異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。
第43話お母さん! シルフと対話!
___ホワイトシーフ王国シルフの部屋___
バルコニーに立つシルフは、大人の姿に戻っていて、月明かりに照らされる金髪と透き通るような白い肌はこの世のものとは思えない優雅さを醸し出す。
バルコニーの窓を開けると、ふわりと冷たい風が吹き、じゃれ合うように白いレースのカーテンをなびかせる。
「あなたにしては中々の名案だったわね。褒めてあげるわ」
振り向きもせずに窓を開けたのが俺と気付いたのは、魔法を使ったわけでもなんでもない。
俺の行動パターンを熟知していたのか、親密度が知らない間に増していたからか。
女性にモテたためしがない俺にとって、後者の考えが出てきたのは女性にもてようとして少女漫画を読み漁っていた時期に培った知識があったからだ。
それにしても、シルフの女王様気質は筋金入りだ。『褒めてあげるわ』なんて一般の女性は中々言わないだろう。
そんな事を考えながら「将来が楽しみだ」と少しM気質がある俺は胸がドキドキ... ...。
いかんいかん!
と襟と口元を正す。
「その事なんだが、や・やっぱり、た・建物を縦に伸ばすっていうのはダメか?」
恐る恐るだが、言いたい事は伝えた。
緊張から額に汗を掻き、口の中の水分が一気になくなる。
はあ~。
27歳にもなっても人に自分の意見を言う時にドモってしまうのはいかんな。
と弱い自分に反省しきりだ。
「ん? 別にいいわよ」
「... ...へ?」
おや? 予想していた反応と随分違う。
予想では「はあ!? 何を今更言ってんのよ!?」などと罵声を浴びると思っていたのだが... ...。
「本当にいいのか?」
と口に出すのにそう時間はかからなかった。
シルフはため息にも似た、いや、ため息とは違う長いブレスを山から降りる冷たい風に乗せるように吐いた。
「ゴーレムが私の意見に賛同していないのは分かっていたの。ただ、私がそれを問いただした所で彼女は理由を語らないでしょう?」
「そうとも限らないだろ」
「あなた、嘘が下手ね」
「... ...ごめん。嘘下手で」
「すぐに謝らないでイライラするから」
「... ...ごめん」
二回目の反省にシルフは眉をひそめる。
「謝んなって言ったろ!」という怒りの感情ではなく、「気持ち悪いなこいつ」という嫌悪感であるが。
マジマジとシルフは俺の顔を見ると気持ち悪いという思いは消えたのか、表情が段々と柔らかくなり、しまいには「ぷっ」と吹き出してしまった。
「あははは! 気持ち悪い! あなた、気持ち悪いわ!」
「... ...」
いや、やはり、気持ち悪いようだ。
シルフは腹を抱えて笑う。薄いピンク色のランジェリーに包まれた胸は谷間を作り、こちらに「こんにちは」とあいさつをするようにも見えた。
しかも、腹を両手で抱えているので胸は自然と強調され、自然の偉大さを目の当たりにした。
俺はディスカバリーチャンネルに夢中になる知識人のように、そのクレバスの深い溝に釘付けとなる。
いやいや、冷静になれ、花島!
お前はバカにされてんだぞ!
気持ち悪い言われてんだぞ! 怒れ! 怒れ! 怒れ!
我に返った。
だが、谷間から目を離す事が出来なかった。
男とは悲しい生き物だとつくづく実感させられる。
「ふう~。こんなに笑ったのは久しぶりだわ~。ゴーレムがあたしじゃなくて、あなたに心を開く理由が少しは分かった気がするわ」
「褒められてるのか、けなされてるのか良く分からんな」
「あら? 一応、褒めたつもりだけど?」
「そうなのか」
シルフは笑って元気になったのか、心なしか先程よりも声のトーンが高くなった気がする。
「ほら、あたしって王女でしょ? そうでなくても、高貴なオーラが滲み出ちゃうんだから、普通の人は萎縮しちゃうのよ。やっぱり」
「は? こいつどんだけお高いんだよ」と思うが、まあ、普通の人は萎縮するという所は合ってる。
「王女ってやつは民衆のそうゆう気持ちとか無頓着なんだろうな」と勝手に思っていたが、そうでもなさそうだ。
ただ、それが分かってしまうという事は良い事ばかりでは決してないはずだ。
いや、むしろ、悪い事の方が多いのではないか。
周りの人間はシルフに対して、否定的な事は言わないし、ちやほやするだろう。
だが、その裏には様々な感情が入り混じり、それは人を疑心暗鬼にさせ、他人を信じられなくさせる行為でもある。
しかし、その事で「シルフが他人を信じれなくなった」と大袈裟な展開にはならないだろう。
数日間、シルフと過ごして「意志の強い女性」という印象を抱いていたからだ。
それを体現するかのように町の住人に批判された時だって泣かなかった。
まあ、キレて町は破壊したのは目を瞑って欲しいのだけれども。
そこは評価してやるよ。
と何故か俺は上から目線であった。
「やっぱり、あなたを国の再建に協力させたのは正解だったかもね」
「まだ、始まってもないんだけど... ...」
俺が的確なツッコミを入れるとシルフの頬は赤面し。
「うるさい! 褒めてあげてるんだから、素直に受けなさい!」
「ごめん」
「だっ! かっ! らっ! 謝るな!」
「ああ!!! いったああ~いい!!!」
シルフは爪を立て俺の左肩を凄まじい力で抓った。
抓りという技は地味に痛い。
俺は年甲斐もなく、オネエのような悲鳴を上げてしまった。
俺の声を遠吠えと勘違いしたのか山の方でオオカミが鳴いた。
□ □ □
◆ ◆ ◆
______山中______
ピッピッピッピッ... ...。
と静寂な森の中には似つかない機械音が響いている。
複数のオオカミの群れが走り回り、我が物顔で新雪を踏み荒らす森には人が最近、足を踏み入れた形跡がなく、手付かずの森林が広がっていた。
一匹のオオカミが機械音に気付き立ち止まり、耳を動かし、群れを外れ、音の方に近づく。
近づくにつれ、音が大きくなり、オオカミは5mほどある氷の柱の前で止まる。
オオカミの接近により、機械音のリズムが乱れる事はなく、一定の音とリズムを変わらず刻む。
氷の柱を見たオオカミはただの氷の柱に威圧感を感じ、何もせずにその場をゆっくりと立ち去った。
ピッピッピッ______。
規則正しい機械音は変わらずに鳴り続けている。
バルコニーに立つシルフは、大人の姿に戻っていて、月明かりに照らされる金髪と透き通るような白い肌はこの世のものとは思えない優雅さを醸し出す。
バルコニーの窓を開けると、ふわりと冷たい風が吹き、じゃれ合うように白いレースのカーテンをなびかせる。
「あなたにしては中々の名案だったわね。褒めてあげるわ」
振り向きもせずに窓を開けたのが俺と気付いたのは、魔法を使ったわけでもなんでもない。
俺の行動パターンを熟知していたのか、親密度が知らない間に増していたからか。
女性にモテたためしがない俺にとって、後者の考えが出てきたのは女性にもてようとして少女漫画を読み漁っていた時期に培った知識があったからだ。
それにしても、シルフの女王様気質は筋金入りだ。『褒めてあげるわ』なんて一般の女性は中々言わないだろう。
そんな事を考えながら「将来が楽しみだ」と少しM気質がある俺は胸がドキドキ... ...。
いかんいかん!
と襟と口元を正す。
「その事なんだが、や・やっぱり、た・建物を縦に伸ばすっていうのはダメか?」
恐る恐るだが、言いたい事は伝えた。
緊張から額に汗を掻き、口の中の水分が一気になくなる。
はあ~。
27歳にもなっても人に自分の意見を言う時にドモってしまうのはいかんな。
と弱い自分に反省しきりだ。
「ん? 別にいいわよ」
「... ...へ?」
おや? 予想していた反応と随分違う。
予想では「はあ!? 何を今更言ってんのよ!?」などと罵声を浴びると思っていたのだが... ...。
「本当にいいのか?」
と口に出すのにそう時間はかからなかった。
シルフはため息にも似た、いや、ため息とは違う長いブレスを山から降りる冷たい風に乗せるように吐いた。
「ゴーレムが私の意見に賛同していないのは分かっていたの。ただ、私がそれを問いただした所で彼女は理由を語らないでしょう?」
「そうとも限らないだろ」
「あなた、嘘が下手ね」
「... ...ごめん。嘘下手で」
「すぐに謝らないでイライラするから」
「... ...ごめん」
二回目の反省にシルフは眉をひそめる。
「謝んなって言ったろ!」という怒りの感情ではなく、「気持ち悪いなこいつ」という嫌悪感であるが。
マジマジとシルフは俺の顔を見ると気持ち悪いという思いは消えたのか、表情が段々と柔らかくなり、しまいには「ぷっ」と吹き出してしまった。
「あははは! 気持ち悪い! あなた、気持ち悪いわ!」
「... ...」
いや、やはり、気持ち悪いようだ。
シルフは腹を抱えて笑う。薄いピンク色のランジェリーに包まれた胸は谷間を作り、こちらに「こんにちは」とあいさつをするようにも見えた。
しかも、腹を両手で抱えているので胸は自然と強調され、自然の偉大さを目の当たりにした。
俺はディスカバリーチャンネルに夢中になる知識人のように、そのクレバスの深い溝に釘付けとなる。
いやいや、冷静になれ、花島!
お前はバカにされてんだぞ!
気持ち悪い言われてんだぞ! 怒れ! 怒れ! 怒れ!
我に返った。
だが、谷間から目を離す事が出来なかった。
男とは悲しい生き物だとつくづく実感させられる。
「ふう~。こんなに笑ったのは久しぶりだわ~。ゴーレムがあたしじゃなくて、あなたに心を開く理由が少しは分かった気がするわ」
「褒められてるのか、けなされてるのか良く分からんな」
「あら? 一応、褒めたつもりだけど?」
「そうなのか」
シルフは笑って元気になったのか、心なしか先程よりも声のトーンが高くなった気がする。
「ほら、あたしって王女でしょ? そうでなくても、高貴なオーラが滲み出ちゃうんだから、普通の人は萎縮しちゃうのよ。やっぱり」
「は? こいつどんだけお高いんだよ」と思うが、まあ、普通の人は萎縮するという所は合ってる。
「王女ってやつは民衆のそうゆう気持ちとか無頓着なんだろうな」と勝手に思っていたが、そうでもなさそうだ。
ただ、それが分かってしまうという事は良い事ばかりでは決してないはずだ。
いや、むしろ、悪い事の方が多いのではないか。
周りの人間はシルフに対して、否定的な事は言わないし、ちやほやするだろう。
だが、その裏には様々な感情が入り混じり、それは人を疑心暗鬼にさせ、他人を信じられなくさせる行為でもある。
しかし、その事で「シルフが他人を信じれなくなった」と大袈裟な展開にはならないだろう。
数日間、シルフと過ごして「意志の強い女性」という印象を抱いていたからだ。
それを体現するかのように町の住人に批判された時だって泣かなかった。
まあ、キレて町は破壊したのは目を瞑って欲しいのだけれども。
そこは評価してやるよ。
と何故か俺は上から目線であった。
「やっぱり、あなたを国の再建に協力させたのは正解だったかもね」
「まだ、始まってもないんだけど... ...」
俺が的確なツッコミを入れるとシルフの頬は赤面し。
「うるさい! 褒めてあげてるんだから、素直に受けなさい!」
「ごめん」
「だっ! かっ! らっ! 謝るな!」
「ああ!!! いったああ~いい!!!」
シルフは爪を立て俺の左肩を凄まじい力で抓った。
抓りという技は地味に痛い。
俺は年甲斐もなく、オネエのような悲鳴を上げてしまった。
俺の声を遠吠えと勘違いしたのか山の方でオオカミが鳴いた。
□ □ □
◆ ◆ ◆
______山中______
ピッピッピッピッ... ...。
と静寂な森の中には似つかない機械音が響いている。
複数のオオカミの群れが走り回り、我が物顔で新雪を踏み荒らす森には人が最近、足を踏み入れた形跡がなく、手付かずの森林が広がっていた。
一匹のオオカミが機械音に気付き立ち止まり、耳を動かし、群れを外れ、音の方に近づく。
近づくにつれ、音が大きくなり、オオカミは5mほどある氷の柱の前で止まる。
オオカミの接近により、機械音のリズムが乱れる事はなく、一定の音とリズムを変わらず刻む。
氷の柱を見たオオカミはただの氷の柱に威圧感を感じ、何もせずにその場をゆっくりと立ち去った。
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