異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。
第74話お母さん! 様々な葛藤!
俺のいた世界では”最強”であるという事は漠然とし過ぎていて答えが複数あるようなものだった。
最強は何?
という問いに対して場所や時間や規模などを考慮してしまう。
いくら喧嘩が強くても一発の銃弾で殺されてしまうし、銃を複数持っていても戦車や戦闘機には勝てないし、戦車や戦闘機を持っていたとしても核爆弾のようなもので吹き飛ばされるし、核爆弾を使用するという事は世界の終わり、行く行くはそれを使用した本人にも起こりうる最悪の結末だ。
だが、この世界では明確な最強があった。
______魔法。
これが世界の強さの一つの指標であり全て。
それの頂点に立つ”魔女という種族は最強”なのだと... ...。
そう、それがこの世界の理であった。
だが、俺は違う。
この世界の常識は全くもって当てはまらない。
むしろ、この世界で最強であるという事は俺の前では弱点になりかねない。
それは何故か。
最強だった奴は誰かに倒されるという事を知らない。
魔女の呪いという縛りに無関係な俺はレミーの胸を揉みしだくこともぶん殴ることも出来る。
無知の知という言葉があるがまさかそれを体現するような状況が現実に訪れるとは... ...。
『この世界で魔法を学ばなかったお前は二人にとっては天敵だ。だが、あくまでそれは脅威という存在というだけでミーレとレミーが本気で来ればひとたまりもないのは変わらないよ』
勝利の手綱を手繰り寄せにかかっていた俺の握力を削るかのようにリズは勝てる見込みがないと言う。
魔法について知り尽くし、二人を自身が死んでからも尚、見守ってきた功労者の発言は間違ってないのか無知な俺にでも分かるくらいにミーレとレミーの雰囲気が一変した。
「レミー。遊びもそろそろ終わりにしよう」
「そうね。ミーレ。遊び過ぎたね」
二人は自身の持っていた便所の棒をバツ印を作るかのように重ね、今まで詠唱してこなかった呪文を言葉を合わせながらゆっくりと唱え始める。
『来るよ。あいつらの本気が... ...』
リズの発言の直後、ミーレとレミーは声を合わせ。
「プログレス・ラジャスト!」
と何やら必殺技のような言葉を発するので俺は瞬時に防御姿勢をとったのだが、炎の玉も氷塊も飛んでくる事がなく、不審に思い、二人のいた方向に目を向けるがそこに二人の姿はない。
「... ...いない」
それを認識して、口にした瞬間に頭の中でリズの悲鳴のような警告が響き。
『花島!!!! どこを見てる!!! 後ろ!!!!』
「は?」
振り返る間もなく、背中に今まで味わったことのないような衝撃。
まるで、ダンプに突っ込まれたのかと思う程に重たい一撃が全身に広がり、そのまま吹っ飛ばされる。
「カハッ!」
初めて口から血を吐きだしてしまった。
全身が痛い。
少し身体を動かしただけで痛みが走り、腕も足も動かすことが出来ない。
リズが防御魔法を発動していなければ俺の四肢はバラバラに弾け飛んでいただろう。
瓦礫のベッドで俺が寝転んでいると白髪で右目が緑、左目が赤色で便所の棒を両手に持った、この世のものとは思えない美しい幼女が俺を見て微笑んでいる。
歳にして8歳くらいの幼子は心なしか追憶の中でみたミーレとレミーにどことなく似ていた。
『そりゃあ、そうだよ。あいつはミーレとレミーの”本当の姿”なんだからね』
「... ...ハアハア」
本当の姿?
では、今までの二人は偽りだった?
しかし、どうしてそんな偽りの仮面を被っていたのか。
「この姿を人に見られるのは何百年ぶりかしらー。どう? 美しいでしょー?」
右目が赤、左目が金色の白と黒のドレスを身に纏った白髪の幼子はモデルのようにその場で一回転してみせ、まるで自分の体を商品のように見せびらかす。
「... ...お前は誰だ?」
俺はあえて白髪の幼子の問いには答えなかった。
自身の姿に対する褒め言葉が欲しかったのか、白髪の幼子は少しむくれた顔をするが、圧倒的な力の差を保持した自身が虫けらのような俺に対して怒りの感情を向けるのは違う気がすると思ったのか、質問に回答をする。
「... ...まあ、いいわー。私はミーレとレミーであるけど、二人じゃないわー。彼女達が光であれば私は闇。そうね。私の事は”ブラック”とでも呼んでくれればいいわー」
ブラック... ...。
目の前にいる幼子は今の彼女の容姿には極めて不適格な呼び名を口にした。
まあ、何にせよ。
何にせよだが、痛みで意識が吹っ飛びそうだ。
『花島!!!! 起きろ! 殺される!!!!』
「... ...ハアハア」
こんな状況で寝たいから横になっている奴などいない。
立ち上がろうにも起き上がれないのだ。
全身に広がる痛みは感覚を鈍らせ、目の前に迫る絶対的な強者の存在はあれ程までに二人を救いたいと思っていた俺の信念に靄をかける。
... ...ここで死ぬのか。
諦めの心を生み出すには十分な程の状況と材料が集まった。
『あきらめるな! 二人を救えるのはお前だけなんだぞ!』
胸倉を掴むように語りかけるリズの声よりも自身の闇が己を包もうとしている。
幼子に興味はないが、圧倒的な力を持った幼子に蹂躙されるというのはドMな俺にとって癖になることに違いない。
現に俺の下腹部は先程からずっと起ちっぱなし。
肉体の崩壊を悟った遺伝子は子孫を残そうと必死なんだろう。
身体は生きる事を望んでいるのに頭はもう死を受け入れている。
一人で大きな湖で浮かび、何も聞こえない世界を俺は天国だと錯覚してしまっている。
「ではでは、花島君。幼女の鉄槌で逝きたまえ」
幼女に殺される事を夢見ている人間にとっては今の言葉は昇天してしまうほど。
まあ、そんな死に方も悪くはない。
俺らしい死に方なのかもしれないと幼子を受け入れるかのようにフッと目を閉じ______。
「花島!!!! 助けに来たみそ!!!!」
次の瞬間、マンションの床が大きく揺れ、荒れ狂う波のように隆起し、それは岩石の塊となって俺の上に乗り見下す白髪の幼子だけを包み込む。
何が起きたのか一瞬、理解が出来ず、ぼんやりとした世界で見たものは俺の身体にそっと手を当て「頑張ったね」と今まで見た事のないような優しい微笑みを見せる、エルフの王女の姿がそこにはあった。
最強は何?
という問いに対して場所や時間や規模などを考慮してしまう。
いくら喧嘩が強くても一発の銃弾で殺されてしまうし、銃を複数持っていても戦車や戦闘機には勝てないし、戦車や戦闘機を持っていたとしても核爆弾のようなもので吹き飛ばされるし、核爆弾を使用するという事は世界の終わり、行く行くはそれを使用した本人にも起こりうる最悪の結末だ。
だが、この世界では明確な最強があった。
______魔法。
これが世界の強さの一つの指標であり全て。
それの頂点に立つ”魔女という種族は最強”なのだと... ...。
そう、それがこの世界の理であった。
だが、俺は違う。
この世界の常識は全くもって当てはまらない。
むしろ、この世界で最強であるという事は俺の前では弱点になりかねない。
それは何故か。
最強だった奴は誰かに倒されるという事を知らない。
魔女の呪いという縛りに無関係な俺はレミーの胸を揉みしだくこともぶん殴ることも出来る。
無知の知という言葉があるがまさかそれを体現するような状況が現実に訪れるとは... ...。
『この世界で魔法を学ばなかったお前は二人にとっては天敵だ。だが、あくまでそれは脅威という存在というだけでミーレとレミーが本気で来ればひとたまりもないのは変わらないよ』
勝利の手綱を手繰り寄せにかかっていた俺の握力を削るかのようにリズは勝てる見込みがないと言う。
魔法について知り尽くし、二人を自身が死んでからも尚、見守ってきた功労者の発言は間違ってないのか無知な俺にでも分かるくらいにミーレとレミーの雰囲気が一変した。
「レミー。遊びもそろそろ終わりにしよう」
「そうね。ミーレ。遊び過ぎたね」
二人は自身の持っていた便所の棒をバツ印を作るかのように重ね、今まで詠唱してこなかった呪文を言葉を合わせながらゆっくりと唱え始める。
『来るよ。あいつらの本気が... ...』
リズの発言の直後、ミーレとレミーは声を合わせ。
「プログレス・ラジャスト!」
と何やら必殺技のような言葉を発するので俺は瞬時に防御姿勢をとったのだが、炎の玉も氷塊も飛んでくる事がなく、不審に思い、二人のいた方向に目を向けるがそこに二人の姿はない。
「... ...いない」
それを認識して、口にした瞬間に頭の中でリズの悲鳴のような警告が響き。
『花島!!!! どこを見てる!!! 後ろ!!!!』
「は?」
振り返る間もなく、背中に今まで味わったことのないような衝撃。
まるで、ダンプに突っ込まれたのかと思う程に重たい一撃が全身に広がり、そのまま吹っ飛ばされる。
「カハッ!」
初めて口から血を吐きだしてしまった。
全身が痛い。
少し身体を動かしただけで痛みが走り、腕も足も動かすことが出来ない。
リズが防御魔法を発動していなければ俺の四肢はバラバラに弾け飛んでいただろう。
瓦礫のベッドで俺が寝転んでいると白髪で右目が緑、左目が赤色で便所の棒を両手に持った、この世のものとは思えない美しい幼女が俺を見て微笑んでいる。
歳にして8歳くらいの幼子は心なしか追憶の中でみたミーレとレミーにどことなく似ていた。
『そりゃあ、そうだよ。あいつはミーレとレミーの”本当の姿”なんだからね』
「... ...ハアハア」
本当の姿?
では、今までの二人は偽りだった?
しかし、どうしてそんな偽りの仮面を被っていたのか。
「この姿を人に見られるのは何百年ぶりかしらー。どう? 美しいでしょー?」
右目が赤、左目が金色の白と黒のドレスを身に纏った白髪の幼子はモデルのようにその場で一回転してみせ、まるで自分の体を商品のように見せびらかす。
「... ...お前は誰だ?」
俺はあえて白髪の幼子の問いには答えなかった。
自身の姿に対する褒め言葉が欲しかったのか、白髪の幼子は少しむくれた顔をするが、圧倒的な力の差を保持した自身が虫けらのような俺に対して怒りの感情を向けるのは違う気がすると思ったのか、質問に回答をする。
「... ...まあ、いいわー。私はミーレとレミーであるけど、二人じゃないわー。彼女達が光であれば私は闇。そうね。私の事は”ブラック”とでも呼んでくれればいいわー」
ブラック... ...。
目の前にいる幼子は今の彼女の容姿には極めて不適格な呼び名を口にした。
まあ、何にせよ。
何にせよだが、痛みで意識が吹っ飛びそうだ。
『花島!!!! 起きろ! 殺される!!!!』
「... ...ハアハア」
こんな状況で寝たいから横になっている奴などいない。
立ち上がろうにも起き上がれないのだ。
全身に広がる痛みは感覚を鈍らせ、目の前に迫る絶対的な強者の存在はあれ程までに二人を救いたいと思っていた俺の信念に靄をかける。
... ...ここで死ぬのか。
諦めの心を生み出すには十分な程の状況と材料が集まった。
『あきらめるな! 二人を救えるのはお前だけなんだぞ!』
胸倉を掴むように語りかけるリズの声よりも自身の闇が己を包もうとしている。
幼子に興味はないが、圧倒的な力を持った幼子に蹂躙されるというのはドMな俺にとって癖になることに違いない。
現に俺の下腹部は先程からずっと起ちっぱなし。
肉体の崩壊を悟った遺伝子は子孫を残そうと必死なんだろう。
身体は生きる事を望んでいるのに頭はもう死を受け入れている。
一人で大きな湖で浮かび、何も聞こえない世界を俺は天国だと錯覚してしまっている。
「ではでは、花島君。幼女の鉄槌で逝きたまえ」
幼女に殺される事を夢見ている人間にとっては今の言葉は昇天してしまうほど。
まあ、そんな死に方も悪くはない。
俺らしい死に方なのかもしれないと幼子を受け入れるかのようにフッと目を閉じ______。
「花島!!!! 助けに来たみそ!!!!」
次の瞬間、マンションの床が大きく揺れ、荒れ狂う波のように隆起し、それは岩石の塊となって俺の上に乗り見下す白髪の幼子だけを包み込む。
何が起きたのか一瞬、理解が出来ず、ぼんやりとした世界で見たものは俺の身体にそっと手を当て「頑張ったね」と今まで見た事のないような優しい微笑みを見せる、エルフの王女の姿がそこにはあった。
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