異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。
第172話お母さん! 救世主に襲われました!
「よっと!」
ホワイトの右ストレートを避ける黒マントの男。
彼以外の四人はそこら辺で完全にのびており、こちら側の勝利は目前だった。
「______nshall!!!」
劣勢となった黒マントの男が呪文を唱えながら、右手を天に掲げると小さな積乱雲がホワイトの上空に発生し、稲光と共に一筋の雷がホワイトに目掛けて落ちた。
「ホワイト!」
「ふん!」
「なっ!? 手で受け止めただと!?」
落雷を涼しげな表情で受け止めたホワイトの姿に黒マントの男は動揺し、後退りを始める。
「す、すごい。魔術師を圧倒している... ...」
隣で戦況を見ていたバラックは分かり易いほどに生唾をゴクリと音を立てて飲み込み、ホワイトの強さに感嘆の声を上げた。
「まあ、弱い魔法くらいなら打ち消せるからなぁ」
俺の周りにはこの世界で最強とも言える種族”魔女”が複数いた。
ホワイトの能力は魔法を打ち消す事だが、強い魔法は打ち消す事は出来ない。
ミーレやレミー、ゴーレム幼女がいた時はホワイトの力は完全に強者の影に隠れてしまっていたが、今、魔術師と戦っているホワイトの姿を見ると。
「ホワイトって、もしかしたら、かなりの強キャラなんじゃね?」
と今更ながら気付く。
「お、おい。今の状況はまずい... ...。本部に戻り、状況を立て直そう」
倒れていた黒マントの一人が立っている黒マントの男にそう告げると、黒マントの男は首を縦に振って答えた。
「あいつら、逃げる気だな!」
あの集団を逃がしてしまえば、また、新たな戦いの火種となりかねない。
俺は、馬車の荷台から飛び降り、黒マントの男を捕まえようとしたのだが、黒マントの男は呪文を口にした直後に倒れている他の四人と共に濃霧の後のように白い煙だけを残して姿を消した。
「くそ! あいつら、一体、何なんだよ!」
ホワイトの兄貴に用があって来ただけなのに、また、変な事に巻き込まれる予感がプンプンと臭い、内心焦る。
この間もシルフにあのオッサンの毒牙が迫っているっていうのに... ...!
「あいつら、もしかして... ...」
「ん? 何だ? 知っているのか?」
含みを持った発言をするバラックに俺は詰め寄る。
「え、ええ。もしかしたら、あいつらは”救世主”の一味かもしれません」
「”救世主”?」
「はい。最近、この辺の村や町に出没し、悪さをする連中です」
「盗賊集団のような奴等なのか?」
「盗賊... ...。とは、少し違うのかもしれません。あくまで、私の考えですが、救世主は何か一つの目的を持って行動しているように思えます」
「一つの目的... ...」
確かに、あいつらの動きはどことなく、何者かに統率されているようなものだった。
それに、倒れていた黒マントの男は「本部に戻る」と発言していたな。
つまり、他にも仲間がいるという事だ。
五人すべてが武装していたという事は事前に作戦が練られていた証。
しかし、こちらが四人に対し、向こうは武装していると言えども五人では少ない。
事前にこちら側の人数を把握していたと仮定するなら、倍の八人は欲しいところ。
だとすると、俺とホワイトがこの馬車に乗っていた事はあいつらにとってイレギュラーな出来事だったのでは?
つまり、こいつらは最初はバラックかホワイトの兄、或いは、両方を狙って作戦を立てていたのではないだろうか?
だとすると、あいつらの狙いは一体何だったんだ?
腕を組み、救世主とかいう連中の目的を考えていると、バラックが「ここは危険だ。早く、私達の国に行きましょう」と俺とホワイトに再び、馬車に乗るように急かした。
「... ...国? ここから近いのか?」
「ええ。馬車で一時間ほどのところにあります」
一時間?
俺はバラックの答えに耳を疑う。
ホワイトシーフ王国の周りには小さな村などはあるが、国と言える大きな集落などはない。
一番近くにあったヴァ二アル国でさえも歩いて5日はかかる。
馬車で一時間なら、歩いても一日掛からない距離に国が本当にあるのか?
「と、とりあえず、乗ってくれ。お、俺は何度か行った事があるからき、危険じゃない事は知っている」
どもった声でホワイトの兄が言うと、俺よりも先にホワイトが馬車に乗った。
家族が安全だと言ったので信用したのだろう。
まあ、ここにいても、また、あいつらに襲われる可能性もあるしな。
バラックが何を企んでいるのか、本当に信用しても良い人物なのかと疑いを向けながらも、俺は馬車に乗ろうとし、足を伸ばすが足を乗せる部分が高過ぎて、困ってしまった。
「悪いな。ホワイト」
「人間にはちょっと高すぎるよね」
登れない事を察したホワイトは俺の首根っこを掴み、仔猫を運ぶ親猫のように持ち上げ、馬車の中に引き入れてくれた。
その光景をジーッと見つめるバラック。
「どうした?」
「いえ、人間のような下等な生物が巨人族とそこまで親密な関係を築いている事が不思議でしょうがなくて」
下等生物... ...。
まあ、否定はしないけどさ。
「まあ、最初は仲悪かったけどな。お互い、言葉が通じるんだし、同じ釜の飯を喰ってたら自然と仲良くなるだろ」
「はぁ... ...。そういうもの何でしょうか?」
「そういうもんだよ。バラックは人間嫌いなのか?」
「えぇ。人間という種族は数だけが多く、この世界に我が物顔で蔓延っている害虫のようなもの。同じ釜の飯を喰うなんて考えられませんね」
淡々とし、声を荒げたりはしないがバラックの人間嫌いが伝わる良い言葉だ。
これほどまでにこき下ろされると何か清々しいな。
「お、おう......」
バラックは俺がホワイトの兄の友人か何かだと思っているから、俺を馬車に乗せたのだろう。
でなければ、同じ空間にいることさえ嫌なはずだ。
やはり、異なる種族が仲良くするってのは難しいんだなぁ。
と他人事のように冷ややかな目で見ていると、珍しく、ホワイトが険しい表情を浮かべながら。
「バラック。それは花島に対して失礼だよ」
と苦言を呈し、バラックも「そうですね。失礼いたしました」と俺に頭を下げた。
「いや、いいよ。俺だって、嫌いな奴や人種だっているからな。バラックを悪者のようにして悪かった」
「いえ、私こそ言い過ぎました。しかし、花島殿はあまり人間らしくない。私を見ても心身共に動揺した素振りも見せない。先生と対等な関係を結べたという事も納得ですね」
貶した後に、バラックはとびきりの飴を俺に贈る。
バラックは悪い奴ではないのだろう。
しかし、まだ、俺はバラックを信用する事は出来なかった。
「で、お兄ちゃんはどうして先生って言われているの?」
そう。
本題はそれ。
「スコッツデール先生は私達の世界の起源を変えてしまう発見をしました」
と言いながら、腰に身に付けていたポーチの中から一冊の分厚い本を取り出した。
ホワイトの右ストレートを避ける黒マントの男。
彼以外の四人はそこら辺で完全にのびており、こちら側の勝利は目前だった。
「______nshall!!!」
劣勢となった黒マントの男が呪文を唱えながら、右手を天に掲げると小さな積乱雲がホワイトの上空に発生し、稲光と共に一筋の雷がホワイトに目掛けて落ちた。
「ホワイト!」
「ふん!」
「なっ!? 手で受け止めただと!?」
落雷を涼しげな表情で受け止めたホワイトの姿に黒マントの男は動揺し、後退りを始める。
「す、すごい。魔術師を圧倒している... ...」
隣で戦況を見ていたバラックは分かり易いほどに生唾をゴクリと音を立てて飲み込み、ホワイトの強さに感嘆の声を上げた。
「まあ、弱い魔法くらいなら打ち消せるからなぁ」
俺の周りにはこの世界で最強とも言える種族”魔女”が複数いた。
ホワイトの能力は魔法を打ち消す事だが、強い魔法は打ち消す事は出来ない。
ミーレやレミー、ゴーレム幼女がいた時はホワイトの力は完全に強者の影に隠れてしまっていたが、今、魔術師と戦っているホワイトの姿を見ると。
「ホワイトって、もしかしたら、かなりの強キャラなんじゃね?」
と今更ながら気付く。
「お、おい。今の状況はまずい... ...。本部に戻り、状況を立て直そう」
倒れていた黒マントの一人が立っている黒マントの男にそう告げると、黒マントの男は首を縦に振って答えた。
「あいつら、逃げる気だな!」
あの集団を逃がしてしまえば、また、新たな戦いの火種となりかねない。
俺は、馬車の荷台から飛び降り、黒マントの男を捕まえようとしたのだが、黒マントの男は呪文を口にした直後に倒れている他の四人と共に濃霧の後のように白い煙だけを残して姿を消した。
「くそ! あいつら、一体、何なんだよ!」
ホワイトの兄貴に用があって来ただけなのに、また、変な事に巻き込まれる予感がプンプンと臭い、内心焦る。
この間もシルフにあのオッサンの毒牙が迫っているっていうのに... ...!
「あいつら、もしかして... ...」
「ん? 何だ? 知っているのか?」
含みを持った発言をするバラックに俺は詰め寄る。
「え、ええ。もしかしたら、あいつらは”救世主”の一味かもしれません」
「”救世主”?」
「はい。最近、この辺の村や町に出没し、悪さをする連中です」
「盗賊集団のような奴等なのか?」
「盗賊... ...。とは、少し違うのかもしれません。あくまで、私の考えですが、救世主は何か一つの目的を持って行動しているように思えます」
「一つの目的... ...」
確かに、あいつらの動きはどことなく、何者かに統率されているようなものだった。
それに、倒れていた黒マントの男は「本部に戻る」と発言していたな。
つまり、他にも仲間がいるという事だ。
五人すべてが武装していたという事は事前に作戦が練られていた証。
しかし、こちらが四人に対し、向こうは武装していると言えども五人では少ない。
事前にこちら側の人数を把握していたと仮定するなら、倍の八人は欲しいところ。
だとすると、俺とホワイトがこの馬車に乗っていた事はあいつらにとってイレギュラーな出来事だったのでは?
つまり、こいつらは最初はバラックかホワイトの兄、或いは、両方を狙って作戦を立てていたのではないだろうか?
だとすると、あいつらの狙いは一体何だったんだ?
腕を組み、救世主とかいう連中の目的を考えていると、バラックが「ここは危険だ。早く、私達の国に行きましょう」と俺とホワイトに再び、馬車に乗るように急かした。
「... ...国? ここから近いのか?」
「ええ。馬車で一時間ほどのところにあります」
一時間?
俺はバラックの答えに耳を疑う。
ホワイトシーフ王国の周りには小さな村などはあるが、国と言える大きな集落などはない。
一番近くにあったヴァ二アル国でさえも歩いて5日はかかる。
馬車で一時間なら、歩いても一日掛からない距離に国が本当にあるのか?
「と、とりあえず、乗ってくれ。お、俺は何度か行った事があるからき、危険じゃない事は知っている」
どもった声でホワイトの兄が言うと、俺よりも先にホワイトが馬車に乗った。
家族が安全だと言ったので信用したのだろう。
まあ、ここにいても、また、あいつらに襲われる可能性もあるしな。
バラックが何を企んでいるのか、本当に信用しても良い人物なのかと疑いを向けながらも、俺は馬車に乗ろうとし、足を伸ばすが足を乗せる部分が高過ぎて、困ってしまった。
「悪いな。ホワイト」
「人間にはちょっと高すぎるよね」
登れない事を察したホワイトは俺の首根っこを掴み、仔猫を運ぶ親猫のように持ち上げ、馬車の中に引き入れてくれた。
その光景をジーッと見つめるバラック。
「どうした?」
「いえ、人間のような下等な生物が巨人族とそこまで親密な関係を築いている事が不思議でしょうがなくて」
下等生物... ...。
まあ、否定はしないけどさ。
「まあ、最初は仲悪かったけどな。お互い、言葉が通じるんだし、同じ釜の飯を喰ってたら自然と仲良くなるだろ」
「はぁ... ...。そういうもの何でしょうか?」
「そういうもんだよ。バラックは人間嫌いなのか?」
「えぇ。人間という種族は数だけが多く、この世界に我が物顔で蔓延っている害虫のようなもの。同じ釜の飯を喰うなんて考えられませんね」
淡々とし、声を荒げたりはしないがバラックの人間嫌いが伝わる良い言葉だ。
これほどまでにこき下ろされると何か清々しいな。
「お、おう......」
バラックは俺がホワイトの兄の友人か何かだと思っているから、俺を馬車に乗せたのだろう。
でなければ、同じ空間にいることさえ嫌なはずだ。
やはり、異なる種族が仲良くするってのは難しいんだなぁ。
と他人事のように冷ややかな目で見ていると、珍しく、ホワイトが険しい表情を浮かべながら。
「バラック。それは花島に対して失礼だよ」
と苦言を呈し、バラックも「そうですね。失礼いたしました」と俺に頭を下げた。
「いや、いいよ。俺だって、嫌いな奴や人種だっているからな。バラックを悪者のようにして悪かった」
「いえ、私こそ言い過ぎました。しかし、花島殿はあまり人間らしくない。私を見ても心身共に動揺した素振りも見せない。先生と対等な関係を結べたという事も納得ですね」
貶した後に、バラックはとびきりの飴を俺に贈る。
バラックは悪い奴ではないのだろう。
しかし、まだ、俺はバラックを信用する事は出来なかった。
「で、お兄ちゃんはどうして先生って言われているの?」
そう。
本題はそれ。
「スコッツデール先生は私達の世界の起源を変えてしまう発見をしました」
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