異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第116話お母さん! 裏切り者はまだいました!

【コロッセオ内部】


「ちょっと! どこ触ってんのよ!」


「いてえ! おい! 大きな声出すなって!」


今、俺と天音はコロッセオ内部にあるトイレの天井から天井裏を通り、対戦内容が書いてある紙が置いてあるであろう部屋に侵入しようとしている。
エイデンは身体が大き過ぎるのでトイレの外で見張りをしてもらっている。
しっかし、天井裏からの侵入は忍者の専売特許だが思った以上に天音の進みが悪い。


「おい! 早くしろって! 忍者のくせにおっせえな!」


「うるさい! 色んな場所がつっかえるのよ!」


そういえば、天音の尻や胸は並の女性より豊かだったのを忘れていた。
こいつ、エロいゲームだったら確実に敵に捕まって凌辱されるキャラクターだよな。


いっぺん、尻でも触っておくか。
なに、この狭い状況だから「ごめん! 狭くて!」と謝れば済む話だ。


俺がそーっとプリンとした天音の尻に手を伸ばしていると急に天音が止まる。


「ん? どうした?」


「____しっ!」


天音は唾を吐くような声で俺を制止させる。
下を見ろ。
と言わんばかりに天音はダクトの下を指さす。


「おー。案外、すんなりと着いたな」


下を見ると控え室のような場所に数名の運営役員であろう人物が茶を飲みながら談笑している。
天音が指をツンツンし、その指先を目で追うと重厚な扉があり、恐らく、そこが試合内容が書かれている紙が入っている金庫のようなものだと想像出来た。


「で、どうする? 侵入出来る?」


数を数えると下には5名。
このまま、ダクトを突き破り、強行突破してもいいがそれでは後が面倒くさい。
俺が悩んでいると天音が自身の胸の谷間から緑色の筒のようなものを取り出した。


「... ...なにそれ? お前が自慰行為の時に使ってる大人の玩具?」


「違うわよ! 何、考えてんのよ!」


天音はアラサーだからシルフとかには言えない際どい下ネタを言う事が出来て少し嬉しい。
なんか、あれだよね。
アラサーくらいの人だったら下ネタ言ってもOKな風潮あるよね。


「で、それなに?」


「... ...まあ、見ていれば分かる」


天音はムスッとしながらも一言。
やっぱり、ババアはこういう所がいいよな。
シルフだったらぶん殴ってくるもん。


天音は筒に火を点け、それを下に投げ入れる。
おい。その火はどうやって点けた? お前、火遁かとんの術使えんのか?


「うわ! 煙だ!」
「なんだ!? 火事か!?」
「うわあ! 火事はもうやだ!」


下に居た人間は突然の煙に悲鳴を上げ、バタバタと倒れてしまった。
何となくだが、声を上げた三人の中に永沢君と同じ境遇の奴がいた気がした。


「花島! あなたも口を塞ぎ... ...。くか~」


「え!? お前が寝んの!?」


天音は俺に注意する途中に自身が煙を吸って眠ってしまった。
こいつ、本当に忍者やれてるのか心配になった。



□ □ □



「よっと!」


数分経ち、下が完全に静かになったのを確認し、俺は天音を抱きかかえて降りる。
下に着くと数名が綺麗に眠っていた。
証拠を残さない為に天音が使った筒をズボンのポケットに入れ、天音の頬を叩く。


「おいー! 起きろ!」


「zzz... ...」


「ダメだ。全然、起きねえ... ...」


とりあえず、天音も寝てるし、誰も周りにいないから俺は天音の胸を右手で揉みながら打開策を考える。


金庫を見るとダイヤル式。
実は中学二年生の時に世界を股にかける大泥棒に憧れてピッキングの練習をしたことがある。
こういうダイヤル式はダイヤルを回すと音で何となく開ける番号が分かるんだけど... ...。


「まあ、やってみるか」


数十年ぶりに行うピッキング。
果たして出来るのか自分でも疑心暗鬼であったが... ...。
____かちゃん。
と金庫から天使のラッパのような気持のいい音が鳴った。


「おー。やるじゃん、俺、王位継承戦になってから大活躍すぎるだろ」


もう、自画自賛だった。
でも、いいよね。
これは自画自賛で誰も怒らないだろ。
そう思ったのも束の間。
背中に冷たくて鋭い感触が... ...。


「おい。花島。黙って両手を挙げてこっちを見ろ」


言う通りにすると殺し屋のような鋭い眼光の天音。
右手には小刀を持ち、剣先は俺に向けられている。


「おいおい。冗談だろ? あ! ごめん! おっぱい揉んだから怒ってるのか!?」


「... ...揉んだのか」


あれ?
これは自爆した感じですかね?
ま、冗談はここまでですかね。


「天音。やっぱり、お前も裏切り者だったんだな」


「... ...それが何か?」


天音は悪びれた表情もせず、俺に向けた小刀の束をギリリと握り直した。



          

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