異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。
第80話お母さん! 逃避行の結末!
【ゴーレムの森】
ゴーレムマンションを抜け、薄暗い森の中で虫のようにジッと固まっていた。
鳴り響いていたゴーレム幼女と白髪の幼子の戦闘する音は消え、月夜を愉しむかのようにとても静かだ。
どちらに軍配が上がったのか。
あの場に置いてきたシルフとホワイトの兄とホワイトは?
虫の音が大きくなる事と比例して、不安と自責の念はどんどんと強くなる。
物事から逃げた時はいつもこうだ。
胸が張り裂けそうで堪らない。
「... ...リズ? いるか?」
一人、暗い森の中、獣に襲われる恐怖も相まって、リズに話しかけるがリズからの返答は得られない。
まあ、それも当然か。
自分の心が押しつぶされそうだからとさみしさを紛らわすようにリズに話しかけるのは都合が良すぎる。
それは重々承知していたが、情けのない俺は情けない事をするしかない。
_______ガサッ!
茂みの奥から音がし、全身は一気にこわばる。
この森にはクマのような猛獣がうじゃうじゃいるので今の俺はただの人間でリズが助けてくれる保障もなく、そんな獣が出てくれば八つ裂きにされてしまうだろう。
_______ガサガサ... ...。
俺を恐怖で自殺させようとでも思っているのか、音の主は反応を愉しむかのように長い時間をかけて焦らす。
その間、俺は動けずにただ子犬のように震えることしか出来ない。
殺すなら早く殺してくれ_______!!
そう懇願する俺の前に現れたのは毛むくじゃらの体躯をした獣ではなく、手の平に乗っかるほどの緑色の服を着た小さなオジサン。
「... ...大丈夫?」
「______大丈夫オジサン!」
何と茂みの中から飛び出したのは雪山で消えてしまった大丈夫オジサン。
嬉しさからそんなに好きでもない、小さな不細工なオジサンに歩み寄り、手の平に乗せる。
「... ...大丈夫?」
「... ...大丈夫じゃないよ。俺、仲間を裏切った... ...」
「大丈夫。大丈夫」
「オジサン... ...」
根拠のない励ましの言葉は大嫌いな言葉。
だけど、今はそれに救われている。
俺は安心したのか、大丈夫オジサンをぬいぐるみのように抱えながらとりあえず眠りについた。
□ □ □
「... ...大丈夫?」
木の隙間から零れる朝日と小鳥のさえずる声とおっさんの声で目が覚める。
どれくらい寝ていたのか見当もつかなかったが、生きている事にまず感謝した。
そして、おもむろにゴーレムマンションに残してきた皆の事が気になり、フラフラになりながら微かに見える塔を目指す。
□ □ □
【ゴーレムマンション内部】
昨日、住民達が集まっていたエントランスホールはもぬけの殻で人の気配を感じることは出来ない。
相当、この場所に恨みがあったのだろうか、エントランスは原型が分からないほどにぐちゃぐちゃに破壊されている。
エントランスの階段を上って行くとシルフとホワイト・ホワイトの兄、ゴーレム幼女がいたであろう空間に辿り着く。
しかし、案の定であるがこの場所も破壊され、俺が出ていった時にはなかった飛び散った血液が壁の一面にまるで大きな筆でなぞったかのように付着している。
「... ...み、みんな」
当然にそこに四人の姿も白髪の幼子の姿もない。
ただ、あるだろうと覚悟していた誰かの亡骸がその場になかったことに安堵し、俺は息を吸おうと壁をくり抜いただけの窓に向かい、外を見ながら大きく深呼吸をする。
「... ...ふうっ」
そうだ。
何故かあの四人が負けたものだとばっかり考えていた。
あいつらは相当な手練れだ。
恐らく、重傷を負いながらも逃げ切ったに違いない。
いかんいかん。
あまりにも卑屈になり過ぎていた... ...。
______カアカア!
そんな弱気な人間を馬鹿にするかのようにカラスがこちらに向かって鳴いている。
エサだと思われたのか、森の奥から何匹かの群れになってそれはこちらに向かってくる。
「うわあ! あぶねえ!」
咄嗟に窓から離れ、部屋の奥まで下がるが、黒い群衆は中々、迫って来ない。
... ...何だ?
俺が標的じゃないのか?
カラスの群れは窓枠の辺りをしきりに飛び回わる。
それを見て、何故か背中に悪寒が走った。
「... ...うそだろ」
カラスは忌み嫌われる生き物で不幸の象徴でもあるが、魔女の使い魔という側面も持ち、それは多くの物語でも描かれている。
では、この場合でのカラスの役割とは... ...。
足を震わせながら、再び、窓に近付く。
人を恐れないカラスなのか近づいても逃げる事がない。
カラスの声が近付くにつれ、何か柔らかなものを突く鈍い音が聞こえる。
______心の準備をしておけば良かった。
窓から上手。
丁度、ホワイトシーフ王国がそこからは見えるのだが、そこからはそんなものは見えなかった。
そこにあったのは金色の髪の束を口にくわえたカラスと血まみれのゴーレム幼女の姿だった。
          
ゴーレムマンションを抜け、薄暗い森の中で虫のようにジッと固まっていた。
鳴り響いていたゴーレム幼女と白髪の幼子の戦闘する音は消え、月夜を愉しむかのようにとても静かだ。
どちらに軍配が上がったのか。
あの場に置いてきたシルフとホワイトの兄とホワイトは?
虫の音が大きくなる事と比例して、不安と自責の念はどんどんと強くなる。
物事から逃げた時はいつもこうだ。
胸が張り裂けそうで堪らない。
「... ...リズ? いるか?」
一人、暗い森の中、獣に襲われる恐怖も相まって、リズに話しかけるがリズからの返答は得られない。
まあ、それも当然か。
自分の心が押しつぶされそうだからとさみしさを紛らわすようにリズに話しかけるのは都合が良すぎる。
それは重々承知していたが、情けのない俺は情けない事をするしかない。
_______ガサッ!
茂みの奥から音がし、全身は一気にこわばる。
この森にはクマのような猛獣がうじゃうじゃいるので今の俺はただの人間でリズが助けてくれる保障もなく、そんな獣が出てくれば八つ裂きにされてしまうだろう。
_______ガサガサ... ...。
俺を恐怖で自殺させようとでも思っているのか、音の主は反応を愉しむかのように長い時間をかけて焦らす。
その間、俺は動けずにただ子犬のように震えることしか出来ない。
殺すなら早く殺してくれ_______!!
そう懇願する俺の前に現れたのは毛むくじゃらの体躯をした獣ではなく、手の平に乗っかるほどの緑色の服を着た小さなオジサン。
「... ...大丈夫?」
「______大丈夫オジサン!」
何と茂みの中から飛び出したのは雪山で消えてしまった大丈夫オジサン。
嬉しさからそんなに好きでもない、小さな不細工なオジサンに歩み寄り、手の平に乗せる。
「... ...大丈夫?」
「... ...大丈夫じゃないよ。俺、仲間を裏切った... ...」
「大丈夫。大丈夫」
「オジサン... ...」
根拠のない励ましの言葉は大嫌いな言葉。
だけど、今はそれに救われている。
俺は安心したのか、大丈夫オジサンをぬいぐるみのように抱えながらとりあえず眠りについた。
□ □ □
「... ...大丈夫?」
木の隙間から零れる朝日と小鳥のさえずる声とおっさんの声で目が覚める。
どれくらい寝ていたのか見当もつかなかったが、生きている事にまず感謝した。
そして、おもむろにゴーレムマンションに残してきた皆の事が気になり、フラフラになりながら微かに見える塔を目指す。
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【ゴーレムマンション内部】
昨日、住民達が集まっていたエントランスホールはもぬけの殻で人の気配を感じることは出来ない。
相当、この場所に恨みがあったのだろうか、エントランスは原型が分からないほどにぐちゃぐちゃに破壊されている。
エントランスの階段を上って行くとシルフとホワイト・ホワイトの兄、ゴーレム幼女がいたであろう空間に辿り着く。
しかし、案の定であるがこの場所も破壊され、俺が出ていった時にはなかった飛び散った血液が壁の一面にまるで大きな筆でなぞったかのように付着している。
「... ...み、みんな」
当然にそこに四人の姿も白髪の幼子の姿もない。
ただ、あるだろうと覚悟していた誰かの亡骸がその場になかったことに安堵し、俺は息を吸おうと壁をくり抜いただけの窓に向かい、外を見ながら大きく深呼吸をする。
「... ...ふうっ」
そうだ。
何故かあの四人が負けたものだとばっかり考えていた。
あいつらは相当な手練れだ。
恐らく、重傷を負いながらも逃げ切ったに違いない。
いかんいかん。
あまりにも卑屈になり過ぎていた... ...。
______カアカア!
そんな弱気な人間を馬鹿にするかのようにカラスがこちらに向かって鳴いている。
エサだと思われたのか、森の奥から何匹かの群れになってそれはこちらに向かってくる。
「うわあ! あぶねえ!」
咄嗟に窓から離れ、部屋の奥まで下がるが、黒い群衆は中々、迫って来ない。
... ...何だ?
俺が標的じゃないのか?
カラスの群れは窓枠の辺りをしきりに飛び回わる。
それを見て、何故か背中に悪寒が走った。
「... ...うそだろ」
カラスは忌み嫌われる生き物で不幸の象徴でもあるが、魔女の使い魔という側面も持ち、それは多くの物語でも描かれている。
では、この場合でのカラスの役割とは... ...。
足を震わせながら、再び、窓に近付く。
人を恐れないカラスなのか近づいても逃げる事がない。
カラスの声が近付くにつれ、何か柔らかなものを突く鈍い音が聞こえる。
______心の準備をしておけば良かった。
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