異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第91話お母さん! 僕っ子っていいね!

「ホワイトシーフ王国・城下町」


____パンパン!


王国の朝は意外かもしれないが朝礼から始まる。
これは王宮内でも家庭内でも仕事場でもそうだ。
特に今日の抱負を語るわけではないが「今日も楽しく頑張りましょう」的な事言ってから始まるのが通例で何故かそういう文化は俺がいた世界に通じていた。


本来であればこの国の復興の先頭に立つ、シルフが挨拶をするのだが彼女は未だに体調が優れず、代行して俺がその任を受けている。


相も変わらず、住人達は眠気眼を擦りながら定刻通りに国の中心地でもある噴水のある広場に集まってきた。


「よーし! 今日もケガなく頑張りましょう!」


特に「おー!」という返答もなく、「うー」だの「あー」だのやる気のない返事が帰って来る。
まあ、返事があるだけマシなのだが、本日の朝礼はいつもと些か違う事になった。


「で、今日は新入りがいるのでみんなに紹介したいと思う!」


この国で新入が入るなんて希だ。
ましてやこの復興の最中に加わるなんて誰も想像していなかったのだろうか、下を向いていた連中も壇上の上を見上げた。


「ヴァ二アル! 出てきてくれー」


大きな声で少し離れた路地の隅にいるヴァ二アルを呼ぶ。


「... ...」


しかし、ヴァ二アルからの返答はない。


「なんだ、あいつ、まだ、恥ずかしがっているのか。よし、ゴーレム幼女。ヴァ二アルを引っ張ってきてくれ」


隣にいる腰に手を当て、偉そうにしているゴーレム幼女に指示を出すと。


「なんで、お前の言う事聞かなきゃいけないみそ! そんなもの自分で行けば... ...」


ゴーレム幼女は命令に抵抗。
しかし、それは昨日の夜までの話、今日の朝からは違うというのを彼女は忘れているのだろう。


「ゴーレム幼女。昨日、俺を殺しかけたの忘れたか? ん?」


俺がゴーレム幼女に詰め寄るとバツが悪そうな顔をする。


「くっ! 分かったみそ! 一週間後、覚えてろみそ!」


「はいはい。一週間後ね」


俺はゴーレム幼女とある約束をした。
それは、一週間、俺の言う事を何でも聞くということだ。
昨日、シルフの前で俺を殺しかけたことで流石にシルフもゴーレム幼女に罰を与えないといけないと感じたのだろう。


最近、ゴーレム幼女が暴力的なこともシルフに伝えていたことだし、昨日の件が決定打となったようだ。


そして、シルフは俺に罰を任せると言い、現在に至る。


この世界で3本の指に入ると言われる伝説級の魔女を手駒に置けるというのは何と心地良いのだろう。
正に酒池肉林を手にした中国の武将のような気分で心が高揚していた。
よし。次はこいつを大人姿にしてエロイ命令を出してやるか。
と一週間後に確実に起きるであろう惨劇は考えないようにしていた。


「おい! ヴァ二アル! 恥ずかしがってないで早く出て来るみそ!」


「え... ...。本当に出て行かないとダメなのかい??」


「新入は皆に挨拶するのがここのルールみそ。誰も変に思わないから出てくるみそ」


「本当?? ゴーレムちゃんは変って言ったじゃないか」


「それは言葉の綾みそ。昨日は凄く変だと思ったけど、今は少ししか変だと思わないみそ」


「やっぱり、変だと思っているじゃないか!」


全く。
何を恥ずかしがっているんだ。
早く出てこい。

「ヴァ二アル! 早くしてくれ! 今日もやることは沢山あるんだ! お前の為に時間はそんなに割けないんだ!」


自身がウダウダしているせいで時間を浪費している事実を知ってか、ゴーレム幼女に手を取られ、ゆっくりと路地から姿を現したヴァ二アルに俺を含め、町の男たちは「おー!!!」っと歓声を上げ、鼻息を荒くした。


「ささ。ヴァ二アル。壇上に上がって皆に挨拶するんだ」


俺はにっこりとし、ヴァ二アルの手を取って壇上に上げ、ヴァ二アルは緊張した面持ちで挨拶をする。


「えっと... ...。ヴァ二アル・パスと申します。こう見えて、あのその、僕は男の子なんです。なので、女の子扱いはしないで下さい。よ・よろしくお願いします!」


透き通るような白い肌と金色のクセっ毛は変わらずにシルフよりもふくよかな胸部を頭を下げながら揺らす姿から”男の子”というには説得力がない。
まるで、その体型は子孫を残すために男受けするような体付きをしており、出る所は出て、へこんでいる所は凹んでいる女子なら誰もが憧れるスタイル。


そして、何よりもそのスタイルを存分に生かす為にゴーレム幼女に徹夜で作らせたこの小悪魔コスチュームは露出度が高めでマニア必見の姿となった。


「あれ? 大丈夫なのかい? 誰からも反応がないけど... ...。やっぱり、この格好変じゃないの!?」


変じゃない。
全然、変じゃないよ。
そして、衝撃から10秒ほど経ち、現実を理解した男たちは歓喜の声を上げた。


「うおー! か・かわいい!!!!」
「ぐうっ!!! だ・だめだ... ...。俺、過呼吸になりそう... ...。ハアハア」
「天使だ! 天使がこの街にも来てくれた!」


思った通りの反応。
俺もポーカーフェイスで腕組みをしているが、この輪の中に混ざって女神の降臨に狂喜乱舞したいくらいだ。


_____前夜。



□ □ □



ゴーレム幼女に喰らった一撃のせいで何故かヴァ二アルが女の子へとジョブチェンジするというウルトラCが炸裂。
ゴーレム幼女、曰く、光の玉は脅しで殺傷能力はないものだったらしい。
勿論、当初の発動条件では性別が変わるという効果もないものだった。
しかし、突然、シルフの存在を感じたゴーレム幼女の魔法律?
とかいうなんか、複雑な計算式のような物が変わり、魔法の性質が変化してしまったとのこと。


つまり、ゴーレム幼女も予期せぬ魔法が発動したということだ。


「で、これ、元に戻るんですよね??」


ヴァ二アルは青ざめた顔でゴーレム幼女に問いかけるが、事の重大さを認識していない彼女はお悔やみの言葉も無しに「そんなのないみそ」と淡い期待を打ち砕いた。


「え!!!! ウソでしょ!? これじゃあ、国に戻れないじゃないか!!! 何とかして! 無責任すぎるよ!!!」


泣きながらゴーレム幼女に掴みかかるが、「だから、何も出来ないみそ。性別が変わると何か問題があるのか?」と伊達に長生きしていないだけの倫理観を発揮するので何を言っても無駄だろう。


「どうしよう... ...。どうしよう... ...」


子犬のように震えるヴァ二アルを俺は本当に不謹慎だが「んがわいいい」と思ってしまう。
元々、女の子のような出で立ちをしており、女の子でもないのに女の子っぽかった彼もとい、彼女は正式な女の子となって一次元飛び越えた存在となった。


恐らくだが、シルフよりも腰が細く、綺麗な緑色の瞳をしており、胸は魔法少女よりも大きい。
そして、彼女達にはないアビリティとして”僕っ子属性”と”尻尾”があるという事実は俺の鼻の下を極限まで伸ばすには十分過ぎた。


「そう? とても可愛らしくて素敵じゃない」


シルフはニコリと笑い、それを見たヴァ二アルはまんざらでもない様子。


「でも、何か変じゃないかな?? 男が女の子になるなんておかしいよ~」


はあ... ...。
美女と美女が会話している姿は何とも癒される。
最近、男くさい連中としかつるんでなかったから久々の感覚であった。


「まあ、何はともあれ、落ち着くまでこの国にいなさいよ。元に戻す方法はその間に考えればいいから。ね?」


「そうみそ! 後で考えてやるから先ずは落ち着けみそ!」

調子が良いことを言うゴーレム幼女にシルフは睨みを利かせる。
流石に今回はシルフもご立腹なようで、それを察したゴーレム幼女も

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