異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第34話お母さん! シルフが国民に文句を言ってます!

独特なクシャミをして、目を覚ますと思ったのだが、「あと、五万時間... ...」ともにょもにょと小さな口を動かすと再び眠りについてしまった。
この寒空の下で、かつ、民衆達の非難の声が集まる中心部で惰眠を貪れるなんて素敵だな~。
と皮肉を込め、俺はそう思った。


俺は、巨大な女の前に立ち、両手を横に広げ、勇ましく姫を守るナイトのように住民たちから浴びせられる言葉の弾丸の盾となったのだが、住民たちの怒号に近い声は止まず、溢れた感情の矛先は無関係な俺にも向けられる。


「どけよ! お前!」
「お前もそいつの仲間か!?」
「よそ者が!」


この巨大な女に対して、俺も良くは思ってはいないがこの状況はあまりに不憫。


「あの... ...。もう、この辺にしときませんか??」


______怖い。
緊張と恐怖と寒さに体が倒れないように必死にズボンの脇を掴んだ。


「あなた... ...。どうして... ...?」


先程まで敵意を向けられていたにも関わらず、今は自身の為に盾となる俺の行動が理解出来ないのか、巨大な女はか細い声で問う。


「... ...まあ、何となく」


格好良くて、気の利いたセリフを言う事が出来ない。
異世界に来てもそれは変わる事はなかった。
母親にもよく「お前は気の利いたセリフの一つも言えないから営業として華がないんだ」と耳に蜘蛛が巣を作るほどに言われてきた。


しかし、こうも言われてきた「まあ、人として素直なのはお客さんにも伝わってると思うよ」と___。
俺は思った事を珍しく言葉を選びながら住民たちに伝えた。


「自分の街や家が壊されて彼女を非難したい気持ちは分かります。私もあなた方と同じ立場ならそうしていたのかもしれません。ただ、彼女は人よりも少し大きなだけで、普通の女の子です。その... ...。だから、ハッキリ言って私はあなた方が彼女をイジメているようにしかみれましゃん」


... ....肝心な所で噛んだ。
あかん... ...。
穴があったら便器の中でもいいから顔を突っ込みたい。


「おい! 最後なんて言った!?」
「普通の女の子のサイズじゃねえだろ!」


俺の主張は非難の声に「ははは」という笑いをトッピングしただけで、誰の心にも響いてなかった。
これだから俺は営業としても、人としても華がないのだ。


母親の言う通りだ。

何かを主張しても肝心な所でトチってしまう為に、俺の発言はすぐに流されてしまう。
ゴーレムや魔法少女達と協力して水洗トイレを作った事で何か変わった気がしたのに実際は何も変わってないじゃないか... ...。


「______あなた、だらしないわね。肝心な所で噛んだら台無しよ」


腕の中で聞こえる嬉々とした声。
この野郎。
やっと目覚めたのかよ。


「まあ、でも、中々、格好良かったわよ」


ニコリと笑い、そう告げると彼女は上体を反らし、ピョンと飛び、体操選手のフィニッシュポーズのようなものを決めて地面に着地。
評価を付けるなら点数で言えば10点中8.5点くらいか。
シルフは噴水の角に飛び乗り、両手を挙げて万歳のポーズを取りながら大きな声を発した。


「あなた達! 女の子をイジめるなんてクズね! 町ごと消えてなくなれば良かったのに! おほほほほ!」


シルフは奇妙な笑い方を交えて、住民たちをバカにした。
幼女の大きな罵声に住民達は一瞬言葉を失うが、バカにされた事で更にヒートアップ。
だが、それらの声を飲み込むように彼女は言葉を発する。


「彼女の言ったとおり、この町はどうせ終わっていたわ! だって、困っている女の子に手を差し伸べる人が誰もいらっしゃらないようですもの! そんな人たちが暮らす町や国に存在の価値はあるのかしら?」


シルフの問いかけに対して、非難の声は小さくなり、声を上げていた住民達の表情にも変化が見られた。


「国を建て直そうと思ってもこんなクズ人間たちまで、救わないといけないのかしら!? でしたら、町も人も壊して作り替えた方が良さそうね!」


シルフは正論を言っている。
見るとその言葉に耳を貸す住民達も散見している。
が、しかし、今のシルフは見た目は10歳の幼女。
子供にそんな事を言われたくない!
と反発する者も当然に現れ。


「なんだ!? ガキが偉そうな事言いやがって! こんな国にしちまったのはこの国の長にも問題があるんだよ!」


「... ...」


これについてはシルフも返す言葉がないだろう。
前夜に俺は、シルフから国の衰退について聞いていたから尚更そう思う。

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