異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第70話お母さん! 魔法少女達の過去⑪

魔女という種族はこの世界には存在しない。
人間やエルフなどの知性を持った生物が修行をして魔女という位になるのが一般的な流れ。
ただ、それには例外も存在する。

ミーレやレミーがいい例だ。
ミーレやレミーは修行もせずにリズが放つ魔法を目視しただけでそれを模倣してみせ、リズが何十年もの年月を費やしてその魔法を体得したというのに双子の少女はまるでスープを飲むようにいとも簡単にそれをやって見せた。

魔女を模倣する事は人間やエルフのような知性を持っていれば可能だが、それはあくまで偽物に過ぎない。
本物の魔女という存在は細胞の一つ一つに魔力マナが注入されている、まるで、魔力マナの塊に魂が宿るような並々ならぬ力を感じる。
リズはミーレやレミーに会った瞬間に違和感としてそれを感じていたに違いない。


しかし、リズも本物の魔女に会ったことがなくその違和感がどういうものか理解しておらず、「魔法を教えて」と懇願する無垢な少女達にまるで料理を教えるような感覚で教えてしまう。
それがこの状況になった原因である。



◆ ◆ ◆



リズの腕の中には変わり果てたミーレの姿。辛うじて息はあるがいつ事切れてもおかしくない。
それを見守るレミーも焦燥した様子でとても戦える状況ではない。
ミーレやレミーに感じた違和感と同じものを黒煙の中から出て来る兵士にもリズは感じていた。

それはつまり______。


「あいつはあんたらと同じ本物の魔女に違いない。このままでは三人とも殺されてしまう。いいかい? レミー。あんたらはどんな事があっても生きるんだよ」


リズはミーレやレミーを囲うように素早く魔方陣を描き、最上級魔術とされている転移魔法の一節を詠唱し始める。


「リズ! 待って! 私も戦う!!!」


ボロボロになった姿で顔を涙と汗でぐちゃぐちゃにしたレミーはリズを止めようとするが、リズは詠唱を止めることもレミーの言葉に対して返答することもない。
国で五本の指に入る実力の魔女と本物の魔女であるレミーで共闘すればそれなりに善戦したに違いない。


しかし、手負いのミーレを庇いながら戦闘するにはあまりに不利。
リズはどうしても二人を守りたかった。
なので、自らこの地獄に本物の魔女である兵士と残ることを決めた。


「じゃあ、元気で。風邪ひくんじゃないよ......」


詠唱を終え、魔方陣の周りに光の玉が舞う中、リズの額を光の光線が貫く。
魔方陣は魔法結界が張られており、魔方陣の中にいるレミーにその光線は当たらず光線は弾かれ、リズの額から飛び出た雫がまるで雨水が窓ガラスに当たるようにレミーの目の前で弾けて飛んだ。


「アアアア!!! リズ!!!」


親のように慕っていたリズの変わり果てた姿に獣のように絶叫することしか出来ない。
ミーレの負傷とリズの死。
立て続けに世界の終わりのような出来事をこの短時間で味わうことになった幼き魔女の髪はまるで目の前に横たわる老婆の髪のように真っ白く、色が抜ける。
薄れる意識の中でレミーの眼光は最悪である兵士に向かい、それに気付いた兵士は意識のハッキリとしないレミーにも分かるように道化のようにわざとらしく口元を大きく開けて。


「ひ・と・ご・ろ・し」


それをレミーが見た瞬間、転移は行われ、ミーレとレミーはその場から姿を消した。
目の前にリズの亡骸と憎しみをその場に残して。


◆ ◆ ◆


          

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