異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第137話お母さん! イ〇ークとホワイト!

「___イキャアアアアア!!!」


建築物が崩れ落ちる音と先程の化物の叫び声が街の中に響き渡る。
あの化物は一正体は?
何処から来た?
目的は?


重症のミーレを背中に背負い、考えるが何も浮かばず、このまま動かなければ考えるだけのあしとなってしまう。


「ミーレ! あと少しで到着だ!」


「... ...」


ミーレは先程からピクリともしない。
流れる血の量から推測すると、並みの人間であればとっくに致死量は迎えているはず。
個体差があるのかは不明だがミーレは魔女の中でも生命力は高い部類なのかもしれない。


「オロロロロ... ...」


なんだ?
どこからか喉を小刻みに鳴らすような嫌な音が聞こえて立ち止まった。


「オロロロロ... ...」


ずさりずさりと何かが這って近付いてくる。
辺りは瓦礫となった家々が大小の山を作っている為、声の主がどこからやってくるのか分からず、いたずらに恐怖心が煽られる。


「くそ! 新手か!?」


こっちはただのオッサンでかつ、手負いの魔法少女を一人背負っているんだぞ!
展開!
ちょっとは察してくれ!
そんな心の叫びは華麗にスルーされ、瓦礫の脇からゴツゴツした石を団子状に連ねた蛇のような生物が現れる。


「オロロロロ... ...」


「... ...イ〇ークだ」


モンスターボ〇ルが手元にあれば捕獲してやったのだが生憎、俺の道具箱にはティッシュに包まれた大量の鼻毛しか持ち合わせがない。
万事休す!
直立不動で天を見上げた。


「オロロロロ... ...」


岩石の蛇は周囲を蜷局を巻くようにグルグルと回る。
俺を締め上げるつもりなのか?
まあ、イ〇ークに殺されたなんて土産話を天国に持っていけば向こうでスター扱いされるに違いない。
ポケ◯ンは海外での人気も絶大でアプリのやつが出た時の外人の興奮の度合いは校庭に犬が侵入してきたイベントの比ではなかった。
恐らく、俺はワールドワイドな人気者になれるはず。


「オロロロロ... ...」


「ん? 殺さないのか?」


イ〇ークは周囲を一周しただけで何故か一切触れずにその場を通り過ぎる。


「あいつ、何をしたかったんだ?」


考えてもしょうがないか... ...。
気を取り直して、再び、歩みを進めた。


□ □ □


__城下__


「う... ...。ぅぅ... ...」
「お母さーん!!!」


うめき声と悲鳴が辺りを包み、城の足元には獣からの襲撃から逃げてきた人々が集まっていた。


「ここら辺は建物が割と綺麗だ... ...」


街の外側は化物によって破壊されていたが、ここは建物の損傷が少ない。
所々、外壁が崩れていたり、屋根が飛ばされてはいるが目立った大きな損壊箇所は見られなかった。


「花島!」


ホワイトは手を振りながらこちらに近付いてきた。
腹部には痛々しく血がにじんだ包帯を巻いている。


「ホワイト! 良かった! 無事だったか!」


「うん。何とか... ...。花島?! 後ろの人! 凄いケガ!」


「あ、ああ。ミーレだ」


ホワイトは口を覆い、息を吞む。


「... ...まさか、ゴーレムちゃんにやられたの?」


「あ? 違うぞ。変な化物にやられたんだ」


何故、ゴーレム幼女の名前がそこで出る?
そういえば、ゴーレム幼女はホワイトに城に連れて行くように頼んでいた。
一緒にいないことを推測すると、無事に城まで送り届けてくれたのか?


「... ...化物。それって... ...」


「うう。寒い... ..」


ミーレは悪寒を訴え、小刻みに背中を揺らす。


「ホワイト! シルフはどこにいる!?」


「あ、ああ。この先に____」


「__そうか!」


「花島!」


何かホワイトは俺に話したい様子だった。
しかし、今は何事よりもミーレの命の方が大切。
先ずはシルフと合流し、それから、ホワイトから話を聞けば良い。
ホワイトと別れ、ホワイトが指さした方向を走っているとまるで家々が迷路のように連なっている場所を通り掛かると... ...。


『花島! 早く来て!』


「シルフ!?」


頭の中で再び、シルフの声が聞こえた。
心なしか先程よりも焦った声で俺は勢い良く地面を蹴り、シルフの元へ急いだ。

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