異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第184話お母さん! 命ある存在

「お、おい、花島。これで本当に大丈夫なのか?」


「ああ。予定ではお前は攻撃力1300 守備力2000 星三つのモンスターになっているはず」


「こ、攻撃力? 守備力? そ、それって強いのか?」


「初期だと強いが、数年後にはゴミクズ同然の強さだな。何、カードゲーム界隈ではよくあること。気にするな」


「い、いや! 気にするだろ! い、命が懸っているんだぞ!」


ビジュアルは昔見た特撮映画の巨人を参考にし、コンセプトは昔やっていたカードゲームのキャラクターとし、岩石の巨人が完成。
右手に持つ石の剣と、左手の石の盾が最高にカッコ良く作れた事に作製者である俺は興奮を隠しきれなかった。


デカイモノが生成出来なければデカイモノで覆えば良い。
元々、巨人族であるホワイトの兄の身体能力は人間の俺よりも高い。
ニートである事を考慮しても戦闘向きなのだ。


「お、お兄ちゃん、と、とりあえずこの上に乗っかっている木のツル......」


「き、斬る......。失敗したらホワイトが......」


「わ、私、もう、限界なんだ。押しつぶされるくらいなら斬られた方がマシかな」


ホワイトの足元を見ると、石のタイルが割れ、足首が地面にめり込んでいる。
それだけの圧がホワイトに掛かっているということ。
ホワイトの兄は妹の要望を受け入れ、スイカ割りをするように石の剣を頭上から振り下ろす。
切れ味が悪かったのか、ツルが二つに切れる事はなかった。
しかし、剣が当たった事で驚いたのか、ツルはずるずるとホワイトの頭上から離れて行く。


ツルの重さから解放されたホワイトは膝を付き、肩で息をした。


「ホワイト! 大丈夫か!?」


「う、うん。何とか......。だけど、花島、あの木のツル実体がある......。前にマモルが出したのは幻想だったのに......」


「ホワイトの異能を打ち消す能力を想定して魔法でツルを生成するのではなく、何か他の力でツルを生み出した? そういうことか?」


「う、うん。ただ、あの木のツルは操られているとかそういうのじゃなくて、自身の意思を持っているみたい。意志ある存在を生み出すなんて能力や魔法でなんて出来っこないよ。もしかしたら、マモルは......」


「いや、あいつは俺と同じ人間だ。俺のいた世界から来たという特別な個性を持っているがな。ホワイト、相手がどうであれ、自分の中で相手の存在を大きなものにするな。俺たちは立ち向かう事しか出来ないんだからな」


「花島......」


カッコいい事を言ったものの、マモルの出した力はおそらくこの世の理から外れた力。
魔法と能力しか存在しない世界で第三の力は脅威である。
だが、シルフやパス、サンが城の中にいる。
俺たちはその脅威に立ち向かう事しか選択肢がないのだ。


「花島!く、来るぞ!」


地鳴りがすると、数本のツルが勢いよく穴から飛び出し、俺とホワイトの兄を襲う。


ホワイトの兄は与えた石の剣を器用に扱い、虫を追い払うようにツルを叩く。


俺はゴーレム幼女の能力を駆使し、地面に手を当て、石の石柱を作り、応戦した。


「き、キリがないな! じゃ、弱点とかないのか!?」


「弱点!? 木のツルだから炎とかか!?」


木は火に弱い。
目の前のツルが植物としての性質を持っていればの話だがな。


「ひ、火か!」


ホワイトの兄は剣を大きく振り、迫り来るツルとの距離を取り、近くにあった松明まで駆けて行く。


「こ、このぉ!!!」


「うわ! バカ! 安易に考えちゃ______」


松明は綺麗な弧を描き、木のツルが密集する場所にポトリと落ちる。
すると、火を恐れているのか、木のツルは蜘蛛の子を散散らすように穴へと帰っていった。


「や、やったぞ!」


「こんなアッサリ......」
「花島。とりあえず、先を急ごう」


「お、おう」


息を整えたホワイトと共に俺達は城に向かって走り出した。

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