入れた袋を置いて俺の方へにじり寄った。
「次はあなたの番だよ。あなたはどうして私を殺そうとしたの?」
「・・・・俺が暗殺の仕事で依頼されたから」
「いや、そのずっと前の話のはずだよ」
またこの空気だ。
アイリスは、なにかと見透かすのが得意のようだ。
この唾を飲み込むのさえ辛い感覚。 きつい。
「あなたが、その仕事をしようとした切っ掛けを教えてよ」
どんどんと近寄ってくるアイリスだったが、なにか話を変える話題は・・・・。
「もうこれだけ集まったら大丈夫だ! 早く出ようか!」
俺は宝の入った袋を担いで城を出た。
「・・・・もう!」
           ~~~~~~~~~~~~~~
「で、出てきちゃった訳だけど、どうするの?」
「ふっふっふっ・・・・それはな・・・・」
俺はバッグからクロファス邸から取ってきたあるものを取り出した。
「これだ!」
「え、それって・・・・」
アイリスが絶句した。
無理もない。これはフォート家の家宝とされていた伝説の・・・・。
「不死鳥の炎だよ」
不死鳥の炎、それは不死鳥がある村を焼き付くしたとされる永遠に燃え盛る、消えることの無い炎。
それをフォート家は家宝としていたのだ。
さっきまで固まっていたようにしていたアイリスが漸く口を開いた。
「で、それを・・・・どうするつもりなの・・・・?」
少し声が震えているようだ。
俺はニッと笑って答えた。
「こうする」
俺は王宮に向かって炎の入った瓶を向け、蓋を開けた。
すると、不死鳥の炎はすぐに王宮を取り囲んだ。
「あー!!」
アイリスの悲鳴が耳に響いた。
炎はすぐに王宮を焼き付くし、俺はその炎の一部を瓶にいれ、蓋をした。
「これで大丈夫だろ?」
さっきまで固まったようだったアイリスが、安堵したような表情を見せた。
「良かった。ちゃんと考えていたんだね」
「ま、まぁな」
実はあんまり考えてなかった俺がいたりして。
「いいから、もう出るぞ」
俺達はその燃え盛る王宮を背にキャロメットを出た。
         ~~~~~~~~~~~~~~~~
俺達が国境の門に登っている頃には、不死鳥の炎は国全体に燃え移っていた。
不死鳥の炎は、命を蝕んでいるとは思えないくらいに美しく、そして優雅に火花を散らしていた。
俺はここで、ずっと気になっていたことを聞いた。
「お前は、ここが好きだったか?」
すると、アイリスは即答して答えた。
「うん、とっても好きだったよ。そういうトウヤは?」
「俺は、嫌だったかな」
簡単にそう答えた。こことは色々あったからな。
「じゃあ、良かったよ」
アイリスはそう言った。
「だって、守ってくれる人が嫌いな場所なんて、私だって守ってほしくなんか無いよ」
俺は少し考えたあとに、鼻で笑ってしまった。
「俺はお前の護衛か?」
「え~? 違うの?」
「違うさ」
そういって俺は立ち上がった。
「俺達は仲間だ。それ以上でもそれ以下でもない」
そうキッパリと答えた。
「私は、違うと思うな」
そういって、俺の手を両手で覆い被せた。
「一緒に敵に立ち向かって、一緒にご飯を食べて、一緒に過ごして。それってもう、家族じゃない?」
「・・・・家族・・?」
俺はまた、今度は本気で笑ってしまった。
「まだそんなことしてないじゃん!」
「いや、絶対にそうなるもん!」
口を膨らませてそう言った。
俺は笑いが治まり、アイリスに答えた。
「いいじゃん、家族。とっても面白そうだ」
「ふふ、それじゃあ、今日から私たちは家族だね!」
「あぁ。この手に誓って」
そうして俺とアイリスは、約束を交わすように小指を絡めた。
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