異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第51話お母さん! マンドラゴラと土喰いの巨人!

______裏山______


朝が来るのを待ち、ホワイトの兄が取ったと言っていた裏山に四人で来ている。
俺・ホワイト・兄・大丈夫おじさん。
もう、大丈夫おじさんが隣にいる事が当たり前となっていた。


それは生まれた時から自分の股にイチモツが、ぶら下がっているくらい自然に... ...。


縦に一列に並んで歩き、先頭をホワイトの兄が務めるので、雪が踏みならされ、歩く事に負担は感じなかった。
裏山というからすぐに目的地に到着すると思ったら、甘かった。
既に二時間近く歩いている。


「はあはあ。ホワイト? まだ、着かないのか?」


「あと少しだから、頑張って!」


ホワイトは寒さで頬を赤らめながら、拳を突き上げ野球部のマネージャーのように鼓舞する。
大丈夫おじさんも「大丈夫」と言っている。


「お・おい! も・もう、着くぞ!」


等間隔に並んだ針葉樹の雪深い林を抜けると、不自然なくらいに楕円形の広場についた。
半径50m規模で木が生えていない。
まるで、人工的に作られた空間のようだ。


ここは、宗教的に神聖な場所なのかもしれない... ...。
と何故か直感した。


「ホワイト、マンドラゴラは?」


「うーん。この辺に埋まっていると思うんだけど」


ホワイトは雑に雪を払い、地表を探す。
少しして、マンドラゴラの芽を発見した。


マンドラゴラの芽は緑色で、地中から可愛らしく、ぴょこんと飛び出している。
あれだな。
タケノコに似てる。


ホワイトはその芽を掴むと引き抜こうとする。
俺は慌てて、それを制止した。


「おいおいおい!!! ちょっと待て!!!」


「え!? どうしたの!? 抜くんじゃないの!?」


「いや、抜くけど! マンドラゴラって引き抜いた時に大きな声出して、それがうるさいんだろ!?」


「え? ああ、うん。まあ」


「ほら! 俺は人間だから、それ聞いたら耳爆発するかもしれないだろ!」


「いや、大丈夫だよ。大きな声って言っても、そんなに大きな声じゃないよ。個体によって、声の大きさはバラバラだし、人が死ぬような声出すマンドラゴラはもう少し暖かくならないと取れないよ」


「... ...そうか」


完全に納得した訳ではないが、ホワイトがこんなに饒舌に話すのは初めてだ。
さすが、地元民と言ったところか。
まあ、信頼してみるかな。


俺が黙るとホワイトはマンドラゴラを引き抜く。


最初に顔の部分が出て、おなか、足のような部分が現れる。
その姿は大根に顔がついたような奇妙なものだ。
そして、股に金玉みたいなものがぶら下がっていた。


予想に反して、確かに声は小さなものであった。


「ぴーぴーぴー!!!」


「あ、なんか、大丈夫だ。むしろ、小鳥みたいなこえで... ...」


俺が予想以上にさえずるマンドラゴラに愛おしさの感情が芽生え始めていた時、ホワイトが無情にもマンドラゴラの股にぶら下がっていた金玉を「ぶちっ!」と引き抜き。


「いんぎゃああああ!!! いたあああああ!!!!!」


「うるさー!!!! とめてー!!!!」


マンドラゴラの断末魔で俺の悲鳴は簡単に掻き消された。
鳥たちが一斉に木々から飛び、小動物達は森の奥までにげていく。
耳... ...。耳が... ...。


「あ、うるさかった?」


ホワイトは、叫び続けるマンドラゴラを元の地中に戻した。

まだ、耳がキーンとする... ...。
パチンコ屋でも平然と眠る事が出来るこの俺でも耳から血が出そうだった... ...。
除夜の鐘を超至近距離で聞いてるようなもんだ。


鼓膜を取り換える事が出来るなら、すぐにでも取り換えたい。
ずっと耳に残りそうだ。


「ホワイトは平気なのか?」


「うん。少し耳がキーンとするけどね」


「マンドラゴラは元の土に戻すと叫ぶの止めるんだな」


「いや、この個体はそれで、泣き止んだけど、泣き止まないやつもあるよ」


OH... ...。泣き止んでくれて良かったよ。BABY。
ホワイトはマンドラゴラの金玉のようなものを指で摘まんでいる。
その光景をみて、俺は自然と股を閉じた。


「それ、マンドラゴラの金玉か?」


「は・はあ!? げ・下品な事言わないでよ! これは、マンドラゴラのエキスが入った袋だから!」


いや、もう、金玉じゃん。
なんか、エキス袋とか言った方が下品だよ... ...。
余計なことを言うと、ややこしくなくから止めた。


そういや、ホワイトの兄貴は何をやってるんだ?
周囲を見渡すと、少し離れた場所に座っている。
よく雪の上に直接座れるわ... ...。


近づいていくと、雪を払い、土の部分を表し、その土を両手ですくう。
それの匂いを嗅いでいる。
何してるんだ? と思った瞬間、ホワイトの兄貴はそれを口に入れた。


うわ~。
ボリボリと土食ってるよ... ...。
俺は若干引き気味だった。


「ホワイト? お前の兄貴、土食うんだな... ...」


「あー。ビックリしたよね? あれね、別に食べてる訳じゃないんだよ。お兄ちゃんの能力は”対話”なの。普段はその物に触れるだけで、その物がどういう物質で出来ているかとか分かるんだよ。それが、危険か危険じゃないとかもね。何か色々と分かるみたい」


「そりゃ、難儀な能力だな... ...」


物に触れただけで、それの全てとは言わずとも大方の事は分かってしまう。
それは人に対しても有効なのだろう... ...。
真っ白い空間でボリボリと音を立てながら、土を食う巨人の兄。
それを見る巨人の妹。
そして、俺。


あれ? なんか、少し面白いぞ。
何が面白いの? とツッコミを入れられると答えられない。

何もない雪原で胡坐をかきながら土を食う巨人。
それを無言で見守る巨人と人間。
音のない空間に響く、土を食う音。


「ふふふ」


「え? 何で笑っているの?」


「あ・いや、何でもない」


ホワイトは不思議そうに俺を見た。
まあ、俺が、逆の立場でもそんな目をすると思うよ。
でもね。みんなもたまにあるでしょ?
自分しか笑ってない状況。
あれね。今、それ。


「ぬ! わ・わかったぞ!!!」


ボリボリと土を食っていた、ホワイトの兄が大きな声を出して立ち上がり、こちらを振り向いた。
口の周りが泥だらけで、「うわ~。きたねえ... ...」と思った。

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