異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。
第138話お母さん! 久々のシルフ
□ □ □
「シルフ! 大丈夫か!?」
「遅い! このグズ!」
ええ... ...。
俺、いいタイミングで来たと思ったんですけど... ...。
シルフは眉間にシワというシワを寄せるだけでは飽き足らず、スタッカートのように乱暴に言葉を切りながら歯切れ良く罵る。
一気に気持ちが落込み、足元を見るとシルフの前には服がはだけた状態の三十代くらいの口髭を生やしたダンディなオッサンが仰向けで気絶していた。
「シルフ... ...。女の子が寝込みを襲うのはイカンよ」
辛辣な表情で伝えるとシルフは不快感を露わにし、腹を殴打。
「___ぐへっ!」
「全く、ふざけるのは顔だけにしな... ...。ん? 花島? その背中にいる子って... ....」
腹を殴られ、前傾姿勢になったことで後ろに背負っていたミーレの姿が見えたからかシルフの言葉は段々と細くなっていく。
まあ、無理もない。
5属性魔法を使いこなし、なおかつ、転移魔法も使えるミーレがこの様なんだ。
このような反応にも頷ける。
「シルフ。早く、こいつに治療を... ...」
「__お父さん!!!」
路地の奥から少女が突然現れ、シルフの目の前に横たわるオッサンに抱き着いた。
少女は父親を探し回っていたのか、服は汚れ、ボロボロになった靴は本来の務めを放棄し、少女の足には血が滲む。
「... ...」
「... ...」
俺とシルフは珍しく、目線を合わせ、沈黙。
少女の父親を救うのが先か、ミーレを救うのが先か。
心の天秤は均衡を保っている。
「... ...花島。先にそっち... ...をやれ。あたしは後でい... ...」
ミーレは喘息患者のように不自然な呼吸音を交えながら、周囲から聞こえる悲鳴や建物が倒壊していく音に負けてしまうほどの、か細い声で少女の父親を優先するように指示。
「... ...わかったわ」
シルフは泣いている少女の頭にポンと手を乗せ「大丈夫よ。あたしが助ける」と父親のような母親のような口調で少女に離れるように諭す。
少女は垂れた鼻水と涙が混じったものを袖で拭い、父親とシルフから一歩退く。
「ses. eklvvs... ...」
シルフが少女の父親の腹部に手を当て、呪文のようなものを唱えると緑色の丸い発光体が周囲を飛び周り、父親の腹部に集まっていく。
これが治癒魔法というやつなのだろうか?
見ているこっちも心が和らぐ光景だった。
「あれ? これ、どこかで... ...」
水辺に集まる蛍のような発光体に何か見覚えがある。
以前、シルフにゴーレムマンションで治療してもらった時に見たのかもしれないがそれとも違う気がする... ...。
もっと前、そう、ずっと前にこれを見た記憶がある。
食い入るように治療しているシルフを見ていると俺の服の袖が小さな手によって引っ張られる。
「お兄さん... ...。ありがと」
少女は震える声で礼を言った。
一度、弱い感情に栓をしたにもかかわらず、言葉を発した事で栓が抜けてしまったのか少女の頬を涙が伝う。
「礼はこいつに言ってくれ」
「うん... ...。ありがと... ...」
少女は血まみれのミーレの手を気にすることなく握る。
血まみれの小さな手を見て、ゴーレム幼女を思い出す。
早く、あいつも見つけてあげないと... ...。
もしかしたら、この少女のように何処かで泣いているかもしれないし。
「お嬢ちゃん、俺は人を探しに行かなきゃいけない。このお姉ちゃんの手を握ってあげててくれ」
少女はコクリと頭を縦に振る。
そして、俺はガラス細工を扱うように慎重にミーレを背中から降ろし、地面に寝かせ、ゴーレム幼女を探す為に路地を後にした。
          
「シルフ! 大丈夫か!?」
「遅い! このグズ!」
ええ... ...。
俺、いいタイミングで来たと思ったんですけど... ...。
シルフは眉間にシワというシワを寄せるだけでは飽き足らず、スタッカートのように乱暴に言葉を切りながら歯切れ良く罵る。
一気に気持ちが落込み、足元を見るとシルフの前には服がはだけた状態の三十代くらいの口髭を生やしたダンディなオッサンが仰向けで気絶していた。
「シルフ... ...。女の子が寝込みを襲うのはイカンよ」
辛辣な表情で伝えるとシルフは不快感を露わにし、腹を殴打。
「___ぐへっ!」
「全く、ふざけるのは顔だけにしな... ...。ん? 花島? その背中にいる子って... ....」
腹を殴られ、前傾姿勢になったことで後ろに背負っていたミーレの姿が見えたからかシルフの言葉は段々と細くなっていく。
まあ、無理もない。
5属性魔法を使いこなし、なおかつ、転移魔法も使えるミーレがこの様なんだ。
このような反応にも頷ける。
「シルフ。早く、こいつに治療を... ...」
「__お父さん!!!」
路地の奥から少女が突然現れ、シルフの目の前に横たわるオッサンに抱き着いた。
少女は父親を探し回っていたのか、服は汚れ、ボロボロになった靴は本来の務めを放棄し、少女の足には血が滲む。
「... ...」
「... ...」
俺とシルフは珍しく、目線を合わせ、沈黙。
少女の父親を救うのが先か、ミーレを救うのが先か。
心の天秤は均衡を保っている。
「... ...花島。先にそっち... ...をやれ。あたしは後でい... ...」
ミーレは喘息患者のように不自然な呼吸音を交えながら、周囲から聞こえる悲鳴や建物が倒壊していく音に負けてしまうほどの、か細い声で少女の父親を優先するように指示。
「... ...わかったわ」
シルフは泣いている少女の頭にポンと手を乗せ「大丈夫よ。あたしが助ける」と父親のような母親のような口調で少女に離れるように諭す。
少女は垂れた鼻水と涙が混じったものを袖で拭い、父親とシルフから一歩退く。
「ses. eklvvs... ...」
シルフが少女の父親の腹部に手を当て、呪文のようなものを唱えると緑色の丸い発光体が周囲を飛び周り、父親の腹部に集まっていく。
これが治癒魔法というやつなのだろうか?
見ているこっちも心が和らぐ光景だった。
「あれ? これ、どこかで... ...」
水辺に集まる蛍のような発光体に何か見覚えがある。
以前、シルフにゴーレムマンションで治療してもらった時に見たのかもしれないがそれとも違う気がする... ...。
もっと前、そう、ずっと前にこれを見た記憶がある。
食い入るように治療しているシルフを見ていると俺の服の袖が小さな手によって引っ張られる。
「お兄さん... ...。ありがと」
少女は震える声で礼を言った。
一度、弱い感情に栓をしたにもかかわらず、言葉を発した事で栓が抜けてしまったのか少女の頬を涙が伝う。
「礼はこいつに言ってくれ」
「うん... ...。ありがと... ...」
少女は血まみれのミーレの手を気にすることなく握る。
血まみれの小さな手を見て、ゴーレム幼女を思い出す。
早く、あいつも見つけてあげないと... ...。
もしかしたら、この少女のように何処かで泣いているかもしれないし。
「お嬢ちゃん、俺は人を探しに行かなきゃいけない。このお姉ちゃんの手を握ってあげててくれ」
少女はコクリと頭を縦に振る。
そして、俺はガラス細工を扱うように慎重にミーレを背中から降ろし、地面に寝かせ、ゴーレム幼女を探す為に路地を後にした。
          
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